昔、苦い風邪薬をピルクルで飲んだことがあります。(挨拶)
苦手なゲームジャンル、皆さんございます?
私は割と幾らでもあります。
そして苦手だったジャンルも幾らでも。
おや貴方、もしかしてメトロイドヴァニアは苦手かね?
そんなわけでそんなあなたに処方箋。
(おっブログ名の病院らしさが5年以上やって初めて出たかもしれん)
『プリンスオブペルシャ 失われた王冠(Prince of Persia The Lost Crown)』をレビューしよう。
では良しなに。
□概要


UBIソフトが贈る2Dアクションメトロイドヴァニア!
探索して敵を倒したり謎を解いたりして能力を得てさらに深くに潜っていくアレですね。
ちなみにこの本作、シリーズから
リメイクを除くとなんと14年ぶりの新作だそうで…。
下手すれば今プレイしている人の中には前作発売時には生まれてない人がいてもおかしくない。
そして長年待ってたファンには感無量なんじゃなかろうか、って感じのタイトルとなります。
さて実のところ自分、メトロイドヴァニア苦手なんですよね。
全部が全部嫌いってわけじゃないんですけど、
メトロイドヴァニアって「探索」と「戦闘」の2つのシステムを天秤にかけて
大抵は「探索」が重要視されて「戦闘」がおろそかになりがち。
過去にレビューした『ENDER LILIES』や『Bloodstained』もそうだが
戦闘に幅を加えてはいるものの面白くはないのが困りもの。
自分は基本的に戦闘狂なので、戦闘が面白く無いゲームはちょっと評価が下がりがちになります。
では本作はどうか?
そのあたりを踏まえつつレビューしていこう。
□虹色に輝く人生が欲しいの
早速だがまず各アクションが触っていて気持ちいい。
僕の中の「触っていて気持ちいい」アクションは小一時間程考えたが、
以下の3つの条件がある…と思ってる。
-
ボタンを押して即行動するレスポンスの良さ。
リアリティを意識した慣性等の阻害要素が無い等。 -
プレイヤーの意図を理解してくれるアクション。
弓矢を打つ際に目の前の敵はエイム不要で自動でねらう等。 -
一定のリズムやテンポがある。
3・3・7拍子が気持ちよく感じるように人間には好むテンポがある。
逆に気持ちよくないアクションを言い出すと戦争になるので控えるが
攻撃のみならずジャンプもダッシュもスライディング、壁つかみに至るまで
非常に”いい感じ”の操作が出来るようになっている。



攻撃アクションについては地上通常攻撃が3連(アクセサリで伸ばすことが可能)となっているのに加え、
空中への打ち上げと空中での連続攻撃、そして空中から地面への叩きつけも存在する。
打ち上げ⇒空中三連⇒エアダッシュ⇒空中二連⇒叩きつけ⇒敵のバウンドを更に拾う、といった
まるで悪魔が泣くかもしれないアクションが出来る。
また本作にはパリィが用意されており、敵の攻撃を弾いて隙を作って殴れる。
ボス級の敵もパリィにだけは無力であるため積極的に狙っていくのが望ましい。
しかし、敵の行動前後の隙はそこそこ長いため”待ち”戦法ではなく、
敵の隙を狙ってちゃんと殴りつつパリィも狙うという絶妙なバランスになっている。
ちなみにこのパリィの音、ン気持ッぢい゙い゙。
しかしパリィがあるとなると…ガード(パリィ)不可の赤攻撃があるということだ。
受けると大ダメージ。
これは基本的には範囲外に回避するのが対策なのだが、
ここで2Dの強みが活きる。



振りかぶった瞬間にスライディングで敵の後ろに回りこみ
そこから背中に向かって殴る蹴るが出来る。
背中から殴る場合はダメージボーナスが付くのもあって
これかなりなるほどな~~ってなってね。
勿論、似たようなことが出来るメトロイドヴァニアはこれまでもあったけど
「パリィ不可の赤攻撃に対する回答」として"2Dでしかできないこと"があるのは凄く感心した。
3Dゲームでは敵の後ろに回り込むのはカメラの問題があって難しいからね。
2Dゲームであるという意義が見えてニヤリとした。
(ただし、一部の敵は全周囲攻撃を持つので全ての赤攻撃に対応するわけではない)


また、黄色い攻撃を放つパターンもある。
これをパリィすると特殊な演出が入り敵に大ダメージ+必殺技ゲージを大幅チャージをすることが出来る。
その際の演出は奥行きのあるダイナミックなアニメーションが描かれる。
この「2Dゲームでの3D演出」はすごく性癖に突き刺さるので大好き。
ただ如何せん、敵の黄色・特殊攻撃を受けてしまうと発生する演出が少々長めなのは玉に瑕だが。
基本的には攻撃パターンが多彩ながら多すぎない絶妙なバランスで
敵の攻撃パターンを覚えてパリィを狙いつつ、
ジャンジャン敵のHPを削れる滅茶苦茶楽しい2D戦闘になっているぞ。
□昨日の夢の続きはファンタジー
続いて探索だが素直にすごいな、という感じ。
ゼルダの伝説BotWを彷彿とさせる「基本能力を使い倒す」という作りになっている。
基本的にはメトロイドヴァニアらしく、
- 探索をして
- 今の能力では進めないであろう場所を見つけて
- ボスを倒すなどで新しい能力を得て
- 2の場所に戻ってきて更に奥に進む。
という繰り返し。
マップはかなり広いもののデフォルトのダッシュの速度がかなり早めなのが嬉しい。


早速だが本作にはメトロイドヴァニアの革命的な要素の一つとして
ゲーム内のスクショをマップに配置できる、という点がある。
マップにアイコンを配置してまたここに帰ってくるためのメモをするのは他のゲームでもやれていたが
スクショをそのまま配置することが出来るのだ。
これにより「二段ジャンプがあれば先に進めるだろう」、「エアダッシュがあれば…」と、
どういった能力があれば進めるようになるのか。
これをメモする必要なく、いやこれ以上なくわかりやすい機能になっている。
難しいだろうがこれがメトロイドヴァニア全般の標準装備になったら素晴らしいことだろう。
さて、そのマップを奥に進むために得られる能力だが中々面白いものが揃っている。


本作において最も特徴的な能力
「残像(分身)を作り出してそちらにワープする」という能力がある。
言葉で説明するのは難しいので上の画像を見てほしいのだが、
恐らくこれ、一見して何に使うのかわからないと思う。
実際、残像ってことは一度そこに行って通り過ぎる必要がある。
つまり前の場所に戻るワープなのだがこれって何の役に立つんだ?と思うことだろう。
基本的な使い方としてはこの下の画像と説明を見てほしい。


- 移動するトラップが左端に移動したのを見て真ん中に残像を作成する。
- トラップが右端に移動したら残像へワープ
- そこからエアダッシュで左のバーへ移動する。
これだけ見るとこういうシーンだけで使う恐ろしい程限定的な能力に見えるだろう。
しかしこの能力、あらゆる意味で使い倒す。


様々なパズルで使うのは勿論だが、落下死前のリカバリーとしても使える。
しかし何よりボス戦。
探索用の能力がボス戦でも大活躍するのだ。
敵の攻撃をかわすためにも使えるし、画面内を移動しまくるボスを捕まえることも出来る。
ここら辺、当然ゲームは教えてくれないのでプレイヤーが閃くしか気づく方法がない。
けれどプレイヤー次第で使い方が様々に増えるのが面白い。
流石にBotWのように序盤に主要な能力を貰ってそれだけでクリア可能、とまでは行かないが
下手なメトロイドヴァニアにありがちな
「次のエリアに行くためのピンポイントの能力」になっておらず、様々な面で使える点がすごい。
色々な場面で使い倒し、戦闘にさえ有用な能力になっているのはバチクソ練り上げられた機能で舌を巻く。
その他の能力はネタバレになるので伏せるがこれらもかなり面白い仕組みが取られているのでそれはプレイしてのお楽しみにしてくれ。
「探索」と「戦闘」がまさに融合され高めあう非常にハイレベルなゲームデザイン。
この練りこまれ力(ちから)にはマップを深く探索するほど感動するぞ。いやしてくれ。
唯一明確な弱点としては、プレイヤーを信用しすぎている点か。
「アクション詰将棋」ともいうべきかなり難しい操作を要求される場面がある。
まずここでジャンプして⇒壁に張り付いて⇒少しずり下がって⇒壁キックして⇒エアダッシュして⇒ワープ作って…
といった各行動のタイミングやレシピを頭に叩き込んだうえでプレイする必要があり、アドリブが効かないし効きにくい。
これがわき道の強化アイテムを拾うためのアスレチックはある程度難しくても仕方ないが、
メインストーリーでもしっかり難しい場面がある。
正直コレかなり難しくない?とプレイヤーを信用しすぎてる感がある。
特にメトロイドヴァニアおなじみの2段ジャンプ。(僕も大好き)
これを習得した後の終盤はこれまでのアスレチックが格段に楽になる代わりに、以降のものがとても難しくなってしまった。


もう一つ、ファストトラベル(FT)の地味な不便さが気になる。
本作にはFT用のポイントがあり、更に本拠地となる場所がある。
行く先々でFTポイントを開通し後々新能力を持って戻ってくるわけだが、
FTポイントのある本拠地に一発で戻るルーラやリレミトのような方法がない。
そしてFTポイントごとの間隔が少々広い。
これの何が困るって、強化のための素材や金稼ぎのために探索してる時。
そしてその道中でセーブポイントを見つけちゃったとき。
いわゆるデスルーラ*1は出来るのだが、
戻るのはセーブポイントになるためすぐに移動できず、微妙に痒い所に手が届いていない。
ここまで練り込まれたゲーム性ながらこの要素が抜けているのが少々不思議なくらいだ。
社内にFTアンチでもいたんだろうか…?
…と思ったらクリア直前にお店を見ると、
セーブポイントでワープできるようになるアイテムが店売りしていたためずっこけた。
ボス倒したら自動入手しとけよ!
あれだけ高い練りこまれ力のあるゲームが!
何でここで「プレイヤーに楽させるの嫌だなぁ!」精神が発揮されてんだよ!?
まるで神が作ったような精密なゲーム。
しかしその中でまるで人間のような感情を見てしまった。
…と自分の中で何とも困りつつも悪い意味でいい笑顔になってしまったよ。
□総評


傑作です。
正直これつまんないって人はメトロイドヴァニアがそもそも合わないって人じゃないかなと言えるほど。
メトロイドヴァニア、やったことない人もOK。
やりつくした人もカモーンとお勧めできる逸品だ。
後はゲーム内容の不満ではないんですが、
悪い点として上げておくと
15時間前後でクリアできるゲームとしてはかなりお高めの5000円台ということ。
自分は丁度セールだったので安く買えましたが、
ローグライクと共にインディーズ向けのジャンルにされがちな、
つまり安いタイトルが多いメトロイドヴァニアにしてはか~な~り強気。
5000円の価値はあると思うけど、セールで買った人が言うのも何なので、
まぁその…欲しいものリストに入れて機を待ってもろたら…。
シナリオも予想できるものではありつつ先が気になる作り。
予想だにしない共闘や熱い展開もありで良。
これまでのシリーズは名前通り主人公が王子(プリンス)だったが本作は戦士。
しかし、何故「プリンスオブペルシャ」なのか、ということがわかるとポンと膝を打った。
決して邪魔にならず、むしろ一助になる良いシナリオだったと思う。
最後に。
最近アサクリシャドウズの件を筆頭に色々と叩かれているUBIだけど、
僕UBI好きなんですよね。なんだかんだで。
好きゆえによくSNSや記事でちょっと馬鹿にする表現してたら
「アレ…?もしかして本当にやばいの?」みたいな感じになっちゃって。
今では信じられないと思うけどPS2~PS3初期の頃って
洋ゲー=不親切でつまらないというイメージがあったの。
その凝り固まった自分の中のイメージを壊してくれたのが
Fallout3(ベセスダ)であり、FarCry4(UBI)であったから。
特にFarCry4の隠しエンディングを含めたシナリオ構造はいまだに衝撃で
自分にとっては洋ゲーのベストエンディングと言えばFarCry4になっている。
オープンワールドというのは高い塔に登ってマップを開放するものだと教えてくれたのものUBIだ。
時折、本当に時折であるのが玉に瑕だが
自分の苦手ジャンルへの特効薬を作ってくれる会社だ。
このタイトルが貴方の何かしらの、あるいは
UBIそのものへの特効薬になってくれると嬉しい。
UBIそのものを知らない人にもお勧めできる出来だ。
ではまた。
*1:わざと死んで前回のセーブ場所や宿に戻ること。移動時間の短縮を図ること。