さて、皆さんクソゲーオブ"ザ"イヤー(以下、KOTY)をご存知だろうか。
2ちゃんねる(現5ちゃんねる)にて年を代表するクソゲーを選ぶという趣旨のスレッドだ。
自分も2009年ごろから2013年ごろの規制強化による書き込みが容易に出来なくなりはじめたころまでは常駐、それ以降はたまに見ていたのだが、
2017年の携帯機について大賞なし、という初めての事件が起こったようで話題を呼んでいる。
「クソゲーオブザイヤー2017携帯」まさかの「該当作品無し」 ゲーム界“裏の祭り”に何が起きたのか (1/2) - ねとらぼ
これについてねとらぼでコメントされている方がかなり詳しいようで2つの理由をあげている。
①スレッド自体の勢いが落ちた。(また、スレッド自体がたつのが遅かった)
②コンシューマゲームにかげりが見えてきた。
この二つについて全く異論は無いが、意図的かそうでないのか2点欠けてる観点がある。
※一点細かく言うなら”2ちゃんねる”が下火というのはやや主語が大きすぎる。
レス数だけならサイト全体・(据置版のある)家庭用ゲーム板はほぼ横ばいをキープしている。
ただ、今回騒動のあった携帯ゲーム板に限るだけならそのとおりで、
レス数だけなら最盛期の2013年から2017年で3分の一程度に落ちている。
参考サイト:http://merge.geo.jp/history/benkei/#/famicom/month
■前置き
長くなるため先に結論を書いておくと、
”それ”はクソゲー自体のインフレと、
KOTYスレ自体のインフレ、である。
本記事についてはKOTYについて時系列で書きつつ上記について解説したい。
なお、書くきっかけ自体は携帯機だが、本記事のメインは据置機についてである。
また乙女ゲー部門とエロゲー部門は良く知らない。
その点、ご留意されたし。
(携帯機はな…2012年のNewラブプラスとシェルノサージュ騒動ぐらいしか追ってなかったんや…)
まずKOTYの選考基準と傾向については大きく分けて4つの時代がある。
ざっくり分けると以下のとおりになる。
①2004年~2006年 大作・続編ガッカリゲー時代
②2007年~2009年 中小・面白バグ時代
③2010年~2012年 ストロングスタイル時代
④2013年~ 虚無時代
また、KOTYについて関連するであろう情報を以下の表にまとめたので参照のこと。
・スレッド数
・期間(最初のスレッドから最後のスレまでの日数)
・消費速度
・年間ソフト発売本数(パッケージソフトのみ。マルチタイトルも別カウント)
対象ハードはPS2・PS3・PS4・GC・Wii・WiiU・Switch・XBOX・360・XB1
年 | スレッド数 | 期間 | 消費速度 (スレ数/日) |
年間ソフト 発売本数 |
2004年 | 4 | 66日 | 0.061 | 564 |
2005年 | 6 | 212日 | 0.028 | 541 |
2006年 | 7 | 351日 | 0.020 | 439 |
2007年 | 8 | 360日 | 0.022 | 455 |
2008年 | 72 | 352日 | 0.205 | 428 |
2009年 | 65 | 384日 | 0.169 | 330 |
2010年 | 48 | 388日 | 0.124 | 323 |
2011年 | 89 | 437日 | 0.204 | 307 |
2012年 | 32 | 446日 | 0.072 | 254 |
2013年 | 53 | 404日 | 0.131 | 244 |
2014年 | 37 | 415日 | 0.089 | 259 |
2015年 | 38 | 439日 | 0.087 | 220 |
2016年 | 30 | 462日 | 0.065 | 239 |
2017年 | 21 | 499日 | 0.042 | 292 |
①大作・続編ガッカリゲー時代
【大賞】
2004年 ゼノサーガ エピソードII 善悪の彼岸
2005年 ローグギャラクシー
2006年 ファンタシースターユニバース(PSU)
KOTYの幕開け。
どうしても大賞に目が行きがちだが、
ノミネート作品をずらり並べると傾向がわかってくる。
2004年ノミネート(抜粋)
・ダービースタリオン04(エンターブレイン)
・幻想水滸伝IV (コナミ)
・アーマード・コア ナインブレイカー(フロム・ソフトウェア)
2005年ノミネート(抜粋)
・ラジアータ ストーリーズ(販売:スクウェア・エニックス、開発:トライエース)
・DRAG ON DRAGOON 2(スクウェア・エニックス、開発:キャビア)
・THE カンフー(販売:D3パブリッシャー、開発:ヴァンテアンシステムズ)
2006年ノミネート(抜粋)
・ガンパレード・オーケストラ 白の章・緑の章・青の章
・縁日の達人(バンダイナムコゲームス)
・聖剣伝説4(スクウェア・エニックス)
早い話がかなり多くのタイトルが有名シリーズの続編であり、
あわせて「バグなど問題はあれどとりあえず遊べる」タイトルも並ぶ。
いわゆる「ガッカリゲー」である。
特に2005年は顕著で大賞のローグギャラクシーは十分に遊べるゲームであり、
後の「なんら面白くないゲーム」と比べると糞ゲーなどということ自体がおこがましい。
また、同年のノミネート作品もラジアータストーリーズやドラッグオンドラグーン2など
難はあれど遊べるゲームがずらりと並ぶ。
これは当時は投票制であったこともあり「売れた数=被害者数⇒KOTY」という形になっていたことが大きな原因で、
大作やシリーズ作品のように発売前の期待値と
発売後の実態と落差の大きい大作ガッカリゲーが並んでいたということがある。
たまにこのガッカリゲーを表彰する時代のほうが面白かった、そのほうが良かったという人を見るが
この時代はスレッド数自体は一年でも二桁行かない程度であり、実のところガッカリゲーをクソゲーとしていた時代は非常に短く、かつマイナーであった。
はっきりいえばKOTYスレはかなり早い段階からガッカリゲー時代を卒業しているため幻想を見ているようなものである。
②中小・面白バグ時代
【大賞】
2007年 四八(仮)
2008年 ???
2009年 戦極姫~戦乱に舞う乙女達~
2006年大賞のPSUも発売三日でロールバック*1という伝説級の障害を決めたがこのゲームに関しては伝統を覆す超絶的なパワーがあった。
KOTYのWikiにも記載があるとおり、この年の大賞「四八(仮)」の影響により大きく路線が変更された。
大きいのは投票制*2から選評制*3に変更されたという点だがこれにより、大賞を取るものが中小メーカーのタイトルも有りとなった。
これまで大賞を取るものはPSUを含めて全て「大作」あるいは「ある程度名の通った作品」という伝統があった。
これは上述したとおり、被害者の数がそのまま票数に繋がることが大きな要因であった。
しかし、これにより名前も知らないような会社が作ったタイトルが大賞となることが増えた。
次に選評制になったことで
「選評が面白いかどうか」
ひいては
「面白いバグがあるか、面白いテキストに変換できるか」
が重要視されるようになった。
これらにより
大作ガッカリゲーがノミネートすら難しい状況となった。
2007年のノミネート作品は以下のとおりだが上述した2006年以前と比べると明らかに有名作品が消えたことが明白だろう。
2007年ノミネート(+1)
・オレたちゲーセン族(株式会社ハムスタ)
・APPLESEED EX(販売:セガ、開発:ドリームファクトリー)
・エルヴァンディアストーリー(スパイク)
・一騎当千 Shining Dragon(販売:マーベラスインタラクティブ)
・ゾイドオルタナティブ(販売:タカラトミー、開発:翔泳社)
・オプーナ(コーエー)
方向性の転換という意味では「四八(仮)」に勝るゲームは無かった。
だがしかし最も”KOTYというスレ”に影響を与えたのは翌年のアレ。そうアレである。
そうコレ。
「メジャーWii パーフェクトクローザー」である。
2008年 大賞 メジャーWii パーフェクトクローザー
勿論、メジャーWii(ってか他のゲームについても)は画像以外にもクソ要素があったからこそ大賞に選ばれたのだが、下手をしなくともパッケージ画像より有名となってしまった
「180度首が右に曲ガールなノゴロー」のこの画像はこれだけでクソゲー大賞と言い切れるほどに説得力があり実際同年に発売された
↑左はファミ通で合計12、右は13。合わせてもクソゲー判定される数字となる。
ファミ通でオール3の「プロゴルファー猿」や
大江戸リックドムの「大奥記」を過去にするほどのインパクトを見せ付けた。
また、この頃youtubeやニコニコ動画にて本作品のバグの動画が上がり話題を得る。
その際多くの人間が"KOTY"という単語を用いた・知ったことから
元々じわじわと上がっていた知名度がぐんと伸び、さらに2007年は大量のクソゲーが発売された。
結果、スレッドの長さは前年の8スレから72スレとなった。
実に9倍の伸びである。
続く2009年の大賞「戦極姫」も同様に
↑告白シーンでスタンド(後ろに立つもの)が発動するバグにくわえ、おっさんの絵のインパクトもあった
キャラクターの立ち絵が重なるという見て面白いバグがあり、
画像や動画など「明らかに見てわかる面白いバグ」があることも一つの大きな評価基準になっていた。
が、そんな笑いの時代も唐突に終わり力が支配する時代に変わる。
③ストロングスタイル時代
【大賞】
2010年 ラストリベリオン
2011年 人生ゲームハッピーファミリー
2012年 太平洋の嵐~戦艦大和、暁に出撃す!~
Welcome to this crazy time.
この時代は画像・動画でわかりやすいバグやネタを探すことから少々離れ、
やってても面白くない、要素が足りないというシンプルなクソゲーが大賞となる時代であった。
当時据置ハードの潮流はWiiからPS3/360のハイエンド機に移っており
「(バカ売れしたWiiの流れに乗って)低予算で適当に作った」タイトルが減って
「仕様どおりに作ったが面白くないクソゲー」が増えていたことが原因と思われる。
これ(仕様どおりに作ったが面白くないゲーム)を
KOTYスレではストロングスタイルと呼称する。
2009年までのKOTYが、スゴロクでいえば
・バグでサイコロが画面外に吹っ飛ぶ。
・バグであがりマスにピッタリつかないと最初からになる
・バグでコマの表示が他のプレイヤーと入れ替わる
といった、バグ等による偶然発生したクソ要素がネタにされがちであったのに対して
2010年以降のKOTYは
・30マス先にあるゴールをプレイヤーとAIが交互にさいころを振って目指す。
ただし、特にイベントなどは発生しない。
というようなバグや偶然ではなく、そもそもの仕様がクソ。
といったものが対象となる。
このストロングスタイルへの流れは実は必然ともいえる。
笑えるクソゲーというのが実はそれなりにレアという側面はあるが
これは修正パッチという概念が当たり前となり、単なる笑えるバグ程度ならパッチで治してしまう、ということもある。
そして同時にパッチで治せない=そもそも仕様がクソでどうしようもない。そういったものだけが対象になったのである。
笑いの要素より、明確に中身に踏み入る形でクソさが競われる流れになっていく。
そしてそれはさらに加速する。
④虚無時代
【大賞】
2013年 ビビッドレッド・オペレーション -Hyper Intimate Power-
2014年 仮面ライダー サモンライド!
2015年 アジト×タツノコレジェンズ
2016年 古き良き時代の冒険譚
2017年 RXN -雷神-
この時期になるともはや大賞はおろかノミネート作品すら中小やマイナーゲーが中心となってくる。
「ジョジョASB」や「ストリートファイター×鉄拳」など
ガッカリゲー時代ではノミネートされていたような「バグや問題はあれど遊べる」ゲームは選評が殆ど起こされずスルー状態となった。*4
・・・後述するテイルズオブゼスティリア(以下、TOZ)を除いては。
マイナーゲーが中心とは言ったが一辺倒とまでは言っておらず、
2014年にはライダーゲーが大賞、2013年はアニメ(キャラ)ゲーが大賞となっている。
なお奇しくもどちらもバンナムである。
両者ともに内容自体が糞であることは言うに及ばず、しかしながら
前者は悪質を極めた課金要素が酷く、
後者はソフト容量が最大50GB入るPS3というプラットホームにおいて容量629MBというHDDへの優しさしか能のないというゲームで
もはや「力(ストロングスタイル)があるのは当たり前、もう一つ芸がないと選考対象にはならない」という世界になっていた。
このように、クソゲーの基準がインフレしていくにつれ、
合わせて選評の評価基準もインフレしていった。
顕著に出たのが、TOZの事例である。
↑テイルズシリーズ久々の問題作。個人的には確かに駄ゲーだが、KOTYまでは難しいかと。
ゼスティリアについては初版と別の代理の人間による投下があったのみで
それもゲームシステムではなくキャラクターや開発への憎しみが大きいということで選外とされている。
※TOZ選評への反応は「【2015】クソゲーオブザイヤー part29【据置】」のNo.431以降を参照のこと
そのTOZ選評への反応自体は非常に丁寧かつ真摯であるためスレ民度たけぇなーと思っていたのだが、同時に書きにくさも感じた。
気合を入れたテキストが丁寧に突っ込まれまくるとなると普通の人は尻込みするだろう。
ユーザーが主体の作品を発表するコミュニティでは良くあることだが、
作品のクオリティが上がりすぎると
後発の人間が批判を恐れてしり込みしついてこないという事例は多々ある。
※その逆の例が批判を遠ざけるシステムを構築した「小説家になろう」だったりする
結果的に、TOZのあった2015年にはなんと選評が2本のみという状況になる。
2015年のスレッドを一気に読み返してみたが実際選評そのものが対象の2本とTOZ以外殆ど存在しない。
翌年(2016年)も3本とすくなく、2017年は5本まで持ち直すも
「へんな人」が突撃しやすいこのスレッドにおいて平和を守るためとはいえ自治が行き過ぎた結果
「選評を書くこと自体のハードルが極めて高い」という状態になった。
そんな中でもノミネート、そして大賞に選ばれるようなタイトルは並みのクソゲーではない。
あえて言うなら虚無。
虚無の申し子とも言うべき極めてテクニカルなクソゲーでないとKOTYとは言い切れない、という異常なまでのインフレが発生していた。
■改めて総評
さて、KOTYは以上のような流れで推移していった。
メジャーWiiのあった2008年で一度爆発し、
その後検証に時間を必要とした2011年をピークにスレッド数も緩やかに減っていっている。
最大値を2011年とすると2017年は四分の一にまで下がっている。(89スレ→21スレ)
このスレッドの消費数の減少の原因は外的要因と内的要因の二つがあり、
【外的要因】
・PS2⇒Wii⇒PS3⇒PS4と市場のメインハードがハイエンド化(携帯機も同様)。
それに伴う開発費の高騰によるゲームソフト全体の母数の減少。
・ソーシャルゲーがヒットし、CS<スマホという市場の図式が成り立ったことで
ろくにノウハウも無いようなメーカーによる適当なゲームが発売されなくなったこと
・市場規模の縮小もあり、これまでKOTYを受賞していたようなメーカーの倒産やゲーム事業撤退などが発生した。
※メジャーWiiのタカラトミーはゲーム事業を事実上の撤退(別会社に移管)
携帯ゲーで受賞したイメージエポックは倒産した。
⇒総じて「話題の減少」
【内的要因】
・「四八(仮)」以降、ガッカリゲーがノミネート対象にすらされなくなったことで
対象ジャンルが狭くなったこと。
※事実上、候補が少なくなったわけだから話題が狭まる=スレが伸びなくなる。
・面白いバグから、ゲームとして成立しているがただただつまらない仕様が重要視される流れとなり、
極端にクソゲーのハードルがインフレしていった。
・選評自体に求められるクオリティが上がったことで選評の投稿が非常に減った。
⇒総じて「ハードルの上昇」
外的要因については冒頭のねとらぼの記事で指摘しているとおりの要因で
内的要因については上述したとおり。
これら内的・外的要因による影響でスレッドの消費速度が落ちたと見ている。
(勿論携帯ゲーの場合、板自体の過疎化も影響しているが)
今回携帯機から大賞が出なかったことについて「必然」
と記事内でも書かれており、コレ自体には同意する。
そしておそらくこれは未来の据置版KOTYにも起こりうることだと予期している。
実際のところ、スレッドの消費速度の減少は現在進行形で起こっておりそして求められるクソゲーのハードルは上がったままだ。
個人的な昨年のKOTYは「鉄拳7」だったが、これは
・SNS上での開発者の発言を信じて買ったら大嘘だった、
・まともにオンラインプレイが出来なかった。
という割とままある事例で
ふざけんなクソ原田サングラスとって謝罪しろつぶらなお目々が可愛い野郎がボケェ、とは思うものの現行のKOTYスレが求めるクソゲーハードルには全く届かないだろう。
そして、CSゲーム自体がなんだかんだで少数精鋭となりよほど酷いゲームは殆ど無くなったこと。
次にパッチの影響もあって酷いバグゲーもかなり少なくなったこと。
恐らく、凡ゲーは増えてもクソゲーは消えていくだろう。
あったとしても過去ほど酷いものはなかなか出てこないと思われる。
今年の6月末時点でNewガンダムブレイカーがKOTY候補といわれているが
過去の慣例から見るとパッチでそこそこの改修が行われ、悪くないゲームとなり、
ノミネートからも対象外となるだろうと個人的に予期している。
KOTY継続に向けて今更ハードルを下げろ、なんて不躾なこたぁ言わない。
おそらく来るであろうそのときに備えろとも言わない。
時代は変わり、不必要なものは消えていく。そしてどんなものも消える。
だけどKOTYという存在があったことは時々でいいから思い出してください。
あとついでに購入する権利をやるからオプーナを買って欲しい。
↑ホラここまで見たんなら買った買った!2本買え!