ホスピタル病院

自分をモヒカン社畜だと思い込んでいる17歳JKのブログ

白黒つけるぜ!『Clair Obscur: Expedition 33』レビュー。

誰も知らない新星が全てなぎ倒すって物語は嫌いになれない魔力あるよね(挨拶)

恥ずかしい話、ノーマークでした。
メタスコア至上主義になるのもアレなんだけど、
それでも今年最高の92点とユーザースコア9.7点は見過ごせない。

恥も外聞もなく高評価タイトルに飛びつくべき時はある。
そんな超新星『Clair Obscur: Expedition 33(クレールオブスキュール エクスペディション33)』をレビューしよう。

なお、本稿は序盤以外のネタバレを入れていないが、
購入予定・購入して積んでいるの方は「無知のままプレイする」という体験をする方が面白いと思われるのでRTだけしてバック推奨だ。

RTだけ…いやいいねも欲しいな。ブックマークも読者登録も。全部くれ。全部。


……

ではよしなに。

 

□概要

JRPG大好きフランス人が作った二重の意味でジャパンライクなRPG!

中々馴染みのない単語なので「なんとか33」と言われがちだが和訳すると
「三十三番遠征隊」である。BLEACHかな?

FF大好き、とインタビューで言うだけあって、
そこらかしこにどこかで見たような要素を入れつつ、
フランス人らしい調理をした非常に豪華なコース料理をいただける内容となっている。

news.denfaminicogamer.jp

 

そんな本作をプレイした印象を一言でいえば
「え?そういうゲームやったん?」ということ。

しっかりとしたシステムに乗っかってくる多くの意外性があった。

どういった点が意外だったのか、そこら辺を紹介しつつレビューしよう。

 

□ぐるぐるって混ざるようなこの感じがたまらない

早速だが本作最も映える戦闘について。
基本的には一般的なタイムライン式コマンドバトル…
に様々な要素が追加されておりそれぞれを紐解くためにまず、
敵の攻撃を受ける防御の要素について説明するのが頭に入りやすいだろう。

防御手段はガードが存在せず、回避・パリィの二種類。*1

と、こういう分け方についてゲームに詳しい方ならもうお分かりだろう。
回避については判定が緩めの防御手段で、パリィについては判定が厳しめである。
どちらも成功時にはノーダメージで敵の攻撃をいなすことが出来る…だが。

タイミングはシビアながら通常攻撃の数倍の威力でカウンター!敵のスタン値も上がるぞ。

パリィは成功時に相手に強烈なカウンターを叩きこむことが出来、
通常攻撃よりも高い火力に相手をスタンさせるゲージを上げるオマケつきだ。

これがまずシンプルに爽快!

パーティ全体を狙う攻撃に対してパリィを決めるとパーティ全員でカウンター!

敵の攻撃は単発だけに限らずジャブ・ジャブ・ストレートのような三段攻撃や
敵からの全体攻撃といったものもある。
それらすべてしっかりパリィ出来ると…

出ますわよ。脳汁。

なお、パリィも回避も相手からの攻撃をいなすことが出来れば
APという銃撃やスキルを使うためのリソースを回復することが出来る。

L2ボタンを押すだけで銃撃モードへ。弱点を狙い撃つぜ!

銃撃とはいわゆる通常攻撃やスキルと異なる攻撃方法で敵の弱点などや空中にいる敵を打つための第三の攻撃方法。
AP4あれば4発撃てる、というシステムになっている。

各キャラに固有のシステムと固有レベルが存在。これ以外にもあるぜ。

そしてスキル!
本作はすべてのキャラが全く異なる固有の特殊スキルや特殊レベルを持っている。

主人公のギュスターヴはオーバーチャージという攻撃するごとにパワーが上がっていき、それを開放することで敵を超火力でぶちのめす必殺技を持つ!

2人目の仲間は魔法使いタイプで魔法を使うごとに属性をスタックし、
そのスタックした属性を使用して次の魔法を強化する!
というように各キャラ非常に個性が存在するような作りになっている。

なお、すべてのスキルにQTEが設定されており最適なタイミングで叩きこむと
パーフェクト!と最大ダメージが出せるようになる。

 

…ん?なんかいろいろ説明されてわけわかんないって?

安心してください。ざっくりいうとこれです。

ロール・プレイング・ゲームやったことない人も♪

スーパーマリオRPGです。

ん~?上の口はFF大好きと言いながら体は任天堂だなァ?
SFC時代のオリジナルはスクウェア制作なのが分かったうえでのネタです)

でも実際、下手にFFの何かというよりはスーパーマリオRPGが一番近いかな、と…。

 

さて、本作の戦闘については評価を見直す瞬間が結構あって。

壁が近づいてきて最後には…というどこかで見たボス。

FFリスペクトであろうデモンズウォールを彷彿とさせる
「規定ターンまでに倒さないと強制全滅させるボス」が寄り道にいてね。*2

当初回避重視で戦っていたんだけど火力不足で倒せず5回ほど全滅の憂き目にあった。
しかし、これで負けたらメイン進めるか…と思っていたラストチャンス。

パリィ主体で戦うとあっさり倒せてしまった。
「え?そういうゲームやったん?」

そう、本作はパリィである。
ここまでリスクを避けて回避中心にプレイしていたがここからガラッと印象が変わった。
先ほど言った通り、敵の攻撃は単発ではなくコンボもあるのだが、
敵の攻撃三連を全部回避するのと2回パリィして1回ミスして攻撃を受けても
まだ後者の方がAP回復量が高い!

このゲームはパリィを入れていくゲームなんだ!と目が覚めた。

 

…でもパリィですべて解決できるならアクションRPGでよくねぇか?
わざわざコマンドバトルにアクション要素いれるって良くねぇんじゃねぇか?
という疑問符が付くゲーム玄人の方、いらっしゃるでしょう?

 

本作はどこまで行ってもコマンドバトルが主です。
そしてコマンドバトルの肝は
いかに状況を把握し迅速に敵の戦力を削いでいくかという戦略のゲームである。と。

パッシブスキルを装備する画面。パッシブは本当に驚くほど存在する!

本作にはいわゆる必殺技のスキルとは別にパッシブスキルがあり、
それらを組み合わせることで先手必勝のアグロ型や、敵をスタンさせることを目指すスタンビルド型等多種多様なビルドが組めるようになっている。
特に後半はパッシブを装備するためのリソース量が増えるため、
後半に行けば行くほど強烈な効果をたくさん持って発動できる。

例えば本作のスキルには敵を火傷状態にするものがあり、
更に「火傷状態の敵に対して追加の効果を発生する」という技もパッシブもある。

銃撃もそうだ。
銃撃には20%で敵に刻印を植え付けるパッシブが存在する。

その刻印状態の敵に対して大幅にダメージを上げる技があり…

トロフィーにもなっている「シナジー」。パーティとパッシブの相乗効果を叩き込め!

こうなる。
このように9999ダメージという破格のダメージを与えることが出来るし、
何なら敵の攻撃を一切出さないまま、つまりパリィの機会さえないまま戦闘を終わらせることもできる。

中盤あたりからこのパッシブやスキルの組み合わせに
各キャラの固有レベルを見ながらのターン回し、
そして銃撃の有用性に、シナジーの重要性に気づくと…
「え?そういうゲームやったん?」となった。
後半になればなるほど違う味わいをくれる奥の深い調理だ。

 

確かにパリィは強力だ。
何よりド派手で誰もがわかりやすい魅力として見るだろう。
しかしコマンドRPGとしての戦略性も非常に高く単なるパリィも出来るRPGではない。
だがパリィによるAP回復も重要で…と
どっちも重要。完璧なバランスで成り立っている見事な戦闘システムだ。

 

□手のひらから逃げていった紫色の花みたいに

続いて探索だが…正直言ってこれは微妙である。

というのも、全体的に立体的なマップになってるのに三叉路や分かれ道の後に分かれ道を多用するウンコ(ド直球)みたいなマップになっているからだよ!!

本作はマップ内に休憩とエリア内ファストトラベルを兼ねた「遠征隊の旗」という、
ソウルライクで言うところの篝火があるのだがこれ以外に目印足りえるものがないんだよね。

ミニマップ?エリアマップ?ねぇよんなもん。

…昨今、雰囲気重視なのか「ミニマップつけるとプレイヤーはそればっか見ちゃってグラフィック見てくれないから…」とメンヘラ染みた発言をかますメーカーがいる。

移動画面。ブラーこそかかるが画面にはUIが一切ない美しいグラフィック一本勝負。

実際本作は通常の画面ではUIを一切出さずに美麗なグラフィックを原液のまま飲ませてくるのだが、
プレイヤーに迷惑と負担をかけてやるほどか?

 

また、もう一つの問題があって。

SFCドンキーコング開始当初の場面。左の崖を上がると…

皆さん、SFCドンキーコングはご存じだろうか。
一番最初のステージは本来右に行くところを左に戻ると1UPバルーンが置いてある。
そんなちょっとしたお遊び要素があるのだが…
本作はこのドンキーバルーン現象を驚くほど多用する。
上の口はスクウェアのくせに下の口は任天堂だな!

わかり辛いが最初のダンジョンの逆走した壁の突き当り。嫌な予感がするぜ。

実際ゲーム開始最初のダンジョンをまず逆走するとアイテムが落ちてある!!

こういった後ろを振り向くとアイテムが落ちている、だとか。
ムービーが始まってボスを倒すと少し進んでいるのでそのまま進む前にいったん付近を捜索するとアイテムがある。なんてのがとても多い。

ゲームクリア後に攻略サイトを見ると「あのダンジョンにまだあんなアイテムがあったのか…」と見落としに愕然とした。

ちなみにこういった見落としを防ぐ方法がある。
ゲームがマップ機能をつけることである。
…後戻りできるゲームにマップをつけないって本当に悪手なの、わかってください…。

 

さて、そんな探索だが2つ褒められる点がある。

ジオラマのようなワールドマップ。こっちにはマップがあるぜ。なら何故ゲフンゲフン

まずワールドマップがあること。
本作はゲーム開始当初からイベントがリニアに始まりシームレスに最初のダンジョンに連れていかれるんだけど、そこを抜けるとワールドマップで驚いた。
「え?そういうゲームやったん?」

自分はこういう縮尺されたワールドマップのあるゲーム好きだったので加点したい。

 

過去の遠征隊のメッセージ。死に際に残すメッセージは後に生きる者のために。

もう一つは過去の遠征隊のメッセージが落ちてること。

過去の遠征隊は全滅しているのだが、「後に続くもののために」とメッセージを残す。
死に際のメッセージという時点である種強烈な魅力がある。
内容はバラエティに富んでいてシンプルに読み物として面白く、少なくともお金なんかよりも「あたり」であった。

例えば単純な死に際の恨み言や親への感謝といった定番のものから、
故郷の仕組みにうんざりして遠征先を新たな故郷にしようとした者や、
キノコを食って全滅した遠征隊等、本当に愉快であり面白い。

大きな探索モチベとして非常に有用に機能した。

 

僕が死に際に残すとしたら…そうだな…
「ゲーム開発者はおとなしくマップ機能をつけろ…」かな…

 

□さぁどうなっちゃうのか見せてよ。本能?理性?どちらが勝つの?

では、最大の評価点であろうストーリーに移ろう。

本作はゲーム開始当初からかなり難解な舞台設定が提示される。

外界から切り離された島と町。
遠景に映るモノリスに示された34という数字。
何かのお祭りだろうか、人々が口々に明るく楽しそうに笑っている。
主人公は元恋人に会い、ぎこちなくも挨拶を交わす。

そしてモノリスの数字が34から33に変わり…

33歳であった元恋人は花びらと共に”抹消”される。
あのモノリスのカウントダウンはそれ以上の年齢の人間を消してしまうのだ。

 

…そして元恋人の死を見送った主人公は決意を固め、
この悲劇の原因たるモノリスにいる魔女「ペイントレス」を倒すために旅立つ。
67番目の遠征隊「33番遠征隊=Expedition33」として。
しかし着いた浜には明らかに33歳以上の壮年の男性が現れて…
というのがプロローグのあらすじである。

 

一連のイベントを見て真っ先に言ったのがこの言葉。
「え?そういうゲームやったん?」

 

実際、抹消のムービーに入る前の冒頭では妙な言葉を言うんだけど、
よく説明されないまま祭りを楽しんだらなんか急に人が消えて死んだ…?
と説明がないまま悲劇を叩き込まれる。
要はこの祭りって、死出の旅をせめて派手にしようという逃れられぬ運命への最後の手向けなんですよ。
確かに66回も逃れられない死が待つならばどこかでそうなるわなと。

こういった「直球の説明がないまま物語が進むため、プレイヤーはキャラのセリフは勿論、表情などからもシナリオへの理解をする必要がある」というのが
本作のストーリーテリングの最大の特徴と言っていいだろう。

JRPGが好き、ということだったがいわゆる「あらすじ」機能が無かったり、
日本のゲームで有りがちな「バカキャラがあえて間違ったことを言ってそれを正すことでシナリオを解説する」ということをほとんど行わない。

複雑な設定を含めてプレイヤーが今一つ飲み込みにくいものがあるのは事実だ。

 

とにかくカッコいい構図と音楽でぶん殴ってくる恐ろしいパワーである。

ただ、本作のムービーの演出はグンバツである。

ムービーの構図や画角などが素人でも綿密に凝られてることがよくわかり、
更に音楽の出来がとびぬけてよい。
完全に一つの映画を見ているような興奮と驚きがある。

本作はAAAタイトルで近年見られる「ボタンを押すとムービーのセリフが飛んで次のシーンに行く文字送り機能」が搭載されていない。
なのでムービーは全部見るかスキップの二択しかないのだが、
徐々に徐々にイントロで盛り上がっていき戦闘開始でサビに入る!
という逆GetWild演出も行われる。
作中のある重要なボス戦でこれをやられてとてつもなくテンションが上がった。
止めて、引きながらアスファルトがタイヤを切り付けて絶頂しない日本人はいませんからね。

なんかよくわからないものをよくわからないままゲームを進めるパワーがあったのは間違いない。
映像と音楽によってヘッドロックされてしまっている。

 

しかし、正直言って1章(本作はAct1という形で章仕立て)の中盤あたりで少々だれてきたのは事実であった。
PS5を気合を入れないと電源を入れれないような状態になった。

だが、1章のラストであるどでかい事件が起こる。そしてこう言ったのさ。

「え?そういうゲームやったん?」

戦闘時の演出もムービー交えて物凄いつくりになっており
うっかり大興奮して再度ヘッドロック

 

2章からが事実上、ゲームの本番。
広がる世界に、巨大なボス戦の演出、様々なパッシブ、武器にスキル…。
魅力的な要素に虜になる自分にもはやヘッドロックなんて不要であるが容赦なく、
いやむしろ苛烈なほどに演出と音楽が締め付けてくる。

 

そしてシナリオが続き最終章に入ると…こう言ったんだ。

「え?そういうゲームやったん?」

最後まで意外性と緩急のあるシナリオは徹底的に僕を離さない。
最高の演出と共に最終決戦に臨む僕はもはや喜んでPS5を起動していた。

最後の最後、ラスボスを撃破し漸くゲームはヘッドロックを外し、
その手は締め付けるわけではなくサヨナラのために手を振ってくれた。

僕も手を振りながらこう言ってやったのさ。

「よくわからんが…よくわかっとらんが…とにかく凄い面白いゲームだったぞ…」と。

 

□総評

傑作です。ただ、ユーザースコア9.7は過大評価かな。と。

間違いなく面白いのですが、メタスコアのユーザースコアが驚異の9.7については
少数精鋭のスタジオ・処女作・珍しいRPG・今年一のメタスコアといった「物語」に評価を引きずられてるかなと。

上でも言っていますが、シナリオが直球で説明されないまま物語が進んでしまうため
「理解があっているのかどうかわからないままゲームを進める」というモヤモヤは人によっては相当なストレスだと思います。

一応フォローしておくと僕程度の知能でもクリア後に見た考察サイトの認識とほぼほぼピタリ一致していたのでキチンとシナリオを読んでいけば理解は難しくはないかと。
ただそうなると日本語吹き替えがないのがだいぶウィークポイントになってしまいますが…。

 

とはいえ、間違いなく良いゲームです。本当にお勧め。
プレイ中は攻略サイトや考察サイトを途中で覗かずにきちんとプレイヤーで考えてプレイしてみてください。
クリア後即考察サイトに飛び込んでのめりこむ様に読む楽しさを味わってほしい。
なんなら攻略サイトの「取り返しのつかない要素」に特大のネタバレがあるからな!マジで!
(クリア後だったんで僕はセーフでしたがコレ酷いなって思いました)

 

さて、「Expedition 33」が「三十三番遠征隊」というのは言った通り。
では「Clair Obscur」とは何か?
答えは「明暗法」という絵を描く上での技法のことです。

本作、あなたの中でこのゲームが明暗どちらに分かれるのか。
是非プレイして教えてくれよな!

ではまた。

貴方が楽しんでくれるだろうという自信、もちろんある!

*1:ゲーム後半で更に増えるが本稿では割愛

*2:2025/05/25 21:37 教説→強制の誤字を修正。