ホスピタル病院

自分をモヒカン社畜だと思い込んでいる17歳JKのブログ

【ネタバレほぼ無】それは人間賛歌。映画「カメラを止めるな!」レビュー

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注意!Attention!警告!

本レビューには公式サイトに載っているレベルでしか「ほぼ」ネタバレはありませんが
本作は情報を入れずに観ることを推奨します。

ゆえに見る予定がある。確定している。という人はお帰りなせぇ!
すでに鑑賞済の人あるいは、見ようかどうか"無よりの有"という人の背中を谷ってか沼に蹴り落とすの記事になります。

あと、この映画、誰かに話さないと落ち着かねぇ!!という個人的な感情の賜物だったりします。

■前置きとあらすじ 

公式(http://kametome.net/introduction.html)よりあらすじ。

とある自主映画の撮影隊が山奥の廃墟でゾンビ映画を撮影していた。​
本物を求める監督は中々OKを出さずテイクは42テイクに達する。
そんな中、撮影隊に 本物のゾンビが襲いかかる!​
大喜びで撮影を続ける監督、次々とゾンビ化していく撮影隊の面々。
”37分ワンシーン・ワンカットで描くノンストップ・ゾンビサバイバル!”……を撮ったヤツらの話。

さて、日本人のみならず、海外も
”低予算”で”大ヒット”
という言葉が大好きだったりする。海外で言えばSAWやパラノーマル・アクティビティといったホラーが低予算*1口コミで伸ばし後にシリーズ化を果たしている。

なんとたったの300万円で作られたという本作も一見ホラーに見える・・・がその本質は全く違う。
まさに人間賛歌の映画だった。

■緻密すぎる脚本と伏線。そして演出

上述したあらすじの通り、映画を撮っているシーンからスタートする。
自分はあらすじとポスターを見ていたため、特に驚きもなくふーんと見続ける。
演技の下手な主演2名に監督は怒鳴り散らす。
(ヘタな恐怖の演技に対して)「お前の人生は嘘まみれなんだよ!!」
「俺の作品だ!!!」
マイク・メイク・助監督のようなスタッフも強面の監督にウンザリとしながら半ば強引に映画撮影の休憩に入る。
そしてその休憩中に「実はここには人体実験場だったっていう噂が…」という話をしていると本物のゾンビが現れる…というごくごく平凡なホラー映画のテンプレを10分かからず消化する。
しかしどうも怪しい。会話の間の取り方が一々まだるっこしい。
日常なんてアニメのように会話が弾み続けるなんてこたぁないだろうが流石に10分でここまでちぐはぐとした会話が何度も続く。
普通であれば切り上げるだろう会話を何とか続けようとしている。
そして極めつけは監督が思い切りカメラ目線でカメラを止めるな!と言うのだ。

ははぁ、なるほど。この映画はこのどちらかだろう。
 ①唯一顔が映らなかったスタッフ「カメラ」視点のゾンビパニックPOV*2
 ②監督が主演2名の演技の下手さにキレて、本物の恐怖を教えるためにドッキリをやっている
・・・と思っていた。しかし違った。そんなもんじゃない、そこにあったのは
紛れもない映画への愛情と情熱。そして人間賛歌だった。

物語の構成はあまりにもネタバレなので深く話さないが、最初の30分はすべてが伏線と言ってもいいほどの恐ろしいほど緻密な脚本だ。
何せ上述の太青字
これら全て伏線でありのちに回収される。

■根底に人間賛歌。そしてエンターテイメント。

監督はこの作品を「二度と取れない作品」と語っている。
事実そうだ。この作品は唯一無二。この作品以外でこの構成は出来ないだろう。

この作品を唯一無二としているのは構成は勿論、
根底に流れるテーマが唯一無二の名作に押し上げている。

しつこいようだがこの映画は人間賛歌、つまるところ
人生の素晴らしさ、人間の素晴らしさ。
そしてもう一つ、公式から引用しよう。

無名の新人監督と俳優達が創った”まだどこにもないエンターテインメント”を目撃せよ!

その人間賛歌をエンターテイメントというオブラートに包み、観客全てに全力で伝えてくれる。
張られた伏線をバシバシとラスト30分で回収していく様は極上の快楽と興奮で衝撃と共に観客は否応なく迎えてしまう。
そして終わったあと、恐らく全ての演者・キャラクターに愛着が湧き、好きになる。

僕は名作ってのは馬鹿にもわかるから名作だと思っている。
ならばこれを名作と言わずしてなんという?

■続編には出来ない、低予算ゆえの完成度。

僕は続編映画も好きだ。
ルーカスフィルムスター・ウォーズ、マーベルのアベンジャーズシリーズなんかはほぼ、見ている。
しかし続編前提ゆえの消化不良感や伏線の未消化というのはいかんともしがたいものが多い。
あと全体的にオリジン(起源、一作目)が落ち着いた出来なのも不満だったり。

この作品はたったの300万円*3で作られた。
スターウォーズシリーズの最新作、ハン・ソロ」で言えば3秒分だとか。
続編を前提とした作品には出来ないことが3秒分の作品で行われた。
大量の伏線をただの一つとして忘れることなくすべて回収し、すっきりと終る美しさすら感じるこの映画。
まだ未視聴で興味がわいたのなら是非見てみてほしい。
出来れば早く。
なんせとにかく誰かに話したくてたまらなくなる作品ゆえに情報を踏んでしまう可能性がある。
ツイッターやブログなんかではこらえきれず吐き出している人も多かろう。
俺とかな。

f:id:exa_axe:20180731010838j:plain↑視聴後はこいつら全員に愛着が湧いてしまうのだから恐ろしい。

*1:といっても海外の低予算は結構な額だが

*2:「Point of View Shot」の略。カメラの視線と登場人物の視線を一致させるようなカメラワークでよりリアリティのある映像を作り上げることができる方式

*3:とはいえ画面に出ている演者が20人は下らないので、流石に300万円はふかしすぎではないだろうか・・・