基本的にこういうレビューでは「製作者側の情熱」とかそういうあやふやなもんを評価しちゃいかんというのがあります。
ただやはりなんかスゲェやる気を感じるものについては贔屓目で見たくなるもの。
情熱を感じることは気持ちいい・・・そうでしょ?
ということでVita版でスマッシュヒットをキメたカリギュラ、
そのリメイクたる「カリギュラ・オーバードーズ」のレビューです。
なお、本稿ではShare機能が制限される中盤以降についての
致命的なネタバレは有りませんので安心して読んでください。
そもそもカリギュラとは、
辛い事や苦しいことが無い高校3年間を繰り返す”理想の世界(メビウス)”に
囚われた人たちのうち、ここが現実ではないと気づいてしまった人たちが帰宅部として現実への帰還を目指すというRPGになります。
アニメもやっていますが大分話が変わっていてそこまで参考になったりならなかったり。
そしてカリギュラ効果というもう一つの意味も持っています。
意味は禁止されるほどやってみたくなる心理現象のこと。つまりダチョウ倶楽部の「押すなよ!絶対に押すなよ!」というアレ。急に低俗になったな。
■強化されたグラフィックとシステム
↑PS4(今作)版のグラフィック。かなり強化されました。
まず目を引くのはグラフィック。
流石に海外産のフォトリアルには負けますが何せ前作がVitaだったので大幅に良くなっています。
システム面においても強化されており、まずUIのデザインが良くなった。
スタイリッシュかつ割りと見やすいUIはかなり頑張りました。
↑これはVita版。上と比べるとかなりアライさん。UIもゴチャッとしてる。
あとR1ボタンによるダッシュやストーリーパートの早送りもありがたい。
グッとテンポが良くなり、ゲームを進めるストレスがかなり軽減されます。
結構モーションも頑張ってつけようとしていてイベントシーンではジェスチャー的な動きをしっかりしてくれます。
ただ口は開かない。後述。
■爽快なイマジナリーチェイン
とりあえず一本 #PS4sharehttps://t.co/qFRy2P0mBP pic.twitter.com/YEcX2lkldA
— エクサ (@EXA_AXE) 2018年5月27日
↑大体こんな感じでコマンドを選択し、一気呵成に敵を叩きのめす。コンボがつながるときもっちええ。
カリギュラといえば格ゲーにも似た味方との連携によりコンボを作り、
華麗に敵を倒す戦闘システム「イマジナリーチェイン」は今作も健在。
そして魅力的。
詳しくは動画を見てほしいのですがコマンドを選択するとその行動の結果がシミュレーションされる。
たとえば相手が射撃攻撃をやろうとしたら射撃カウンターを決めることで敵を空中に打ち上げる。
各仲間の行動で敵を空中でとどめたり、逆にダウンさせることでダウン状態の敵にのみ発生する強力な行動を取るなど、各自の行動をチームとして一連の流れにすることで敵に勝利するのだ。
仲間との連携という点においては昨今のRPGではずば抜けてるといっていいかと。
Vita版から大きく2点変わった仕様としてまず一つ目。
今作は前作と少々方向性が違っており、
前作は多対一の状況に持ち込んで一気呵成にぶちのめす。
という囲んでおきらくリンチが基本戦術でしたが
今作は多対多の状況での戦闘が結構増えてます。
ただ、今作はVita版のような強烈なレベル補正が無く特にNORMALは異常なほど楽。EASYをNORMALと記載してるんじゃないかって位楽。
前作はレベル差が4くらいあるともう負けるしかなくなるレベルでしたが今作のNORMAL難易度はレベル上げのため積極的に大物食いを狙ったほうがいい状態。
上記のイマジナリーチェインを楽しむなら難易度HARDを推奨します。
そして待望のAUTO戦闘!
前作は雑魚でも毎回全員の行動を入力しなければいけなかったのですが今回は任意で主人公のみ入力でOKとなりました。これはありがてぇー!
戦闘の楽さが大幅に変わりました。ブラボー!おお・・・ブラボー!
↑パーティメンバーによっては戦闘前後の掛け合いが大きく変わる。一年生同士とかね。
あと、戦闘前後の掛け合いが一々凝ってるのもベネ(良し)。
また、キャラクターシナリオで信頼度が最高になったキャラは戦闘中の台詞が変わるってのは”わかってる”。
こういう一手間で大いに評価が変わるのでここちゃんとしてるのはディモールト・ベネ(非常に良し)。
僕は彩声ちゃんの台詞が良くて性能は微妙だけど連れまわしてました。
とにかく快適性については大幅に向上しました。
ただまー戦闘のカメラが全体を俯瞰する形で取るので敵との殴り合いが遠景として表示されるのがもったいない。
せっかくカッコいいモーションを決めても遠くてなにやってんのかわからん。
下記に記述しますが演出面においてはまだまだとはっきりいえます。
■幼稚な演出と改善されていないダンジョン。
過剰強化(オーバードーズ)を謳うだけあって
システムにはかなり手を入れられておりストレスレスなプレイが可能です。
システムってのは仕様の問題であり設計段階で考慮し、入れておけば余計な作業と金を増やさなくて済む。
だがしかし。
↑折角の覚醒シーンもこの後チュートリアルバトルがないというかなしみ。
まず演出について、
敵と会った!覚醒した!暗転ドーン!で敵を倒してる。というシーンがちらほら。
Vita版でもそうだったとはいえ丁寧にチュートリアルで今覚醒したやつはこういうバトルスタイルですよ~と紹介されてよっしゃチュートリアル戦闘やな!と思ったら
暗転ドーン!勝った!第三部完!は正直肩透かし。
一応ホント一部のキャラにはそういう演出があるんですけどここらへん徹底できてないのは残念。
↑喋ってるシーンだが、表情は眉を上下にする程度。口は一切開かない。うーんこれは・・・。
んで上述したけど表情や口を開くという顔部分の要素がかなり欠落しててうーんこれは・・・。
一応会話イベントでは3Dモデリング以外に立ち絵が表示され、表情はこちらで補うのだろうがいかんせんベラベラ喋り倒しながら口を開かないキャラ達は少々キモイ。
いっこく堂か貴様ら。アレ、オトガ、オクレテキコエルヨー。
リップシンク((喋っている台詞と口の動きをあわせるまでは期待してなかったのですが
モーションがしっかりついているため違和感が凄い。
口元を隠すモーションとか入れてよかったんでね?誤魔化しの技法を覚えて欲しい。
また、敵と戦闘してるイベントシーンであっても殺陣のような演出が無く、
銃で「あホレ、パンパンと」打つシーンが殆ど。
イベントシーンはほぼ会話劇であるとはいえ少々メリハリが無い。
↑ODスキルは帰宅部と楽士でコピペ有り。コピペ以外でもなぜか〆のポーズが背中で語るやつらが殆ど。
今回追加されたオーバードーズスキルという超必殺技も
絵コンテの段階でちょっと練り直したほうがいいんじゃないかって位ダサい。
えっそれで終わり?みたいな攻撃が多いんだよね。
基本は乱舞して最後の〆!みたいなのが無いので全体的に異様なダサさを生んでいる。
今日日スマホゲームでももうちょっとカッコいいぞ。
主人公のは格好がついているんですけど他のキャラはなんていうか
テンポとリズムとセンスと魂が違う。何故か大体が背中で語る(図のように敵に背を向けてフィニッシュが多い)し。
しかも楽士も帰宅部と同じ必殺技のコピペなので楽士も背中で語る。仲良しか。ノウハウの無さが如実に現れてる。
もう一度言うがシステムは仕様の問題。しかし
演出については直球で「金とセンス、そしてノウハウ」の問題になってくるのだろうな、と。
↑むやみやたらに広いダンジョン。広いくせに通路は狭いときてる・・・
次に改善されていないダンジョンについて。
グラフィックが強化され、ダッシュが付いたことにより大分ストレスが減りましたが、
Vita版同様にダンジョンごとの個性は殆ど備わっていません。
せっかくクイズとか入れてるダンジョンがあるわりにクイズのオブジェクトがイベントを見るための装置にしかなってない。
で、そのイベントも力が入っているものが少ないため各ダンジョンごとに多少の違いはあるものの、あんまり面白くない。
↑温泉ダンジョンだけやたら凝ったイベントしてたのはどういうことだ山中ァ(D)!
唯一面白かったのは温泉ダンジョンぐらいでアレぐらい力を入れたイベントシーンが各地にあればよかったのですが・・・。
あと前作でも大いに文句を言われたであろうダンジョン内で敵が多く、かつ通路が狭くて敵が回避できない件については今作も改善されていない。
後々のアプデでレベル差が5つくことで敵が回避するようになったが、単純に先に進んでシナリオを読みたいだけという状況においては非常に厄介で面倒。設計の段階で駄目だって言ってんのよ!
■曲は最高。シナリオは・・・。
↑熱烈歓迎ソン者。ここでの選択が大きくルートに影響する。
今回は大きな目玉として前作の帰宅部ルートとそれを裏切る楽士ルートが有ります。
楽士の長であるソーンから
「まー君らの言い分はわかっちょーけどこっちの言い分も見て2つの視点を持って欲しいんだっぺ」
と楽士視点を持つことを求めて勧誘されます。
↑新人楽士のrucideとして帰宅部とも戦える。専用曲でテンションMAX!
自分はVita版をプレイしていただけに初っ端学士ルートをチョイス。
謎の追加学士rucideとして帰宅部メンバーと戦うのですが
その際「学士なら専用曲がいるよね!」とμと一緒に用意する曲。
これが思った以上にアガ↑る。
↑公式PVでも使用されている曲「Suicide Prototype」。アガる。アガれ。
元々各ダンジョンに学士専用曲が用意されていてフィールドと戦闘でシームレスに切り替わるなど音楽についてはかなり拘ったゲームでしたが
自分専用曲の魔力は凄い。曲の出来も相まってアガるアガる。
戦場で「Suicide Prototype」が聞こえたら…俺が来た合図だ!と大はしゃぎしてる。
いわゆる特撮でOPが流れた、処刑用BGMが流れたみたいなテンション。
専用曲って男の子だよな。
一応連れて行った学士の曲もかけられるのですが
「だ~れがお前らの曲なんかかけるかーい!俺の曲を聴↓けぇ!↑」
という感じで本当に愛着がわく。このあたりはマジでGJです。手放しで褒められる。
んでシナリオですが・・・うーんこれはちょっとなんていうか・・・
期待をあげ過ぎたか。
いや、初見の人はかなり面白いと思うんですよ。
問題はVita版をプレイした人に向けての楽士ルートの作りについて。
事前のインタビューでも楽士ルートは帰宅部ルートの8割を含むといっていたがそれもそのはず。ぶっちゃけ楽士ルートは帰宅部ルート+αであり、道中ほぼ一緒である。
分かりやすく言うと
1章(帰宅部)→1.5章(楽士)→2章(帰宅部)→2.5章(楽士)・・・
という形で幕間に入れるスタイルなんですね。
少なくとも帰宅部と序盤で決別し、楽士と共に戦うというルートでは一切無い。
正直なところシナリオについては楽士ルートをベースに一本にしてしまってよかったかと。帰宅部ルートに行く理由って正直ほぼ無いんじゃないかって位被っているので
中途半端にVita版のシナリオも選べるようになっていたのが逆に印象が悪くなってる。
また、物語の結末自体も楽士ルートはうーん。
こういった事実上のアバター主人公ならもっと上手くメタフィクション的なシナリオを組めただろうに元々インタビューでほのめかされていたとはいえただのバッドエンドに近い。
ただ、これはあくまでVita版をプレイしたユーザー目線の話。
これが始めてというプレイヤーには十二分に面白いシナリオだと思われる。
↑メインシナリオの中にあるキャラクターエピソードへの伏線。この発言の意図や思いはキャラEにて。
メインシナリオと、そしてメインと密接にリンクしているキャラクターエピソード。
この両輪がこのゲームの土台を固めている。
元々結末というか設定に基づいて逆算された伏線がメインシナリオに丁寧に張られており、キャラクターエピソードで判明する「あのときの発言ってコレだったのか!」というパズルのピースがハマッたような奇妙な爽快感は非常に楽しい。
このゲームの一番の特徴は今見えてる外見や年齢が正体とは大きく異なることがあるということで帰宅部メンバーの中では特に琴乃の正体はかなり衝撃だろう。
本稿では語らないので是非プレイして確かめてほしい。
↑本作最注目キャラ、琵琶坂のキャラクターエピソード。彼をどうするかはあなた次第。
また、OD追加メンバー4人のキャラクターエピソードは真相に近づくにつれ成る程~、こう来たか~~ッ!と唸らされる。特に琵琶坂のシナリオの結末は全く読めなかった。
明確にメインシナリオに影響の出る結末であるため優先的に読むことを推奨する。
楽士メンバーもこれまで楽士間で交友を持ってなかったけれど主人公が間に入ることによりなんやかんや和気藹々の関係になります。
そういやコイツラ別に悪い人ではないんだよな・・・序盤の楽士って基本良識人だし。変態だったり油ギッシュ中年だったりするけど。
・・・と、思っていたら物語中盤を越えたあたりから
良識人楽士を巻き込んで一気に方向転換するジェットコースター展開はワクワク。
このあたり、語りたいけど語ってはいけない実にカリギュラなシナリオは
初見ならかなりのめりこめる筈だ。多くは語らない。
■総評
非常に良くできたJRPGだと思う。
世界に向けてというより良くも悪くも戦闘とシナリオ、そしてキャラに注力した由緒正しきジャパン・RPG。
少々力不足な部分は散見されるがJRPGを求めるユーザーには買って後悔することは無いだろう。
Vita版を興味はあったけどスルーしてしまった。あるいは途中でやめたという人にはかなりもってこいの出来になっている。入門編とも言えるかも。
何よりツイッターを中心に現実への忌避や、妄想や二次元への逃避が(ネタ交じりとはいえ)多く見られる時代だ。
こういった時代を揶揄するようなRPGというのはその時代にやるべきだと思うんだ。
ただ、前作は「フリューのくせに面白い」あるいは「新規IPをこの時期に生み出すとは」であったり、粗削りだが情熱を感じるといった面で評価に補正が入ってた部分はある。
しかしPS4にハードが上がったこと、事実上の2作目ということでそろそろさなぎのままでいられないだろう。
目覚めなさい。そして現実と向き合いなさい。補正ではなく正しい評価を得られるように!
山中Dの努力が実ることを祈って・・・フリューの新作にご期待ください!
フリュー、新作タイトルのティザーサイトをオープン!『聖剣伝説LOM』や『マジバケ』『MOTHER3』のスタッフが開発 https://t.co/YRVTk5QOkl @gamenohanashiさんから
— エクサ (@EXA_AXE) 2018年6月1日
えっもう作ってたの!?