人生で一生に一度は「ここは俺に任せて先に行け」って言っといて後でひょっこり現れたいよな。（挨拶）
友達と伴侶が今まさに崖から落ちようとしている。どちらかだけを助けられますが、貴方はどっちを助けますか？
という万葉集と古事記にも載ってるクイズあんじゃん。
あれ、実際にそういう場面になるこたないだろうけど一番ロマンティックかつ台無しなのは
「友達を助けて、落ちた伴侶を追いかけて死ぬ」だと思うのよ。どう？台無しでしょ？
こういうのはどちらを犠牲にするのか、あの時こうしてればっていうのが重要なわけで。
でも多分一番後悔しないと思うのよね。まぁあと死んでるんだし。
という訳でその崖から落ちる選択肢をどちらを選んでも後悔しそうな人に贈るゲーム
『DAYS GONE』（デイズゴーン）をレビューしよう。
・・・いつにもまして導入の挨拶が雑や！
□概要オブザデッド。
↑左画像の帽子男が主人公ディーコン。右画像真ん中のハゲが友人ブーザー、右端が妻のサラ。
それは唐突に訪れた世界の終末（パンデミック）。
主人公ディーコンとその妻サラ、そして友人のブーザーは
突如襲い来るフリーカー（本作のゾンビの名称）とパニックから逃げまわる。
しかしその最中サラが重傷、ブーザーもまた負傷してしまう。
彼女を助けるため、そして友人を助けるために
ディーコンはサラを政府のヘリに乗せ、自身はブーザーと共にその場に残る。そして2年後。ディーコンとブーザーは生きていた。
だがサラが搬送されたキャンプは全滅、死体すら見つからなかった。
絶望のまま生きるディーコンの前に2年の間一度も見なかったNERO（政府）のヘリが飛ぶ。
”何かサラの情報がつかめるかもしれない”
彼はバイクのアクセルを回す。
過ぎ去った日々の後悔と今でもまだ胸に残る彼女の思い出を抱いて。
↑本作のゾンビことフリーカーはとにかく数が多い。そしてヒャッハーなリッパー。
簡単に言えば（ある程度形式が違えど）よくあるゾンビ物のポストアポカリプスだ。
ゾンビに暴徒と化した人間（野盗）もいればヒャッハー！な世紀末野郎もいる。
凄い雑に「よくある世紀末ゾンビ物」を想像してくれればそれが正解になるレベルの世界観だ。
ジャンルもよくあるステルス＋TPS、
そして同じくソニー製の「The Last Of Us」を髣髴させるシナリオと
はっきり言ってデジャビュ感が強いゲームだ。
正直最初は「これつまらないTLoUじゃね・・・？」と思ったくらいだったし。
ただ勿論、この最初の印象はどんどんと覆されていく。
□不満点オブザデッド
↑ヘリを見つけたところから物語は動き出す。しかしそれにつけても燃料が辛い…
さて、内容についてがっつりレビューするため先に不満点から述べておこう。
- 洒落にならないレベルで大量のバグがある。
ハボック神ほどではないが空中浮遊する敵や
バイクに乗るフラグが消えるといった初歩的なものから
音声がずれる、テクスチャが消えるといった久しぶりに見るようなバグ、
なにより近所の不良がメス堕ちするより頻度が高い処理落ちには閉口する。 - 移動がよろしくない。
初期バイクは1km走るとガス欠を起こす。マジで起こす。
移動速度も遅く、目的地を指定してオート移動も出来ず、敵襲も食らう。
オープンワールドで移動にストレスをかけるなよ素人か。 - 初期体力・スタミナが虚弱児並みでストレス。
生まれつきディーコンちゃんは体が弱く、よく2年間生きてこられたなってレベルで初期体力が低い。
スキルやパワーアップアイテムで強くなるが2年間で取っとけこんくらい！ - ボリュームがちと多すぎる。
寄り道要素の充実はすばらしいし、ワールドマップが事実上2つあるため恐ろしく広いのだがサブクエをやらないとメインが進まない箇所があり、
メインストーリーが佳境に入るとこんなんどうでもいいからメイン行かせろ！となるテンポの悪さ。 - ロードが遅い。
そこまで頻発しないがいざロードが入ると結構遅い。がっくし。
さて、こんだけボロクソ言ったがつまらないのか？というと
コレがびっくり。滅茶苦茶面白いんですよ・・・！
□何故か全体的にそれなりに整っているゲーム性
↑異次元の彼方に飛ばされる。車の中に埋め込まれる狼という意味が分からないバグが…
いや、道を歩くとバグにあたるくらい多いんですよバグ。
マジで頻発する処理落ち・テクスチャ貼り遅れ・地面が消えて謎空間に落ちる、と
きび団子与えて無いのにオトモが3人着いて来る。鬼が島にでもいくんかと。
（どうも長時間ゲームをやってるとアカンっぽい）
↑すいません、\nってなんすか。初歩の初歩みたいなバグがある・・・。
果てにゃトロフィーの日本語すらバグという始末。
日本語音声とかちゃんと着いてるローカライズなのに何故こんなことで・・・？
でもね。それ除くとなんか全体的に整ってるのよ。
↑マップを自由に移動することはあまりない。とにかくバイクでお使いが基本だ。
このゲームはオープンワールドゲームにありがちな
自由な探索というのは正直あんまりやらない。
というのもメインの足となるバイクには燃料が必要となり、
（特に序盤はかなりカツカツであるため）移動範囲に自然と制限が出来てしまい
プレイヤーが自由に世界を移動して探索する、という意思を思い切りくじいてくる。
クエストの類もキャンプという何箇所か存在する拠点で受けて
そこから開始するのがほとんどであるため基本的にはお使いを繰り返すゲームになっている。
しかも物語を進めるためには絶対的にこのお使いをこなす必要がある。
そこにプレイヤーの自由意志は殆ど無い。マジで無い。
あえて言うなら「好きなお使いを選んでね」がちょろっとある程度である。
だから実質的に世界を自由に移動するってのはそれこそクリア後くらいなもんって位には自由度は薄め。
↑野盗のキャンプやフリーカーの巣を破壊する判断はプレイヤーに。地図が更新されるなどメリットがある。
ただ、このゲームが上手なのがお使いの目的地に行くまでの道のりの中で
フリーカーの巣や野盗のキャンプといった任意に攻略するエリアを発見させて
そこの攻略をするかをプレイヤーの判断に委ねていること。
ここらへんのマップの構成が結構巧みなので
プレイヤー自身が自分の意思で動く感覚を与えているし、
自由度があると錯覚させられたわけで。
（ただ、クリア後に色々回るとメインクエで行かなかった所に
様々なイベントがガッツリあって今までの世界が思ってたより小さいことに驚いた）
んで、従来のゾンビゲーと比べて戦闘のバランスがいい。
本作はロメロ・ゾンビではなくドーンオブザデッド以降のゾンビであるため
ガッツリ走ってくるし数がものすごく多い。
んで、人間の敵も必ず徒党を組んで立ち向かってくる。
しかしそれ以上に主人公ディーコンが強い。
↑後ろからグサっとね。そして斧などを使うと敵の部位が吹き飛ぶぞ。たのちい！
ステルスキルは問答無用で一撃必殺なんですけど、
銃でヘッドショットすればこれまた問答無用で一撃。*1
さらに切断系の武器で戦うとちゃんと部位が切れるし頭も飛ぶ。
この仕様のおかげでまず爽快感がマシてる。
ゲーム開始当初は十秒間全力ダッシュできない虚弱なディーコン君も
ちょいとバット持たせりゃ人が変わったかのように最初から強い。
銃もあまたある火気を使いこなせてヘッドショット関係なく滅茶苦茶強い。
流石にデッドライジングのような無茶苦茶さはないもののマジでガンガン無双する。
ますます爽快感がマシマシ。
↑多い多い多い多い！狭い場所に誘い込んでマシンガンをぶっ放せ！たのちい！
そうそう、PV見た人は気になっているだろう
波打つようなゾンビの大群についてはきっちりたっぷり用意されている。
こんなんどうやって倒すんだよ～！！と初見では思うだろうが
大群を倒すとアンロックされる強武器やスキルが整ってくると
ギャハハハゾンビが紙みたいに吹き飛んでくぜぇぇえええええええ～～！！！
と爽快感がヤサイマシマシアブラカタメ！
要するにステルスつええ！でもバレてもつええ！それでいてステルスも重要！でもバレ（以下略）
と両方共に上手く共存している。
↑ケツを掘られるディーコン。逃げ方が下手だと取り囲まれてどうにもこうにもならずに死ぬぞ。
ただ、流石に10人以上のゾンビに一斉に囲まれるとそのまま波に飲まれるように死ぬ。
でもこの死に様もある種「あっこれゾンビ映画に出たやつだ！」とちょっと面白い。
逆に言うと5・6人くらいならマジで何とかしてしまうディーコン君マジゾンビ映画の主人公。
あれなんですよね。
先ほどからゾンビ映画ゾンビ映画といっているとおりゲームのバランスが
「無茶苦茶強い主人公に対して数の暴力以外で勝ち目が無い敵」
というゾンビ映画的バランスなんですよ。
ケーキを切り分けるように少数ずつ片付けると無双できるし、
ホールケーキ一気食いするような無茶をすると死ぬ。
本当にゾンビ映画的な、英雄的な行動をするか否かで生死が別れるので
何となく理不尽感がなく納得感がある。
そしてゾンビ映画といえば様々なお約束がある。
例えば「弱点は頭」だとか「トドメを刺さないと起き上がってくる」だとか
「子供は死なない」「ちょっとしたエロスを挟んでカップルは死ぬ」とか。
そして最たるものとしては「割と雑なストーリー」だろう。
しかし本作はゾンビ”映画”ではない。
本作で最も魅力的なのがストーリーだ。
□それなら右を取れ。信じてるままに僕等は左へと行く。
シナリオはざっくり3部構成となっており、
第1部では主人公ディーコンの人となりや設定をガッツリ固めていく。
DAYS GONE（過ぎ去りし日々）というタイトルが示すとおり
失った日々への郷愁や過去への清算が主題になっている。
元軍人そして、クラブに入っていたバイカー（ギャングみたいなもん）という
異色の経歴を持つ主人公は細身ながらタフガイで異常な戦闘力を持つ。
メタ的に言えばオープンワールドだからなのだが様々な人の依頼を断れない優しさと
野盗に対して「人殺し共め、皆殺しにしてやる！」とかのたまう凶暴性を持つ彼だが
実際にはメンタル面は非常に繊細で妻サラのことをずっと想い続けている。
↑結婚した教会。もう崩壊した。今（2年後）はもう、無い。
そんな繊細ゴリラはメインストーリーが進むごとに過去の回想を挟む。
若かりし頃のゴリラがどのようにして妻・サラと出会い、愛しあい、結婚したのか。
これでもかと言わんばかりに美しく重い愛の思い出をプレイヤーにぐいぐいと押し付けられる。
当然ながらプレイヤーは繊細ゴリラにウホウホもといシクシクと感情移入する。
個人的な視点としては彼自身妻の生存は殆ど諦めており半ば”生きる理由”として
「妻・サラの死体を見ていないから死んでいない」としているようにすら見える。
↑特に好きなシーン。妻だけヘリに乗せて自分が残ったことに安心したことを後悔したことの独白。
実際、物語の途中でも一度踏ん切りをつけてたのにまた僅かな希望に縋りつくシーンが見られる。実際”それ”が確定しまったらば彼に生きる意味も理由もなくなるから。
そして過去の清算、と一言で言ってもそれが本当に出来るのか？というのは
実態として難しい、というのが普通の人間だろう。
特に彼は”当時助けられた”可能性があり、
死体を見ていないことから”まだ助けられる”可能性が捨てきれないのだから。
そういった女々しさもまた人間臭さを感じられて
主人公にグイグイと、DANDANと心魅かれていった。
あと、翻訳（ローカライズ）と声優の演技が凄く良いのも心を加速させる。
ここら辺は流石ソニー。
↑過去を見ても人は未来にしか進めない。だから今生きてる人と手を取り合うのだ。
人は誰でも何かを選択し、その度に選ばなかったものを捨てていく。
しかしどうしてもその選ばなかった方が正解だったのではないかと悩み苦しむ。
ディーコン、そして他の生存者もまた、
”今”を作った選択肢が正しいのかどうか分からないまま生き続けている。
しかし、”今”が向かう先は過去ではなく未来なのだ。
↑生きる理由・希望を持たねばならない。それは人だけじゃなくて動物だっていいのだ。
先ほどこの作品のテーマは過去への清算といったがもう一つある。
それは「生きるため（未来へ）の希望」だ。
この世界は非常に暗く先が見えない暗闇の世界。
だからこそ本作ではその暗い世界を生きるために「蝋燭を立てろ」と言う。
それぞれ生き方の違うキャンプ。
それぞれ生き方の違う生存者たち。
彼らが寄り添い、か細い信頼・か細い希望・仲間や恋人を蝋燭として
前に進むための拠り所にし
必死に終末を生きる姿にはぐっとこみ上げるものがある。
そしてストーリーの要所要所で現れる（主にディーコンの）
「正しいかどうかはわからないが未来のためにやらねばならない」という
崖から飛び降りるかのような選択にはしっかりと感情移入していると打ち震える。
実際ね、確実に100%の正解じゃないんですよ。
そして他に選択肢があるんですよ。その要所要所の選択。でも
行け！誰かから嫌味を言われるかもしれんが俺は支持するぞ！と
右手を心の中で掲げながらコントローラから手が離れなかった。
それだけ魅力ある主人公だしそうさせるシナリオだった。
無論、ゾンビ映画のお約束「やっぱり生きてる人間が一番怖い」という人間との対立展開も有るが
打ち立てたキャラクター性と人間ドラマが濃密で非常に面白い。
よくある話ではあるが決して陳腐ではない面白さだ。
↑第2部の冒頭。ここから意外な展開が起こり、面白さが加速する。
そしてこのゲームは第2部に入るとまさかの事実が待ち受けており
怒涛の急転直下、あるいは急転直上かという驚きの展開となる。
プレイしてて「えっマジで？」と声に出してしまった。
そしてそれを自分でも笑ってしまった。
実際のところ本作はこの第2部からが本編と言っても過言では無い。
ここからギアが一段上がり、「取り戻せない過去を取り戻す」ための非常に大きな物語に移っていく。
そして決着が着く第3部も見逃せない。
というか、ここまで来るともうクリアするまで終われない。
ストーリーのギアはとっくにトップに入り、ブーストまで吹かしている。
アクセル全開で物語を突っ走りゾンビ物とは思えない
爽やかなラストには充足感があり非常に満足した。
魅力溢れる主人公とそれをとりまくキャラクター、
そしてストーリーには間違いなく一見の価値がある。
是非、プレイして確かめて欲しい。
↑本当にやることが山積みなんだよなぁ・・・。
そしてクリア後も様々なクエストがあり、
中々手を離れてくれなかったし自分も離す気が起きなかった。
だってまだゾンビ焼ききってないしー。野盗潰しきってないしー。ほしいバイクの部品あるしー。
いやぁどっちが極悪人なんだか・・・・。
□総評
諸手を挙げて賞賛は出来ないが良作。
海外のファミ通ことメタスコアでは72点（2019年5月8日時点）というややきびしめの点数だがこれは単純に
海外では似たようなタイトルが多く目新しさが感じられなかった点がデカイかと。
（あとバグか）
それこそ大量のゾンビが迫ってくる！というゲームはワールドオブウォーZが最近発売されたばっかりでしたしね。
あと、序盤のダルさは確かに擁護しがたい。
ガソリンの制限は正直なところチュートリアル的な意味も含めてたのは感じた。
ガソリンは尽きやすいですよ、補充せんといかんよ、あんまり遠くにいっちゃだめだよ。みたいな。
ただちょーっと匙加減が強烈過ぎたなと。
自分も序盤「これ詰まんないのでは・・・？」と疑問に思いながらプレイしてた部分はあって。
ただ、「なんか微妙だなー、あーこういうとこクソだなー」とか言いつつ
プレイはちゃんとしっかり継続してたのでストーリーの魅力とジャンルとしての魅力、
そしてそれらの魅力を損なわない程度のゲーム性は最初からずっと存在し続けていたんですよね。
なもんでやっぱ序盤のダルさを乗り切れば間違いなく面白いと思う。
さて、今貴方の前には2つの選択肢がある。
崖にギリギリ捕まっているDAYSGONEのソフトと、
崖にギリギリ捕まっている僕と
どちらかだけを貴方は助けられる。
↑買うか死ぬか！
僕のことはいい。だから早くGEOかカメレオンクラブ*2に行って
お金を出してDAYSGONEを助けてやって欲しいんだ。
なーに、崖から落ちたくらいで俺が死ぬもんか。
俺が落ちたくらいでDAYSGONEをやる人口が増えるなら安いもんさ。
じゃあ、よろしくなァァァァァアアッー！！！（崖から落ちた音）
↑最後唐突に凄く好きなシーン貼って終わる。何気に右下に犬がいるのもいい。大好き。
