うれしいこと言ってくれるじゃないの。それじゃとことんよろこばせてやるからな(挨拶)
日本一ソフトウェアというメーカーのタイトルを買うことは分の悪い賭けだと思う。
シンプルに当たり外れが大きい上に、当たりの率が正直その・・・低めだとは思うんだ。
ただ、ルフランの地下迷宮と魔女ノ旅団やディスガイアといった大あたりタイトルもあるし何よりハズレが怖くてゲームなんてやれるかってんだ。
あとまぁぶっちゃけデカいメーカーもそれなりに外してるしね。ほらBF2042とか。
というわけで今回は普通に見たら分の悪い賭けであるところの
『屍喰らいの冒険メシ』をレビューしよう。
さて、本作はストーリー上のネタバレは一切ないが、本作の面白さを100%享受するためには
プレイ予定の方は本稿を読まないことを推奨する。
ほぼ同日発売であったポケモンアルセウスをスルーして怪しいタイトルを購入しちゃうような人なら確実に合うはずなので、まだやってないよって人はやっとけ。
まだ買ってないけど興味あるよって買っとけ。あと、攻略サイトは読まんほうがいい。
ってことで、ではよしなに。
□概要
───嗚呼、腹が減った。
新人冒険者向けのダンジョンのはずだった。
だが、遭難してとうに三日も経っている。
水も尽き、飯も尽き、精も根も尽き果てようとしている。ふらふらとした足取りで見つけた巨大なモンスターの死骸。
明らかに食べてはいけないモノであることはわかる。だが生きるために食うしかない。
かぶりつくと口いっぱいに広がる腐臭と想像を絶する味に気絶してしまう冒険者。そうして妙な場所で目が覚めた。
見たこともない場所だが、とりあえず餓死は逃れたようだ。
そして冒険者たちは再び歩き出す。ダンジョンを脱出するために。
本作は公式にて異食のダンジョンサバイバルSRPGと謳うだけあり、ジャンルとしてはかなりのごった煮。
ローグライク+SRPG戦闘+サバイバル+ハクスラ…と驚くほど多様なジャンルを包括している。
この喰らえこの野郎感は流石日本一ソフトウェアといったところか。
さて、個人的にサバイバル要素のあるゲーム*1はやるのも見るのも好きだ。
だが、共通して2点の問題を抱えていた。
まさか日本一がその両方の問題を解決してしまうとは思わなんだ。
そこら辺を含めて説明していこう。
□俺は虫だってかまわないで食っちまう人間なんだぜ。
↑ボタン一発で攻撃!倒した敵からはぎとるように素材を取れ!
基本的なゲームプレイは不思議のダンジョンシリーズと同じと思いねぇ。
自動生成されるダンジョンをフロア一周してアイテムやらなんやらを回収し次の階に進む。
探索時には満腹度と同様にカロリー・水分の二つのゲージをマネジメントする必要がある。
戦闘自体はアークザラッドシリーズを思い出すようなワンボタンで攻撃する仕組みであり、背面・側面から攻撃すると命中率やダメージに補正がかかる仕様となっている。
そのため、SRPGとしては戦闘のテンポが非常に良い。
ここは素直な評価点。
そして本作の大きな特徴として、階層ごとに休憩が出来、敵を倒すと必ず落とす素材を調理して食うことが出来る。
さて、早速だがサバイバル系ゲームに感じていた不満の一つ目を言っておこう。
それは綺麗すぎるということだ。
自分がサバイバル系ジャンルを好きになったのは漫画『サバイバル』(さいとうたかを著)という漫画を幼少期に読んだことが大きい。
その作品の中で「これはうどんだ!俺はうどんを食うんだー!」とミミズを食うシーンがある。
もう一つ。
こちらは有名な漫画『鋼の錬金術師』にて今まで履いていた革靴を煮込んで食うシーンがある。
しかしゲームの大半は極限状態に置かれていてもなお、まともな飯を食うのだ。
どこにでも生えてんじゃねーのか?ってくらいココナッツを食うしバナナを食うし、無限に壊れないかのような釣り竿で綺麗な魚を取って食う。
だが本作は違う。
↑ふつうこういうゲームではなぜか敵からパスタがドロップするもんじゃないですかー!…出ないよ。
例えば本作、スパゲッティを食えるのだが、本作の麺は虫である。
繰り返そう、蟲である。細長い虫を湯がいて麵にしているわけだ。
本作は明らかに漫画『ダンジョン飯』をパクっている。
そのダンジョン飯がある種爽やかに誤魔化してきた「そもそもその素材ってモンスターですよね?」という闇の部分をがっつり見せてくる”逃げ”のなさがたまらなく良い。
これよこれこれ!俺が求めてたサバイバルってのは!
「これを食うしかない」という極限感!
これが足りなかったんだ最近のサバイバルゲームにゃあよぉ!
闇を食ってでも光に帰ろうとする生き汚さこそがサバイバルだろ!!と。
まぁ、料理自体は割と見栄えが良い為比較的ポップな闇に収まっているのは残念だが、嫌々飯を食うという極限感がんまぁそそるそそる。
↑グエー!
何なら飯がまずいと顔芸をし、なんならコイツラ嘔吐までしてくれる。
分かってやがるぜ日本一!嘔吐フェチいるな?
あと明らかに蟲食わせフェチがいるぜ!性癖まで日本一かよ!
と、話は大分あれな方向に行ったが、このご飯というのがとても重要で、食事にはスキルがついており、食べるとそのスキルレベルが加算される。
耐性もあるが大きいのはやはり攻撃・防御・素早さだろう。
↑飯をしっかり食わせてるとダメージは1万を優に超える。武器も厳選して鍛え上げろ!
本作は同社看板タイトルであるディスガイアほどではないが非常にインフレしやすくなっている。
おおよそのステータスは最大500%まで伸びるし、ハクスラ要素があるため有益な装備を手に入れると最初は20~30程度だったダメージが30000くらいまで跳ね上がる。
装備は難易度によってスキルがつく量が変わるので最高難易度では逆に更なる火力が出せるだろう。
ただ、本作は素直にプレイしているとこういった部分を味わうことすらなくクリアすることになる。
料理バフ単体でクリアは出来るのだが、それでは本作の最も美味しいところを食べられていない。
本作をクリアする上で一番重要な要素はステータスか?違う。
ではハクスラで手に入る強力な装備か?それも違う。
ゲームをクリアする最大の鍵、それは「プレイヤーの好奇心」だ。
□男は度胸! 何でも試してみるのさ!
↑脱水症状が始まりだすとHPが一秒ごとに消えていく。そして死ぬ・・・
本作、10階までプレイ可能な体験版が提供されているのだが、
素直にプレイしていると大体6~8階あたりで詰む。
敵がそれなり以上に強いこともあるが、食事周りの問題が大きい。
効率的なカロリー・水分の回復可能な食事レシピが手に入らないことに加え、空腹と脱水のペナルティが強く割とサクサクとHPが削られて餓死してしまうからだ。
特に脱水による全滅は自分も二度ほど経験した。
一応、人数を減らしてプレイして一人当たりの食事量を増やす。
あるいは強烈な武器が手に入る等の運で突破する方法もあるが、
ここでプレイヤーが「何かやり方に間違いがあるんじゃないか」と考えてプレイできるかどうか。
本作の評価はそこにかかっている。
さて、サバイバル系ゲームにおけるもう一つの嫌なところを言おう。
それは、半ば定石が決まっていることである。
サブノーティカのような舞台が特殊なゲームはともかく、多くの無人島に降り立つゲームはまず裸の拳で木を殴ることからスタートする。
冷静に考えると大分頭がおかしい行為だが、多くのゲームはまず木を切って素材を集めて斧や作業台を作る導線となっており、木から銅や鉄に移っていく大きな流れがある。
だがそれはマインクラフトなどの先人が作った道だ。
サバイバルとは創意工夫だろう。
未知の無人島に降り立ち既知の定石を取っちゃうのはサバイバルとしては、積極的に批判することは無いけれど、なーんかな・・・と思ってはいたのだ。
しかし本作はそういった既知の行動はとれない。
そもそもジャンルが違うのだから当然ではあるが。
それ以前に本作は一切の導線や定石といったものを示唆しない。
いや本当にビックリするぐらい情報を提示しない。
これやったらこうなるよという説明を一切しない。
プレイヤーの「創意工夫」=「気づき」に全てを賭けている。
↑仕方なく石を茹でて食わせてたがコレに気づいてからは序盤の水分事情がかなり楽に。
例えば先述したプレイヤーを苦しめる脱水だが、実は素材をそのまま食うことで解決できる。
料理をすると、多くのアイテムが水分が飛ぶため、卵などはそのまま食った方が水分が補給されるのだ。
素材=料理をするためのアイテム、という凝り固まった常識がプレイを妨げていたのだ。
冷静に考えるとそりゃ卵だもん。そのまま食えるよそりゃ。
そしてそこではじめて気づく。
このゲーム「加工」ってメニューがあると・・・。
例えば画像の様にキュウスイソウという野菜を茹でるときれいな水に変わり、野菜のままでもそれなりに回復した水分がさらにガッと回復するようになった。
では、蟲を刻んだら…?小麦粉のようなものになり、レシピの幅が大きく変わった。
目玉を炒めたら…?なんとレミーラ*2の効果を持つようになった!
素直にプレイしていると階段を探して歩き回る羽目になるこのゲーム。
だが初期の初期から目玉自体は敵からドロップしていて、ちょっと加工するだけで全く別の効果を生むようになったんだぜ!?
少し手を伸ばせばそこに答えがあってそれに気づいた!
良質なミステリーを読んだかのような興奮と胸に湧き上がる熱いものがそこにあった。
気づくことで難易度は大幅に下がり、代わりにゲーム自体が大幅に面白くなった。
これはもうゲーム内随一の感動もんであった。
勿論、ゲームなんだからチュートリアルや導線はしっかりしておくべきだというのも一理ある。
このゲームがドラクエならばそうだろう。FFでもそう。
だが本作は”異食のサバイバルSRPG”だ。
創意工夫しろ、色々試せというぶん投げ具合がジャンルと奇跡的に噛み合い綺麗にマッチしている。
何より、
誰かに安全紐をつけられてリードされる冒険がサバイバルと言えるものかよ。
極限環境で現地で行う創意工夫こそがサバイバルの醍醐味だろう。
ただ闇雲に飯を食って敵を倒すだけのゲームなんて浅いもんじゃあない。
やれることはプレイヤーが増やせ!という豪快さとそれを可能とする深さ、そしてちょっぴりの雑さ。
それらがマッチした本当に奇跡の出来だと思う。
さて本作、ハクスラ要素もあると説明したがこれだけは伝えたい。
本作にはミミックという敵がいて、そいつを倒すと大量の装備をドロップする。
そして加工を色々やるうちに見つけちゃうんですよね。
とあるアイテムをとある加工をすることで・・・?
これに気づいてからはもう夢中よォ!
とにかく敵という敵をミミック化して武器を掘って掘りまくった。
厳選とかし始めるともう辞めらんないとまらない。
間違いなくこのゲームで一番おいしいところだった。
ピークのときには辞め時が全く見つからず、気づいたら深夜に及んで明日は仕事でもなおプレイしたいと思える熱中できるゲームだった。
気づいたからには止められない。しかし気づいちゃったから止めたい。
こころがふたつある~という状態に陥りながらも現実逃避するように堀リが止まらなかった。
□総評
傑作だ。ただし、枕詞に「人を選ぶが」とつくが。
完全にシンパシーがあったとしか言いようがない。
確実に奇人変人の類の人にはハマるだろう。
勿論不満点はあり、一つはクリアまでが長いということ。
全体を100とすると、60くらいまでで良かったと思う。
やりこみダンジョンもクリア後に用意されてることを考えると腹八分で終わらせるのが正解だったかと。
ちょっと詰め込みすぎかな~という印象はあった。
↑料理を作ること自体は一気に可能。ただ、材料が一部異なるとそれは出来なくなり、食わせるのは絶対に一つずつ。
次にUI周りについて。
どのサバイバルゲームでも後半は食料が余るものだが本作も例に漏れずそれである。
ただ、食わないと能力が伸びないため、一つ一つ食わせなければならないのが面倒だった。
全体的にこういった「一気にまとめてなんかやる」系のUIが出来ておらず装備の修理なども一つ一つ選ばないといけない等大分仕様に考慮が足りなかったと思う。
最後にダンジョン自体の単調さについて。
特に後半が顕著で、強力な武器と食事バフのおかげで先制して一発殴って終わりという戦闘が続くため大分怠かった。
ただそれ以前にダンジョンに刺激が足りない。
モンスターハウスこそあれど、ローグライクお馴染みの店や罠が無いためゲーム後半は走り回って階段を見つけるだけのゲームになっていた。
ただはっきり言ってスンゲー面白かった。
今すぐにでも続編を作ってほしいし、何ならクラファンされたら5万くらいまではポンと出せる。
俺が支えてやらないと…というキモイオタクの心になってしまった。
分の悪い賭けだった。
だが、だからこそ倍率は高く当たった時にはウハウハだ。
おススメですんで皆も良かったら買ってやってみてほしい。
日本一がダメになるかならないかなんだ、やってみる価値はありますぜ!
…まぁ日本一がヤバイってのは何年も言われ続けて今までやってこれたんでたぶん大丈夫だと思いますけど。
ではまた。
↑応援ありがとうございました!日本一ソフトウェアの続編にご期待ください!俺はしてるぜ!