ネットの流行はたまに乗るといいことがある。(挨拶)
流行、追ってますか。僕は定期的に逆張り癖が走ります。
特にネットの流行ってなんか嘘くさく感じることあるじゃないですか。
ほらアナ雪2の悲劇とかありましたしね。
とはいえ、皆やっている・ハマっているには訳がある。
そんなわけで今ネットで大流行の
『Monster Hunter Wilds(モンスターハンターワイルズ)』をレビューしよう。
ではよしなに。
□概要


もはや説明不要の国民的ハンティングアクション。
モンスターハンター最新作である。
前作MHワールド(以下、MHWo)において1000万本オーバーという驚異的なヒットを叩き出し、文字通り世界を変えたタイトルの直系の最新作である。
とはいえもう7年前のタイトルである。うわじかんのはやさこわい。
色々と忘れていたり中途半端に覚えていたりなMHシリーズ。
変更点や新要素を中心にレビューしていこう。
□未来を掴んで期待値を超えて額に突き刺す風
システムの大きな変更点としては簡易化とシームレス化が挙げられるだろう。
前作に存在した痕跡調査はほぼ意味をなさないものとなり、殆どの場合最初から敵の場所は分かっている、あるいは導き虫というガイドでサクサク追いかけて発見できる。
また、特に下位が顕著なのだが装備の作成のための素材数が少なめになっていたり、
着せ替え装備が装備を作れば自動でそれが使えるようになる、といったそんなにめんどくさくしなくてもいいだろと思っていた要素がかなり優しくなっている。
シームレス化については本作の拠点となるベースキャンプ(以下、BC)はこれまでの
フィールド⇔拠点と別れるスタイルではなく
フィールドの中に安全エリアがある、というような形になった。
つまり、クエストを受けなくてもフィールドにスパッと移動できることができるようになった。
また、それに合わせて様々な要素がそれに向けて改良されているがそこは後述。
簡易化したとはいえ、マップそのものは上は山の上まで下は地下までと非常に立体的かつ複雑な地形になっている。
ゲーム後半になってもえ?こんな部屋があったのか?と思う場所が見つかるほど。
しかし安心召されよ。
本作のハンターには強い味方としてセクレトの存在がある。
MHWoに存在した条件を満たすと使用可能なモンスターをそれこそBCからオートで追ってくれる馬のような要素が
本作ではデフォルト、本当にゲーム開始初期から使用できる。
勿論、乗っている間に砥石が使える・アイテムが飲める等が可能。
幕末や三国志の馬に慣れていると反応遅せぇなと思うところはあるが基本便利で快適だ。
ただ、「これだけマップを作りこんでいるのにオートでボス前に行き、逃げたボスをオートで追うというオートtoオートなのは風情に欠ける」という指摘をSNSで見た。
うっせぇなぁ馬鹿野郎。
言わんとしていることはわからんでもない。気持ちもわかる。
しかし如何せんここまでマップが広い本作で毎回歩いて追ってられるか。
こういった国民的タイトルへ成長したMHゆえに今回、
「すべての人を納得させる難しさ」に直面したように思う。
□今に見なよきっと君のまぶしさに誰もが気付くだろう
では一旦戦闘について語ろう。
これは自分のポリシーなのだが、MH並びにハンティングアクションを楽しむ際には
一つの武器種を選択し、そのタイトルでは絶対その武器種しか使わない。
という縛りをしている。
例えばMHP3ではスラッシュアックス、MHWoではハンマーであったようになるべくタイトルごとに別の武器をずっと使うようにしている。
そして今回は弓一本でクリアした。
これは本当にただのポリシーであり、飽き防止のためであり押し付けるつもりもない。
…のだが、困ったことが一つある。
本作の戦闘には新要素が4つある。しかし
今回選んだ弓だとできないアクションが2つあるわw。
鍔迫り合いというガードを行うと出来、成功すると相手に隙を作るアクション。
相殺という一部の攻撃で相手の攻撃をはじいてしまうアクション。
この2つはさっぱりわかんねぇっすわ。
故に以降のレビューは弓一本でクリアした人間のものであることを頭に入れて優しい目で見てほしい。ごめんね。
それで本作の弓だが初めての遠距離メイン武器でちとびくびくモンであったが
…面白い。
本作の戦闘を面白くしているのが残る新要素2つである。
まず見切り避けである。
要はジャスト回避なのだが本作は以前のフレーム回避より更にわかりやすくなり、
回避することで以降の当たり判定が帳消しになり、スタミナや弓専用ゲージが回復する。
そして大本命集中モード、というより傷口システムである。
前作MHWoの拡張版アイスボーンに傷システムがあったがアレはその部位が柔らかくなるというシェフの下ごしらえのようなものだったが
本作は傷を更に攻撃し続けることで赤い傷口が出来る。
ここを攻撃するとまずダメージ量が上がるのもそうだが、
弓矢の場合、ロックオンが可能になる。


更にロックオンから追撃の矢を打つことができるのだがこれが一気通貫に敵の体を貫く大ダメージを叩き出せる。
敵は必ず怯みそして場合によってはダウンする。
傷口は破壊され部位破壊報酬も頂ける。
ダウンとなれば当然追撃のチャンス。
この攻撃でさらなる赤傷口が出来ると当然怯みループが出来るのだが…
…超面白い。
動けない相手をグチャグチャに崩壊させるんだ、これはもうセックス以上の快楽だッ!
さらに、リオレイアやリオレウスなどがブレスを吐くのはお馴染みなのだが
相手が大技を繰り出すと敵の部位が赤く光って傷口つまり弱点になる。
なんて理想的なリスクとリターン!
敵の攻撃は避けるしかなかった旧作と比べてチャンスがあるのが嬉しい。
そしてこの大技へのカウンターは弓が強い!ある程度離れても赤い光を狙える!
ニヤニヤしながらオラ炎吐いてみろよワンだよ吠えるんだよ!と黒い笑みを浮かべた。
更に本作弓矢と言えば瓶システムがあるのだが貫通ビンがハチャメチャ。
え?これ拡散じゃないの?って聞きたくなるぐらい広範囲にビシバシ当たる。
当てるだけで、エフェクトだけで気持ちいい。
おっと、言い忘れていた。
本作新登場のセクレトにはサブ武器を積むことが出来る。
ゴッドイーターのように遠・近武器を切り替えることもできるが自分は別の属性の弓を積んでいた。
これによりいちいちキャンプに戻らず武器交換が出来るのが嬉しい。
シームレス化を狙ったシステムの恩恵の一つだろう。
モンハンらしい操作するだけで気持ちいいアクションは健在で新システムもがっちりハマった。
戦闘システムについてはほぼ文句なしの出来である。
唯一の不満は少々操作が煩雑であること。
序盤は初めての武器であることも手伝って
よくわからん。この武器は強いのか?この戦い方は正しいのか?という疑問もそうだし
特定の操作で簡単に装衣を脱着できるなどシンプルに操作が複雑だった。
この手の不満の結びの句は「慣れると快適」がつくのだが煩雑さは最後まで変わらない。
ただ、
曲射も強い!
竜の一矢も強い!
竜の千々矢はちょっとわかんない!
難易度がやや低めということもあってどれを使っても敵を倒せる・狩れる。
ならいいじゃないか。
開き直って楽しむことが重要だ。開き直りも時には重要だ。
そう、相殺も鍔迫り合いも知らんままレビューを書くことも良い開き直りだ!!
まぁそれはよくないか。(別の人のレビューも読んでみてね)
□気づけば謎は解かれ木目ごと見慣れた板の上
さて、戦闘については良いのだが、
シームレス化について少し思うところがある。
一点わかりやすいのが食事システムについてだ。
旧シリーズにおいて食事は基本一回のクエストにつき一回食べることでバフ効果を得る仕組みだった。
しかし本作は1度の食事で〇分間のバフ効果が続くようになる。
早く終わるクエストをやればそのバフを何度も使えるのが嬉しい。
めちゃくちゃ便利になり、腹持ちという意味で時間制限を理解しやすいので非常にいいシステムだと思う。
だが、既にプレイしている人なら「ああ、あれか」とわかるような欠点を抱えている。
それは狩りの途中。そろそろ部位を破壊できるな、という際に表示される
まもなく食事の効果が切れます。
そしてそろそろ倒せるというときに表示される
食事の効果が切れました。
そして敵の目の前でスコン、と減ってしまう体力バー…。
時間制限ゆえに当然の帰着。
しかしながら今!?ここでか!?となってしまう要素である。
リカバリー方法としてBC以外でも飯は食えるし、オーパーツ(秘薬)と化したこんがり肉で体力上限は回復できる。
だが敵を目の前にして飯を食いたくない。テンポが悪くなる。
別にクエスト中は切れなくて良くない?
残り1分でギリギリクエスト入った!よっしゃ飯効果持続!でよくない?!?
おそらくこれはシームレス化における施策の一つと思われる。
装衣も今回は以前までのクエスト開始時にリキャストではなく時間制になっているし、
先ほどのセクレトに積めるサブ武器や、フィールドに設置可能な簡易キャンプ(ファストトラベル可能ポイント)等、かなり便利になっている。
ただ、本作は基本的にいつものモンハン形式で物語が進み、クエスト周回する。
MHWo以上にフィールドに出る意味がない。
はっきり言うと、
シームレス化といつものモンハンでシステムが喧嘩して仲直りできていない。
黒の絵の具と白の絵の具を混ぜてグレーを作ろうとして白と黒のマーブルになった。
仕方ないのでシマウマの絵を描いているような感じになっている。
本作はゲームを開始すると何も考えなければ適当なオンラインロビーに放り込まれる。
コミュニケーションも取ることが出来る、だが殆どの場合意味がない。
例えばリオレウスを倒したいです!と叫んでもそんなの勝手に行けばいい。
救援信号を出せばロビー外からでも助けることが出来るからだ。
これ、従来の集会所を別に用意すればよかったんでない?
一々起動時にオンラインに接続される手間やサーバーを考えるとあまりにも意図が見えない。
なのでここからはアルミホイルを頭に巻いて読んでほしいのだが
これ、MMO化しようとした?
シナリオ部分は討鬼伝2みたいにしようとした?
そしてそれを従来のモンハンに戻した?
という疑問が湧いたのだ。
討鬼伝2はMHPのヒットから各メーカーが作ったモンハンライクであるが、
集会所こそあれどシナリオはほぼ全てフィールドで完結可能なオープンワールドシステムだった。
時折シナリオ上の都合で村に帰る必要はあるものの
基本は受付に行くことなくフィールド上で一連の流れでシナリオが進んでいた。
オープンワールドの出来は悪く批判も多かったのだがいわゆる従来の、
クエストを受けてクエストをこなし帰ってきたら物語が進む。
このつくりからの脱却を目指した点は評価したい、好きなゲームの一つである。


翻って本作ワイルズはメインシナリオはおろか、周回しようとした際にも受付が必須である。
これだけデカいフィールドに出ても他に戦うハンターもおらず、受付で受け付けて倒したら即座に全員帰還する…。
フィールドでずっと連戦するスタイルを想定してたのでは?
あるいはシームレスに街を出て、外にいる別のハンターを気が向いたら援護して。みたいなMMOスタイルを考えてたのでは?
せめてシナリオのクエストは一々戻らなくてもよいのでは?
開発中なんかあった?と毒電波を受信してしまうのもやむを得ないだろう。
アルミホイルはまだつけたままでいてね?
勘違いしてほしくないが、MMO形式にしなかったからダメだった。
フィールドでシナリオをまとめて流れでやらないからダメだった、という批判をしたいわけではない。
こんがり肉のようにリカバリーは用意されているしシステム的にそこまでデカい不満ではない。
仕様通りに作ったらなんか変、という”ストロングスタイル”はゲーム業界の七不思議。
そういったタイトルは何度も見てきた。
あと、やっぱりクエストごとに帰った方が優しいのは優しいシステムなんですよ。
万人受けを考えるとどうしてもいつ補給すればいいんだ?とわからなくなる人へのケアが必要になることを考えるとね。
ただ、討鬼伝やゴッドイーターというフォロワータイトルを圧倒的なクオリティを見せつけ、
これにはかなわない!とフォロワーのファンすら強引に納得させたMHWo、
それを作ったスタッフの新作である本作が
妙にちぐはぐなシステムになっているな?と疑問に思って書くことは許してほしい。
カプコンクラスのゲームメーカーがこれに気づかなかった、とは思えないしね。
□そう君の苦悩は君が自分で選んだ痛みだ
さて、最後にストーリーに触れておこう。
発売直後は「5時間半でクリアした!」というような単語がSNSで見られたが
自分はちょこちょこ野良救援しながら12時間ほどで下位クリア。
更にそこから上位に入ってもシナリオは続くのでざっくり20時間~25時間はかかるだろう。
ボリュームについては不安を持たなくてOKだ。
ではシナリオについてだが…僕はかなり好き。
まず本作はキャラクリではあるがその主人公が驚くほど喋る。
ムービーだけではなくゲーム内の会話シーンでもバンバン喋る。
ちょうど最近、キャラクリのない固定主人公でありながら無口、というゲームをプレイしたのだがそれと比べると物凄い思い切りと踏み込みである。
この手の作品は感情移入のためにわざと無知な主人公にしがちだが、
本作の主人公は前作主人公がそのまま来た、というレベルで頼れる大人だ。
流石に本作から登場した新種やシステムには無知な部分があるが、
「イャンクック?ああ知ってる知ってる(意訳)」と有名なモンスターなら頭に入っている。
こういった珍しいキャラ造形を設定しているのはやるなカプコンと褒めたい。


また、各モンスターと初遭遇する際は旧作の生態ムービーのようなものが挿入され、
そのままシームレスにクエストが開始される。
これは本当に見事でテンションが持続したままやるぞ!となるし、生態ムービーがはいることで「ただ倒すだけの敵」ではない生き物としての特色がわかるのが良い。
会話劇やここで必要か?というような戦闘以外でのムービーが多いため、
この良いムービーも含めてちょっとムービー多すぎない?と思う分はありつつも、
この初遭遇ムービーは本当に素晴らしい。
新しいモンスターが楽しみになる良い仕組みだ。


シナリオそのものはテーマ自体はわかりやすく単語で説明されてしまうのだが
そのテーマから一ミリもぶれない一貫したシナリオになっている。
アタシこういうの好きッ!
本作のもう一人の主人公として「ナタ」という少年がいる。
ハンターが頼れる成長しきったオトナに対して、彼は成長するガキ。
彼が故郷を一人離れ、他人を知り、ハンターを知り、モンスターを知り、世界を知る。
彼が成長し、心が変わり、意思が変わる。
Wildとは野生を意味する。
動植物が誰かの意思によって変えられることなくありのまま山野で自然に生きること。
本作はWildではなくWildsという複数形である。
その複数に含まれるのがハンターであり、ナタであり、
そしてシリーズの主役であるモンスターをも含めた。
実に見事に綺麗にまとまっておりいやぁいいもの見たなぁと
しみじみスタッフロールを見て感慨にふける…
こともなく。すっ飛ばして次の”主役ども”を狩りに行ったわ。
ええねんええねん。感動したけどそれはそれとして狩りは楽しいねん。
□総評


良作である。
傑作足りえないのはチグハクさもないわけではないがもう少しいろいろ新要素が欲しかったかなと。
意図的かどうかわからないがバリスタを使うような防衛戦がなかったり、
撃龍槍がごくごく一部のマップにひょいっと置いてある程度などクエストバリエーションの薄さが気になる。


あと先ほどムービーの多さに触れたが、
強制歩きのシーンがかなり多いのは明確にマイナス。
強制歩きは最初は良い。マップの広さを見せつけるシーンでプレイヤーも興味津々だ。
だが途中から喜劇となり路傍の石となり拷問となる。
洋ゲーRPGじゃねぇんだから。MGSTPPのスカルフェイスのアレじゃないんだから。
気にならないって人もいるけどいやーこれキツイよコレ…。
実際、すべての人を納得させるという意味ではなかなか難しいと思う。
初めてモンハンをプレイする人にも楽しませて、
ずっとモンハンをプレイしている人にも楽しませて、
なんか新作なんだから新システムもっと欲しくね?とかのたまう阿呆(自分)も楽しませないといけないのは大変だなと。
とはいえ、楽しいよ。マジで。
戦闘はマジでほぼ文句ないです。
難易度が低めということもあって入りやすいしライトゲーマーでも問題はないだろう。
新種モンスターも旧作組もちょうどいい数で入っており、今後も追加される。
文句なくオススメできる一本だ。ハードごと買っても損はしないだろう。
流行に乗ること自体に抵抗を感じる気持ちはわかる。
だが、乗ること自体も君の意思で行われたことだ。
たまにでいいからさ、乗ることを”自分の意思”で選んでみるといいかもよ?
楽しいこともあったりするぜ?
ではまた。