さて、「Arc The Lad」(以下アーク)である。
本シリーズはプレイステーション誕生と同時に生まれ、
初代はロンチタイトルらしいボリュームの少なさはあったがなにより
まさかの続編に続くという衝撃のオチ。まぁそこそこ。
しかし2は「茶碗一杯で量が少ないと文句を言ったらおひつが出てきた」と称された
大ボリュームと深いシステム、
世界が崩壊するというさらに衝撃のオチ。しかし大絶賛。
そして3は開発会社が変わったことからガラリと方向性が変わり賛否両論。
しかも前作2では旧主人公が犠牲になったが
実はその必要が無かったことがわかる衝撃のオチ。
精霊の黄昏はまぁおいとこう。
ジェネレーション?知るかァァァァアアアア!!
とまぁ色々あった末PS2でシリーズがストップしその後音沙汰が無かったシリーズが!
ついに復活!スマホで!スマホで!!
んあ~嗚呼・・・わかるけどさぁ・・・(微妙な感覚)
と、いうわけでスマホアークのレビュー行きまーす。
□前置き。
本作は正当続編を明言しつつもナンバリングはされておらず、
そのためかシリーズ伝統の「主人公の名前が○○ク(グ)」縛りが無い。
- Arc1:アーク
- Arc2:エルク
- Arc3:アレク
- Arc精霊の黄昏:カーグ・ダーク
- ArcR(本作):ハルト(およびミズハ)
- ジェネレーション?知るかァァァァアアアア!!
↑THE・ボーイミーツガールな出会いからスタート。ビンタはあるけど発端は愛やで!!
ストーリーについては
アーク2のラストで起こった「大崩壊」から10年後、主人公ハルトが少女ミズハと出会い、アルディア(アーク2のエルクが住んでた国)の世界征服に立ち向かう。
という典型的ボーイミーツガールで実にアークでザラッド。
事実、アークザラッド1・2はヒロインとの出会いから始まる。
3こそ男性であるがスタートは全部コレ。主人公が冒頭の事件で誰かと出会って物語が始まるので実は伝統に則って作られてたりする。
- Arc1:アークとククル
- Arc2:エルクとリーザ
- Arc3:アレクとリーガル(男性ハンター)
- Arc精霊の黄昏:例外(リリアとは序盤で出会うが、物語のスタートは別の事件)
- ジェネレーション?知るかァァァァアアアア!!
↑懐かしの2ラストがDL時に流れる。完全に地続きとなっていることを示唆している。
時系列としては
アーク3が2の三年後に対して、本作アークRは十年後である。
機神復活?しらん。*1
ただ、「アーク3は無視しないが、アーク2の続編である」というスタンスであるため
アーク3の設定を踏襲している部分とそうでもない部分が存在し、後者のほうが多い。
たとえば
- サニアがミルマーナ国の代表になっている。(3では街角の占い師)
- トッシュが南スラートではなくスメリアで将軍となっている。
- リーザがフォレスタモールではなくブラキアの難民キャンプにいる。
- チョンガラが記憶喪失ではない。アララトス王になっている。
- そもそもアーク3の「大災害」がアークRでは「大崩壊」となっている。
などなど。
イーガがラマダ寺にいるなど変わらない点もあるが、アーク3の設定と比べるとやや疑問に残る点も多い。特に復興具合については少々気になる。
いずれにせよ、アレクが登場するが意外な立ち位置*2で登場する等を考えると
3は考えずに2終了後に分岐したパラレルと割り切るべきだろう。
(あるいはヒロインの能力【時渡り】でアーク3の世界線に行く可能性は無きにしも非ず)
□似て非なるシステム。アークをスマホに落とし込むことで失われたもの。
↑左は戦闘。右は編成。編成画面で各キャラの左上にマークがあるがこれがクラスとなる。
戦闘について、パッと見従来のアークだがかなり様変わりしている。
特に目立つのはクラスの概念が誕生していること、回避の概念が無いこと。
また従来の火や水の属性が精霊・不死など別のものに置き換わっている。
クラスはアタッカー・バッファー・デバッファー・ヒーラー・タンクがあり、
アタッカー以外は自動発動する敵・味方に影響を与えるスキルを持つ。
火力が敵味方共に高いため相手の攻撃を軽減する方法がないと
タンク以外は2発で致命傷、3発もらったら「ひでぶ」となるゲームバランスとなっている。
したがって、突っ込んでいって反撃で倒すという実にアークなプレイは出来ない。
さて、アークザラッド2の面白いところって何だろう。と考えると
- よく動く戦闘アニメーション
- フロアアイテム*3に代表されるレアアイテム堀り
- ガルアーノ戦までのシナリオ
自分はこのあたりを思いつくのだが、
このゲームに①②は存在しない。
そうなんだ。どっちも存在しないのだ。
↑連続攻撃モーションは無い。ひたすらシンプルに一度殴るだけ。セリフに関しては複数存在するが。
まず①アニメーションだが台詞こそある程度種類はあるが
「オラオラオラオラ!一撃だぜ」(一撃じゃない)に代表されるような
連続攻撃モーションはまったく無い。全部一度だけ攻撃する。
スマホ向けということで長いモーションはカットしたのだろうか?
しかし「一撃だぜ」を本当に一撃にしてどうする。
ついでに言うと武器による通常攻撃は一律1マス攻撃である。
槍・棒・銃という武器は存在するが全て1マス!近距離か遠距離だけ!
これをアークと言い張るのか貴様!と正直しょんぼりさん。
②についても、レアドロップ自体は存在しても出てくるのはレアな素材である。
装備を一発ドロップする事例が一つも無い時点でワクワク感0。
お前グラブルでもたまに一発ツモするぞ?
というかね、スマホ向けということでかなり苦心したのだろうが、
戦闘のUIとシステムはかなり悪いの。
↑赤い四角は攻撃範囲だが画面から見切れる。下の赤枠・上の赤枠は判定があり、それぞれ誤操作が頻発。
タップとスワイプで操作するが、後者はレスポンスが遅くメインで使う気にならない。
メインとなるタップについても完璧とは言いがたい出来。
特に問題なのは誤タップによる移動だろう。
攻撃ボタンの横が開いているため間違えてタップすることは何度かあったし、
上のほうに移動するためにタップしたら敵の情報が表示された。(図参照)
また、単純明快に異様に視界が狭い。移動・攻撃範囲と比べて視界が。
画面左上でマップの縮尺を変えられるが縮小して操作は出来ない等配慮に欠ける。
また、オート戦闘も実装されているがコレは
「クエストをクリアしないとそのクエストで解禁されない」ため、
強化クエストの周回でしか役に立たず、
さらに「全員で一番近いのに突撃」となる荒いAIもネック。
知恵を使って上級クエストをクリアしても次回からオート安定とはならない。
しかもオートは動きが高速化されるので初回から使いたいんだよ・・・こっちとしては・・・。
↑クエストごとにクリア目標があり、目標をこなすと石が貰えるが戦闘不能を回避するのがかなりの難易度。
あと戦闘バランスはすごく悪いです。
初級のシナリオクエストが3章ラストのほうでは
レベルマックス前提の難易度をお出ししてくるのでコンティニューする場面が何度か。
(石さえ払えば復活できるため詰まることはおそらく無い)
とまぁぐちぐち言ったが
結論を言うと戦闘の出来はやはりよくない。
上述した不満点が解消されても別段面白みがあるとは思えない。
はっきり言おう。(育成はともかく)
戦闘そのものは凡庸なスマホシミュレーションRPGだ。
その他不満点はダイジェストにお送りする。
・全体的にどこかで見た強化・覚醒・能力開放・装備システム。
(曜日クエスト式。能力開放は完全にFF10のスフィア板でグラフィティスマッシュなど様々なソシャゲで行われてる)
・曜日クエストの全体的に激重なスタミナ値、得られる素材数が要求数と釣り合わぬ。
(キャラを☆4→☆5に進化させたり、スフィア板完全開放には大体10時間ぐらい曜日クエストに張り付く必要が)
・PvP闘技場のシステムが完全にTime To Winな廃人向けの仕組み。
ただ、変化する順位ランキングではなく獲得したポイント制なのは救いだが。
(ガチャ最低レアでも最高レアにできる、武器は素材を集めて作るためとかく時間をつぎ込めば良い仕組み)
・アララトスの遺跡ダンジョンが心底ファック。
(一度に5個のマップを攻略しないとリターンが完全に0。しかもそれだけやって基本は素材のみ)
育成自体は非常に「深い」設計でありながら
擬似PvPがあるために強化クエストを石を割りながら回る必要があり、
なおかつスタミナの消費量の激しさや要求される素材量も多い。すなわち
ゲーム自体はハムスター(周回)ゲーなのだタイショーくん!
さてこんだけ不満点を書いていると
ハムタロサァンこんだけぶつくさ言ってて何でやってるんですかぁ?
と思われかねないだろうが、いやそれがだねこうしくん
このゲームね、ストーリーが!
ストーリーが思いの外面白かったのだ!!
□完全に続編となるアーク2-2シナリオ。だが。
今作は章仕立てになっていて、
一章はアークRから登場する主人公とヒロインによる各地にいる英雄*4一人一人と会う
世界の果てまでイッテR!「現地ガイドと会って敵と戦う男!」以外になんもない。
正直あーこりゃ駄目だわー・・・と感じていた。
が
しかし
2章からは大幅に面白くなる。
↑1・2メンバーが絡み合うシナリオ。今のところ参戦している旧メンバーは全員現役で戦える!
1章が英雄それぞれ一人と会うだけなのが
2章からは複数の英雄がそろい踏みし、運命は絡まりあう。
サニアとシャンテのような意外な二人が、トッシュとイーガのような初代の二人が、会話する。
まさにアーク2でガルアーノ戦にいたるまでの流れに似た
各地の英雄が集い、協力し合う展開には胸が熱くなる。
↑8歳と9歳と10歳の時と!12歳と13歳の時も僕はずっと……待ってた!この瞬間をだろ!
特にアーク3で実現しなかった「エルクとリーザの再会」については
よっしゃああ!
夜のエクスプロージョン承認!!
とアタイの17歳JKの乙女脳がキュン♡キュン来る。
ていうか何でアーク3はトッシュ・シュウは競演させておいて
エルクとリーザ再会させなんだねーーーん
ねーーーーーーん。
ねーーーーーん
ねーーーん
ねーん
…
(閑話休題)
↑サイドビュー!後手後手!実にアーク!後手後手はスタッフも半公認のアークらしさ!
シナリオに関しては
「アーク1・2をやってない人はどうするの?」
「じゃねえ てめえの方こそ、ついてきやがれ───!」
といわんばかりに前作プレイ前提での専門用語が乱れ飛ぶ。
白い家を筆頭にキメラだロマリアだと知らない人には意味不明だが知ってる人にはニヤリで収まらない、完全にアーク2の続きとなるシナリオ。
空港のサイドビューもアーク。敵からの攻撃に対して大体後手後手なのも実にアーク。
あぁ^~アークやってるわあたし~!
完全に直撃世代を狙い打つつもりでこのゲームは作られており、
逆にこれ、アークRをなんとなしにインストールした新規ユーザーに対して
大丈夫?「────ついて来れるか」と心配になるほど。
反動で直撃世代には垂涎のシナリオとなっている、わけだ。
いいんですかいいんですか。こんなに人を信じていいんですか。
□若干気になる中途半端さ。
ただまぁ危惧が無いわけでもない。
これはアーク2を完全に再現したということでもないということだ。
上記の攻撃モーションやキャラデザ・声優など。
特に声優については配信前は
「引退した人もいるし、声優変更はしゃーないかなー」というスタンスだった自分も
ここまでアーク2の続編として出されたら
「何故変えたのか」と掌を返すほど違和感がある。
・・・てーかはっきり言う。
エルクとリーザの声が酷い。特にエルク役の浪川氏が。
↑浪川氏が悪いとは言い切りたくないが、思い入れに比例してどうしてもキツく当たってしまう。
トッシュはあー関智一だわーギルだわーとわかってしまうがまぁキャラに合ってる。
シャンテは旧声優に似せてる。(声優わかってますねエライ)
ポコ・イーガは許容範囲。
ヂークベックは所詮ロボ。
チョンガラはどうでもいいや。(キャラに合ってるけど)
しかしエルクはあからさまに違う。
お前は誰だ!陰に隠れたその姿見せろ!ウォオ~♪
と俺の中の俺は割とガチで不満を感じている。
元々自分はそこまで声にこだわる人間ではなかったし、
声質が似てる・似せてくるならええやんけ気にしすぎwwとか思ってたぐらいだったが
声質も演技もまったく似てないモン出されたら俺もキレる方のガワでしたわ。
課金で声優変更ボタンを買えるならノータイムで買って
エルクのテーマに合わせて連打しますわ。
エルクが飛びぬけて酷く感じたが、他のキャラもファンなら怒る可能性はある。
特定の声優の問題と言うより演技指導ちゃんとしたのか?スタッフ…
さらに本レビュー時点では実装されていないが、
シュウについても元の赤い声優は参加していないことが明言されている。
名前を声優からとったキャラでもコレであるもの。
何でそんなにキレてるの?と思うかもしれないが、
ここまで1・2に寄せてくるならばはっきり言って
これはファン向けのゲームだよ。
声優に金がかからないとは思っちゃいないがファン向けのゲームなら
金使って元のキャストを集めるべきだったし、
よりにもよって黒歴史に近いアニメ版のエルクだけ残すような
非常に中途半端で甘い、矛盾した作りには疑問が残る。
□総評。
↑シルバーノアも復活する。完全にアーク既プレイヤー向けの設計だよコレ!
上述したように戦闘や育成はスマホ向けにされたことで元のアークシリーズから大きくそがれた部分が多い。
また、元々のアークのシステムではない、凡庸な何処かで見た育成システムを採用していることから完全なアークシリーズとは言い難い。
しかしこれはアークだ。アークであると言うしかない。
キャラが、シナリオが、些末な不満をねじ伏せる。
ゆえにアーク1・2プレイヤーにとっては
十分にプレイする価値はあるといえるゲームになっている。
↑進化でキャラの服装も変わる。☆3は旧作の服装そのままというファンサービス。
進化作業はかなりつらい部分はあるが、
とりあえず最低レアでもキャラを引けたら最高レアまで持っていけるということや
最高レアの確率が3%、準最高レアは15%とガチャはかなりぬるい部類に入る。
(先に最低レアを引き、その後最高レアを引いた場合はその分の覚醒素材が得られる)
ゆるゆると旧ファンがプレイする分には十分耐えうる。
ただ、じゃあ過去のシリーズを未プレイのユーザーに薦められるかというと
すげぇ、微妙。
シナリオの1・2前提さが筆頭だが、今回ざっくりとしか書いてない
育成面においては異様に深く時間がかかる。
その分やり込める!となる自分のようなタイプとそうでない人とでは大きく評価が異なるだろう。
また、何度も言うが戦闘においては非常に凡庸なSRPGである。
プレイして気に入ってくれるかどうか、正直わからない。
とはいえ基本無料!まずは入れてみるのはどうだろうか。
そこでもし旧作に興味が湧いたのなら。もしやってみたいと思ったのなら。
PSP/PSV/PS3でのゲームアーカイブスとやれる方法も限られていたり、古臭い部分もあるが
是非、アークザラッド1・アークザラッド2をやってみてほしい。
何故ここまでファンが多いのか、愛されてるのかわかると思う。そして、
プレイしたあなたもシリーズを愛してくれると嬉しい。
まぁ3や精霊の黄昏も世間で言われてるほど悪くないのでそれもやるといいよ!
え?
ジェネレーション?知るかァァァァアアアア!!
↑シリーズ屈指の忌み子。しかしこんな場末のブログの記事のオチに使われるとは不憫。