貴様もいっぺん死に臨んでみろ!意外と恍惚で病みつきだぞ!?(挨拶)
さて、この記事を読んでいる読者にお聞きしたいのだが最近ゲームで
「詰んだ」という感覚を味わったことはあるだろうか。
恐らくあまり無いのではないだろうか。
昨年の高難易度ゲームと言えばSEKIROだが
アレも攻略動画や倒し方のコツは1か月たったころには共有されていて
少なくとも筆者には「キツイが何とかなりそう」という光明はずっと見えていた。
(まー心は折れる人がいるだろうが)
死にゲーやトルネコ・シレンのような作品も、死が物凄く安い。
それこそ失うものはほとんど何もないこともある。楽しいし大好きだけど
たまにはちょっと危険な遊びもしたくなるわけよ。17歳JKですし?
その「詰んだ」感覚をガッツリ味わえ、そしてその先の「死」を味わえるゲーム、
『MIST OVER(ミストオーバー)』をレビューしよう。
なお、プレイ環境は2月中旬の時点でありパッチ適用済み。
つまり、発売直後のさらに酷い難易度ではないことはご留意されたし。よしなに。
□概要
↑世界滅亡5分前、あえて火中の栗を拾うか。
世界は滅びかけていた。
王国に突如発生した霧の柱からはあまたの怪物が現れ、
人間はただひたすらに倒されてゆき、朽ちていく。人間が生存をあきらめ始めたその最中
皮肉にもピタリと怪物は姿を消す。生き残った人間たちは一縷の望みをかけて
霧の柱を調査する。絶望を希望に変えるために。そしてその中には「貴方達」も含まれていた…。
↑依頼を受けてランダムダンジョンに潜る。食料と明かりという特殊ゲージが有、無くなると死が忍び寄る。
自分はプレイしていないので、”らしい”という
伝聞調で申し訳ないが「ダーケストダンジョン」が最も近いらしい。
日本人向けにわかりやすく雑に言うと
世界樹の迷宮+(風来のシレンやトルネコに代表される)ローグライクだ。
「君は○○してもいいししなくてもいい」というメッセージの書き方や
冒険者もといボウケンシャー!を雇ってパーティを構成する辺りもそっくり。
街のギルドから依頼を受けてダンジョンに潜るなんて世界樹そのままだ。
そしてシレン同様にダンジョンは自動生成。アイテムなどもランダムだ。
歩くと腹が減ってしまうし、自分が動くと敵も動く、んで行動するとHPが回復する。
というシレンジャーな方々には毎度おなじみのシステムとなっている。
と言ってもシレンとは違ってマップと戦闘画面は切り離されており、
敵と接触すると戦闘画面に移り、敵と戦うことになる。
これは二つのいいとこどり、というよりは
ジョグレス進化したことでなんか妙なもんが出来た。くらいの感覚が正しい。
僕はあの格好いいエンジェモンがジョグレス進化したら土偶になった
幼少期の悲しい思い出を未だに許していませんし
おかっぱショタは法律で禁止してほしい位嫌いです。
シャッコウモンについての恨み言はともかく
実際このゲームをシレンっぽい、というのは無理があり、
世界樹のパクリというのは正直厳しい。
間違いなく下敷きにはしているが、独自性が物凄く高いタイトルとなっている。
□死んでもいいゲームなんてヌルすぎるぜ。
↑金の宝箱から手に入るアイテムは潜る前にわかる。そしてそれもランダムだ。右はマップ。
本作ははっきり言って難易度はゲロ高い。
世界樹の迷宮を1~4までプレイした筆者の主観としては
明らかに世界樹より難易度が高く、
特にその中でも緩い4*1と比べると3ランクは高い位置に設定されている。
その高難易度の理由は主に4つの仕様によるものとなっている。
1.仲間が死ぬと問答無用でロスト
2.完全オートセーブ。死んだ瞬間リセットしても死んだ画面に戻る。
3.生きて脱出しない限り経験値も装備も回収できない。
4.宝箱を空けたりや敵を全滅させるなど、隅々までプレイしないとゲームオーバーが近づく。
↑左で死にました。そしてリセットした後が右。
まず、本作は仲間が死ぬと問答無用でロストである。
復活させる方法はない。囁こうとも詠唱しようとも祈ろうとも念じようとも。
問答無用のロストである。
救済策ではなく仕様として、致死ダメージを受けてHPが0となっても
次の攻撃を受ける前にHP回復すればギリギリ救済する猶予が与えられる。
だが、瀕死の状態でもっぱつ食らうと完全ロストである。
さらに言えば他の作品における毒は本作では「出血」だがこれはその猶予すらなく即死である。
これで3人殺しました(泣き)
リセット?利きません。
そう、完全オートセーブのため一度死んだらもうどうしようもなくなるのである。
何度リセットしても何度も死に目を見る羽目になるぞ。
ダンジョンは決して命を逃がさない。
これが本作独特の緊張感を生む仕組みとなっている。
↑生きて帰ってようやく得られる経験値と装備。さっと潜って帰ると滅亡へのカウントダウンが進む。
そして、生きて帰らねば得るものは少ないということ。
このゲームはいつでも「脱出」は可能だ。
ただし、拾ったアイテムの一部はロストするし、仲間が死んだ場合その遺品も失う。
さらに問題なのは経験値はその脱出では一切入らないことだ。
つまり、新しい装備がロストせず手に入ればまだいいが、
結果的に何の成果も得られないまま終わる、
何も得られず終いにゃ終いにゃバカ息子。エースという名のバカ息子になる。
取り消せよ今の言葉・・・!
んで、ダンジョンごとに推奨レベルが決められておりそれ以上のキャラで探索すると
滅亡の時計というゲームオーバーへのカウントダウンが進むわ、
経験値が何割かカットされるわと、基本的に良いことがない。
さらに滅亡の時計は敵や宝箱を無視して進んだり仲間が死んだ場合も進行するため
ちょっとだけプレイして即脱出、ということに枷がかけられている。
つまり、プレイヤーはどうあがいても
同レベルのダンジョンを”まっとうに”攻略する必要と義務、
そして必ず生き残る必要がある。という仕組みになっている。
章題にもしている通り、死に対するリスクの高さは半端ではなく、
一般的なDRPGや死にゲーのような
「死んでもいいゲームなんてヌルすぎるぜ!」と言い放ってしまえるほどの高難易度である。
と、散々にやべぇ・ムズイ・キツイ、と脅したがこのゲームの良い点も話しておこう。
それは育成周りの奥深さだ。
□割と奥の深い育成要素。
↑紫が最高レアのエピック。ほかの装備と違い合成回数と追加ステータスボーナスがある。
武器・防具・アクセサリ2種の計4つの装備が可能なこのゲームだが、
ハクスラのように同一装備でもレアリティが存在する。
コモン・レア・エピックという3段階程度だがそれで充分。
エピックは他と比べて別ステータスの強化とか純粋なステアップ要素もあるが
本作は装備の合成が可能で、エピックは破格の9回合成可能である。
他のレアリティだと3or6と聞けばヤバさが伝わるだろう。
この合成で短所を直すか長所を伸ばすか、という”選択”をすることとなる。でも、
こういう選択ってゲーマー心理として楽しいんだよね。
そしてとある方法でとんでもない強化が出来る。これは後述する。
↑レベルアップで覚えるジンクス。これは良い方向に矯正可能。人権って、なんですかね。
次に、仲間はレベルアップするごとにジンクスを覚える。
これは例えば後列にいるとSPD(素早さ)が上がる、
横に仲間がいるとDEF(防御力)が下がる、といったもので
レベルアップ時にはプラスの効果もマイナスの効果もランダムで覚えるが
訓練所にて矯正が可能となっている。
ここでもコストはかかるもののプレイヤーが”選択”することが可能。
自分好みに育て上げることが出来るぞ。
↑スキルの強化、そして習得が可能。たくさんの技からどれを伸ばすのか、頭を悩ませよう。
そして本作は通常攻撃含む技全てにレベルが設定されており、
威力とバフ・デバフの補正量、そして何より重要な命中率が強化される。
通常攻撃を伸ばすのか、バフを伸ばすか、技を取得するか
そして後述するが仲間との合体攻撃に割くか。
非常に悩ましくも楽しい時間だ。
DRPG(ダンジョンRPG)というと若干の語弊があるもののDRPGの醍醐味である、
「鍛えること、強くなっていく感覚」は存分に楽しめる。
↑編成、そして合体攻撃!仲間がいることで強くなる。仲間がいることで先に進める。
そして、このゲームは最終的に「仲間」という要素に集約される。
こちらは最大5人でパーティを組め、仲間同士はジョブごとのシナジーが物凄く高い。
ローニン(侍)とパラディンのコンビで全体にダメージ一回無効バフをかけたり
シャドーブレード(盗賊)とシスターのコンビで全体に麻痺攻撃を行うなど合体技が可能。
なので8種あるジョブのうち5つをどう選択するのか、という所が頭の悩ませどころさんである。
ただ、敵も敵で絶対に一人では現れない。仲間を連れてやってくる。
ボスに至っては周りの仲間が死んだら復活させてくる技をほぼ全員が持っているぐらいだ。
頭おかしいんじゃねぇかこれって言いながらプレイしてた。
↑探索中に・戦闘中に喋りまくる仲間。世界観ほど暗いイメージはプレイヤーは受けない。
このゲームはVやねん人類!絶滅待ったなし!という
圧倒的に暗い世界観ではあるが仲間キャラがガンガン喋るので
世界観と比べてプレイヤーの受ける印象はそこまで暗くない。
仲間それぞれに性格(とジンクス)やバックボーンが設定されており
同じジョブでもセリフが変わる。何よりキャラデザが秀逸。
ダーケストダンジョンをスルーしたのはキャラデザのせいだと思うんでこれは評価点。
そんな愉快な仲間も一人でも欠けると尋常じゃないほどの大打撃を受ける。
一つ欠けると船底に水が開くかのように一気に次のキャラがピンチになる。
一人としてかけていい人間などいない。一人一人がパーティを支える重要な柱である。
つってもよぉ、こういう高難易度ゲームって
序盤が一番きつくて成長していくにつれて余裕になっていくんだろ?
後半は誰も死ななくなるんだろう?
と思うゲーマーも多かろう。わかるぞ。
ハハッ。
俺は中盤で取り返しがつかないことが起こったぞ。
□死ぬがよい。
↑死の瞬間。断末魔さえない一瞬の出来事である。
事実このゲームはきちんとした流れでやると
高難易度ではあるがなんだかんだ何とかなるように作られている。
それに甘えていた。気を大きくしてちょっと上のレベルのダンジョンに潜った。
結果を言おう。
初期メンバーの1名と途中加入の1名の計2名を失い、長期間の立て直しを余儀なくされた。
いや、潜った直後は普通に倒せてたんですよ敵。
問題はトラップによる敵の召還と連戦による消耗で
まず最初に回復アイテムが尽きる。のどがひりつく感覚があった。
次にMPが尽きる。心臓の音がうるさい。
戦意が尽きる。手が震えるのが分かる。
そしてジワリジワリと足元から背中にかけて忍び寄る何かを感じる。
冷や汗、悪寒、緊張、そしてちょっぴりの興奮。
その時僕は理解した、
これこそが「死」そのものなのだと。
途中加入の1名が死に、初期メンバーの1名が死んだ瞬間はむしろ無感動であった。
2名の死は、絞首台に足をかけたようなもの。残る仲間は残りの階段と同義。
何とか気持ちを奮い立たせても自分にやれることは一つである。
頼む、頼むから逃がしてくれ、命以外なら何でもやるから!
お願い逃がして!
と何度も祈りながら「逃げる」を連打する自分。
3度目のトライでようやく逃げ切れた時には
ただひたすらに命があることを心から喜んだ。
「へっ、とんだ甘ちゃんが!ぺっ」と捨て台詞を吐く余裕もない。
ただ一言だけ口から洩れたのは
「生きててよかった…」というみっともなくも心からの言葉。
正直最初のボスを倒した時以上の快感がそこにはあった。
実際にはパーティが壊滅し、立て直しを図ることを余儀なくされたが
三人生き残ったことに関して心からの安堵と共に快感があった。
↑仲間が死んでもなお、世界は終わらない。さぁ次の冒険だ。
その際ふと思いついた「臨死体験」という言葉。
これをググってみると、数ある体験パターンの中に
心の安らぎと静けさ、言いようのない心の安堵感がする。
というものがあった。まさにこれだな、と妙な感心があった。
この臨死体験は一度ならばマジで面白い。
ひっさびさだわこういうギリギリ感とちょっと唸らされた。
勿論自分が特殊な訓練を受けているゲーマーということもあるだろうが、
最近のゲームでは味わえない、この脳が解けそうになるほどの緊張感と開放感には本当に笑みがこぼれた。
ただ、2度3度となるともう二度とやるもんかともなったが。
□実は死んでもいいゲームだったぜ!
↑敵に攻撃を回避されるのは致命的。死んだ仲間の代わりはすぐには使える人間にならない…。
一度ロストするとその代わりとなるキャラを鍛えなおす時間が発生する。
というのも本作は攻撃をかわす(かガードする)と
回避したキャラクターの素早さが上がり手番を回す形となる(攻撃チャンスが生まれる)。
これが敵にも起こる。
なのでレベルが低いと敵に攻撃が当たらず、敵に手番を回してしまうという最悪の事態が生まれる。
さらに装備はレベル13以上じゃないとこの装備は出来ませんよ、というレベル制限があるため
とにかくレベル上げは絶対なのである。
↑ダンジョンごとにレベル制限がある。もちろん高いレベルでも入れるが滅亡の時計が…。
しかし問題はこのゲーム、パワーレベリングに制限がある事。
このゲームのダンジョンにはレベルが設定されており、
パーティの平均値がダンジョンのレベルより1上がるごとに10%ずつ経験値の総量の割合が減る。
これは実体験だが、レベル10のキャラを13まで上げたかったがパーティにはレベル18のキャラが2名いた。
この時点で合計46、つまり平均ではレベル15である。
しかしレベル15のダンジョンは流石に3人ではキツイ、んじゃどうするか?
レベル1のキャラを雇用して連れてくるという非人道的なプレイをする羽目となった。
(これで約11なのでレベル10のダンジョンを潜れるようになる)
なんなんですかぁ?ここどこですかぁ?
何でわたしここに連れてこられたんですかぁ?
という震える声が聞こえるようだが安心しろ。
常に瀕死で最後には死ぬから。
また、本作の経験値は分配式ってのが厄介。
これまでのパーティの主戦力1名が抜けてそれだけを鍛えたいのだが
分配式ゆえにどんどん高レベル者は上がっていき、
低レベル者が死んでは入れ替わりを繰り返し、
ひたすらにレベルの差が開いていく。
だから上記の非人道的プレイを繰り返す羽目になるのだ。
新人を3人殺したよ僕は。
さらに言えばこれにより難易度が大幅に低下する。
ラスボス前の面のボスに苦戦しまくりリカバリしまくりでパーティの主戦力2名がレベル19に到達。
逆にラスボスはあっさり沈んでしまった。
こうなっちゃうと経験値を特定のメンバーに注ぎ込めたり、
レベル補正で経験値の量が増減するようなシステムが欲しかったよねって。
まぁ人類の生存のためには犠牲はつきものデース…
↑トロフィー名、死者からの贈り物。マイナス効果の遺品だが…?
さらに言えば仲間が死んだ際の利点として遺品を回収できた場合はその遺品は呪われる。
呪いの言葉の通り、HPが減るとステータスが下がるというマイナス点があるが
ただ厄介なレベル制限がなくなると同時に、合成回数が死んだキャラのレベルに応じて加算される。
つまり。
↑赤い文字で(+1)。そう、合成回数をどんどん増やせる。
さっき雇用したキャラに装備させてそいつをわざと殺して…という悪魔じみた戦法が出来る。
最終的には合成回数はなんと999を目指せる。…らしい。流石にそこまでやんねーよ!
文句なく最強の装備となる。
ロストのペナルティについては非常に納得できるし理不尽感も薄いが
システム的にはロストした後のリカバリーに対する考慮がなされてない点が非常によくない。
それ以上にゲームのテーマ・コンセプトとして仲間が大事とか命が大事とか
そういう価値観が今一つ統一されてないのが気になる。
一人死んだらヤバいんだけど、
最終的には計画的に殺していった方が楽になることに気づくともうあんまり考えなくなる。
何より、死に慣れてしまうんだよね。
ホラーゲームで一度通ったところをビビらないように死に対する考えが甘くなる。
ロストのメリットやレベル制限についてはバランスをとるために入れたんだろうけど
メーカーにはゲームバランス云々以前になんかおかしいなって気づいてほしかったなと。
今一つゲームとして筋が無くってふわっとしたゲームになっている印象がある。
□総評
難しいが、良作に届かないそれなりな作品という感じ。
序盤のキツくも手探りに強くなっていく時期は凄く楽しかったが、
ロストからの立て直しの時期が物凄く辛いのと
テーマ性、コンセプトに対する一貫性の無さについては大幅な減点対象。
単なる高難易度DRPGにしかなってない、という問題があるんだよね。
ただ、高難易度なDRPGを求めてるプレイヤーにはええからやっとけ、と
心置きなく勧められる一本になっているのは間違いない。
最近緊張感味わってます?
のどがひりつく様な感覚、自分の心臓の音が聞こえるような動悸。
いまちょっとワクワクッとしたのはゴロリかマゾゲーマーでしょう。
やってみませんかミストオーバー。
霧の中へ。霧の中へ行ってみたいと思いませんか。フフッフゥ~♪
霧はいつでも、貴方というお客様を待っていますよ?
↑ピーターラビットくらいわかるよバカ野郎!