ウッキー!今年は…今年は何年…?(挨拶)
久しぶりのレビューで書き方を忘れてしまった今日この頃。
ぱっと干支が出てこないのは老化の印かもしれません。
しかし忘れないものもある。それは好きなものだ。
果たしてこのゲームはそうなってくれるのか。ということで
『黒神話:孫悟空(原題:black myth wukong)』をレビューしよう。
ではよしなに。
□概要


我々がよく知る西遊記、天竺に行った後の話になります。
ざっくり言うとお役目をはたして故郷に帰った孫悟空(斉天大聖)を
脅威に思い配下にして制御しようと思った奴らがいて孫悟空は封印されてしまう。
そして彼の力は6つに分割され各地の妖王に奪われてしまう。
そんな事件が起こった後、天命人と呼ばれる無口な猿が孫悟空の封印を解くため
奪われた力を取り戻す旅に出る…
というのが基本的なストーリーライン。
なのだが、如何せんこのあたりのシナリオがマッジッでッわかりづらいので
なんかよくわからんが出てくる奴皆●そう!くらいの感覚で良いと思います。
ブラッドボーンみたいに。
んで一応、ソウルライクとは名乗っていますが
人によってはゴッドオブウォーやSEKIROを思い出す人も多いようです。
・・・が、個人的にはコレ、仁王ライクだと思います。
武器自体は基本棍棒固定ではあるけど軽快なステップと攻撃動作で
やればやるほどあーこれチーニンゲーに近いな…と思う出来でして。
と、いうわけでそこらへんも含めて説明していこう。
□今日は東?西?はちゃめちゃ色々あるけど


基本的にはステージ攻略型。
早速だが本作の特徴として
ステージ数はそこまで多くないが、この1ステージが非常に広く・長いこと。
そして面白いのは
「倒さなくてもよい中ボス」がステージ内に大量に存在していること。


道中必ず倒す必要があるボスもいれば、
倒さずにこっそりと横を通り抜ける、
あるいはそもそも出会わずにクリアできるボスが存在する。
最初のステージの時点で章ボス含めてボスの数はなんと10種類!
この数字を聞いただけでもそのボリュームに驚くだろう。
勿論ボスはどれもそれなりに歯ごたえがあるのだが、
倒した際のご褒美が大きいので探索を頑張る甲斐がある。
あらかた探したつもりでも、クリア後に攻略サイトを見ると
え?!まだ隠しボスがいたん??と驚くこと請け合いだ。
ちなみに、隠しエリアには章ボスの特攻アイテムを持つ
裏ボスともいうべき存在もいる。
会うこと自体がかなり複雑な条件が必要で、
きっちりかっちり探索しきったご褒美として機能している。
…ただ、その裏ボスに気づくことなくクリアすることも多いのが玉に瑕である。


全体的に雑魚はサクサク倒せるようになっているし、
一部を除いて落下死も無いから探索時のストレスは薄く
ボス探しと次のルート探しに集中できるようになっている点も評価したい。
あと、本作はソウルの(ロスト・落とす)概念が無い。
経験値とお金は分かれているが、死んでもそのリソースは落とさない。
これはかなり好印象。
はっきり言ってこのシステムはレガシーではなく時代遅れだ。
これが許されるのは一本道の狭いマップを前に行くゲームだけで、
ある程度マップが広く作られるようになった現代の死にゲーでは求められないシステムだろう。


ただ、経験値を貯めてレベルアップといってもステータス値は殆ど伸ばせない。
様々なアクションを習得・強化するのがメイン目的となる。
人によっては嫌だろうが
個人的には○○ビルドが発生しづらい成長方式なのが嬉しい。
ソウルで言うと脳筋や魔法戦士・技量剣士、
仁王で言うと手裏剣ビルドといったもののことね。
そこが醍醐味じゃろがいって人も多いだろうが僕、そこまで考えたくないのよね。
考えるのがしんどいから毎回脳筋型にしがちなんだけど今作はそういった選択の余地が少ないのが嬉しい。
成長要素自体はかなりあっさりなものの
探索部分に関してはかなりコッテリした出来で非常に満足。
ただ、不満もあるけどね…。
□でもDokiDokiしちゃうからクセになりそうだ。


続いて戦闘面に移ろう。
さて、本作をソウルライクではなく仁王ライクと称したのは
いわゆる何でもありタイプの戦闘だからである。
孫悟空といえばやはりということで武器は如意棒!
極々一部にバリエーションがあるがこれがほぼ固定である。
まず、通常攻撃はちゃんと敵が怯んでくれて良好(怯まないゲームはつまんないです)
回避はややジャスト回避判定がよくわからない部分はあるが
スタミナ消費が低めでサクサク回避できるので許容範囲。


一部のボスは倒すと一定時間そのボスに変化する能力を習得可能となる。
HPは通常のものと変更され、事実上無敵状態で敵を殴ることになる。
経験者ならお分かりだろうが
仁王の九十九武器(妖怪化)まんまである。
また、さらに雑魚含めて一部の敵は倒すと
短時間変化して特殊な行動を行う変化術が使えるようになる。
仁王2の妖怪技まんまである。
大胆なパクリは中国の特権ではあるが2つともなると笑ってしまった。


そして魔法(というか術)を覚えられるゲームなのだがまず最初に覚えられるのが
敵の動きを数秒留められる魔法である。
中国のホグワーツ殺意たけぇ~~~。
使用後にクールタイム・MPの制限はあるが何度でも使用可能である。


更に孫悟空といえばお馴染みの分身魔法がある。
2体に分身くらいな物かなと思いきや、
なんとプレイヤー含めて5人に増える。
そして全員で殴る。勿論、分身体もダメージを与えてくれる。
中国殺意たけぇ~~~!!
ただ、それだけやってなおボスは強い。だが楽しい。
時を止める魔法が救済措置ではなく、
それ”も”使わないと勝てないように設計されている。
その他の魔法も余すところなく使い、
クールタイムを計算に入れて順序良く回す必要がある。
また、戦闘演出も兼ねてか
相手が一方的に殴り続けるターンがほぼすべてのボスに用意されているので
そのタイミングで停止魔法が使えなかったり分身魔法が空回り…と
これは明確な欠陥であり、少々ややこしいゲーム性ではある。
レベル上げによるステータス強化が殆どなく、
マルチも無いので救済措置がない、というのもあって
「簡単なゲーム」「レターパックで現金送れ」は全て詐欺です。
ただ、通常攻撃はボタン連打で派手なコンボを見せるが
コンボの〆は気合を込めた一振りであり必ず敵が怯む。
その他ゲージを貯めきった後のタメ攻撃や、一部の召喚技は必ず敵が怯む。
これはごくごく一部のスパアマ攻撃を除いて全てで、敵が怯む前提の設計だ。
これねぇ素晴らしい設計だと思う。
とにかく相手が怯まず殴ってくるタイプのゲームは見習ってほしい。
怯む攻撃をいかに敵にぶち当ててエクストラターンを得るかという
相手の隙を能動的に生み出すことが出来る作りになっている。
ダウンに更にダウンが誘発する技を出すと大ダウンになるのはシビれたね。
これは本当に楽しい。良く出来ている。


□ボタンの通常攻撃から△ボタンの強攻撃のコンボがあるのだが、
敵の攻撃に△ボタンを合わせると
敵の攻撃をいなしつつ強攻撃でカウンター→ダウン攻撃が出せるようになっている。
ソウルシリーズでもよくありがちな
「攻撃をしているとスパアマで反撃される、だから攻撃を中断して回避するしかない」
という課題へのしなやかな回答だと思う。
敵の攻撃は逆にチャンスタイム。
ただし、通常攻撃をある程度打ってないとカウンターに行けないし、
通常攻撃で貯まるゲージを消費する必要があるというバランスもうまい。
そしてボス戦の出来は凡そ非常に良い。
全てのボスに個性が用意されており決して飽きさせない。
敵の行動の殆どには切れ目が用意されており、
攻撃するタイミングがわからないということがない。
何度も死んで敵の行動を見切って学習していき、
必ず怯む大ダメージを入れるタイミングを理解し、
徐々に与えるダメージが増えていき…勝利する。
そういった「成長する快楽」はたっぷり味わえる出来になっている。
(ただ、一発クリアできるボスも結構いたりはする)
ソウルライクといえばボス戦だろ!というバトルジャンキーには間違いなくハマるだろう。
□そうさ人生一度きり戸惑ったとしても
ここまで基本ほめてきたが悪い点として明確に言いたいのが
まずマップの視認性の悪さ。
グラフィック自体は様々なゲームの中でもトップクラスに美しいのだがまずこれを見てくれ。
Q.これ、ジャンプで行けると思いますか?
A.× 見えない壁で遮られてます。
こういった、一見行けそうなのに実際には行けない個所が非常に多い。
1,2個であればそこまで問題視しない問題が容量を超えてコップから溢れてしまう。


更にマップの広さが正直やりすぎくらいに広すぎる。
第三章のマップは特にすさまじく、文字通り彷徨う。
最初は楽しいんだけど、三章まで来ると雑魚戦の単調さも相まって辛くなる。
これ自体はメニューからマップを呼び出したりミニマップを付ければあっさり解消される問題ですが、
当然の権利のように未実装。馬鹿がよ~!猿だけど~!
一応、マップを付けちゃうと、
これだけ美麗なグラフィックも実態としてはこの部分しかないのか…
と魔法が解けてしまう部分があるのは分かります。
ガラスの靴さえも割ってしまうのは確かに無粋。
ただ、マップデザイナーの頭を十二時の鐘で叩き割りたい気持ちは湧く。
探索が嫌いな人は発狂すると思いますこのゲーム。
(そもそも探索嫌いなのになぜソウルライクをやるんだという点が無くもないですが激論になるのでスルー)
中ボスが正解ルートではないうえ数が多いことも迷いに拍車をかけるので、
心を広く持ってくれ!としか言いようがない。
宝箱が風景と同化する色になっている点も気になる。
開かれない宝箱はデザインの敗北なので論外なのだが
更に「普通に考えればまっすぐ行く道を振り返ったら宝箱がある」
というマップデザインを多用しているのもいやらしい。
流石中国。中国人を信じてはいけない。
また、ソウルライク開発初心者メーカー名物の
「素直にボス部屋の目の前に復活ポイントを作らない」仕様が本作にもある。
デモンズソウルや仁王1をプレイしたことがある人ならわかると思うが、
ボス部屋に行くまでに敵の群れを無視して走り抜けるマップ構成のことである。
ダーク・ゲームクリエイターは内なる「プレイヤーに楽をさせたくねぇ」という感情をコントロールできない。
何度も作っているフロムソフトウェアでさえ
「これくらいならめんどくさい作りして…ええやろ?」と
篝火とボス部屋までにエレベーターを挟むという嫌がらせをやっている。
ただ本作で一番驚いたのは
ボス部屋に行くには2つのルートがあり片方にだけ復活ポイントがある
という構造をしているボス部屋を見て椅子から転げ落ちた。
ちなみにその場合でも雑魚敵がボス部屋までのルートにいる、という悔しさあふれるデザイン。
な、なにがしたいんだこのゲームデザイン…。


更に本作には他ゲームで言うところの拠点*1が序盤にない。
その為序盤はエスト瓶*2を強化するには1章にもどり、ステータス強化は二章に戻る必要がある。
序盤に無いってことは後期にあるんでしょ?
ならいいじゃんと思った読者はステイステイステイ。
なんとその解禁方法は
第三章の隠しボスを倒して条件を満たすと到達可能、である。
正気か!?
ついでに言うと防具強化も拠点が解禁されないと解放されない。
狂気だ!!
気づかずにクリアすること自体全く不思議ではないレベルで目立たないのだ。
(ネタバレではあるんだが、これ言っとかないと困る人多そうだから言っておいた)
普通にプレイしているプレイヤーではまず気づかない、
プレイヤーを困らせるためだけにあつらえたシステムになっていた。
流石にこれには僕も憤死した。
ばーかバーカ馬ー鹿!サルゥ!!
・・・と、色々言ったものの批判はほぼマップにのみ集中する形であり、
(いや雑魚戦闘とかも批判はあるが)
とりあえずマップの酷さは3章がピーク。
1・2・3とひどくなるマップが緩やかに
一般的なソウルライクのある程度一本道な作りになっていく。
(それでも十分迷う作りだが)
ただ、そのマップにしても最終章のマップギミックには度肝を抜かれた。
感動してほしいため詳細は書かない、書かないが自分は感動した。
とにかく中国の持つスケール、というものにやられたと感じた。
また、ラスボス戦の演出は凄まじい。
マルチの救援ができない完全ソロゲームがゆえに敵との攻防の演出一つ一つが麗しい。
ここまで絶望的な演出をしてくるボスがいるだろうか。
ここまで倒したいと思うボスがいるだろうか。
そして、ここまで勝って嬉しいラスボスがいただろうか。
エルデンリングのDLCラスボス君は見習ってほしい。
あと、本作は章の終わりにアニメが流れる。
アニメてw低予算かよと思うのだが中々作画もよく侮れない。
更になぜかクレイアニメまでやる。クオリティも高い。
正直、意味が分からない部分はあるのだがクオリティで叩きつけられるから見ちゃう。
冒頭からして神々との闘いが描かれ、
仏教としての教えなどがシナリオに組み込まれる。
色々とよくわからない点はあれど喰らえコノヤロウで飲みこませてしまう。
あらゆる点がハイクオリティでハイスケール。
俺の好きな中国はこのゲームにある。
貴方も好きになる。そして成れ。
□総評


良作です。
初めてのソウルライクとしてはめちゃ良い出来だけど傑作は流石に無理!
てかメーカーの経験値をレビューの評価要素に入れちゃダメだろって話でもある。
特にストーリーに関しては恐らく殆どの人がちんぷんかんぷんと思われる。
ラスボス戦終わって漸くあーこれそういう話だったん!?ってなったり、
そうはいいつつわからんなりに最後までしっかりプレイできたのもあって
ブラッドボーンに近いと感じた。
最後までプレイすればマップの出来の悪さがある程度氷解し、
そのシナリオの腑に落ちる感覚も含めてスッキリと終われるのだが
煩わしさのピークである3章クリアまでたどり着けるのか、というのはある。
ただ、シナリオがわからないのは日本人が西遊記を意外と知らないという点がある。
ドラゴンボールや最遊記(イケメン4人の方)、と西遊記を元ネタにした作品は嗜んでいても西遊記そのものに触れた人がどれだけいるのかというと難しいよね、と。
日本人がライズオブローニンを楽しめても、海外の人がわからんとなったようなことが今回中国でおこったのかなと。
さて本作、ほとんどが中国でのセールスとはいえ
2週間で1800万本売り上げていると聞いて*3
中国という国のスケールに本当に驚いている。
だが、俺の好きな中国はこれである。
政治的にはいろいろあるもののやっぱり中国はデカくなくてはいかん。
デカい中国が好きだぜ。
色々と不満はあるし、明らかなアラも目立つ。
しかし、十分に面白く決して損をさせない出来だ。
というわけで誰もが一度は言ったことがあるだろう言葉でお勧めして〆させてもらう。
You!やっチャイナよ!!
ではまた。