ホスピタル病院

自分をモヒカン社畜だと思い込んでいる17歳JKのブログ

そこにいないけど、そばにいる。『It takes two』レビュー。

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覚えていますか、マリオカートからリアルファイトになった時を。(挨拶)

子供のころ、肩を突き合わせてゲームをやった記憶があります。
スマブラマリカーもやった。ドカポンもやった記憶があります。そしてリアルファイトも。

ただ、基本的にゲームは進化していったことで一部の対戦ゲームを除いて
より一人に深化するか、あるいは4人からもっと、もっとと、人数が増加していった。
つまり、コンシューマゲームをやるうえで”2人”という単位は
時代の流れで淘汰されていった、といってもいい。

そんなイカれた時代へようこそおいでくださいなすったガッチガチの2人プレイ専用ゲーム、
It takes two(イットテイクスツー)』をレビューしよう。

先に言っておくが、本作は2021年GOTY級の傑作である。
ゲームをしてくれる友達、あるいは家族や恋人の当てがあるなら
RTやいいねなりブクマだけ押してとっとと買ってやりたまえ。

ぼっち野郎は好きなおでんの具を呟いてから読めよな!

ではよしなに。

 

 

□概要

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とあるアメリカの街で起こるとてもよくある夫婦喧嘩。
切欠は些細な勘違い。
けれどもそれは雨のように娘の心も顔も濡らしていく。

振り続けた雨はいつしかダムを決壊させる。
だが幼い娘には両親の離婚宣言はダムの決壊どころではなく・・・。
そして娘は自分の作った人形を両手に、街で買った本に願う。

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「どうかパパとママが仲直りしますように」と、涙を流しながら。

 

 

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…と、言うのが君たちが人形になった理由さ!
申し遅れたね!私はDr.ハキム!愛の伝道師さ!!

これから君たちには愛を取り戻してもらうために様々な障害を二人で乗り越えてもらう!
So!You達はショック!さぁ愛を取り戻せ~~~~い!

 

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↑完全なフレンド専用オンラインプレイ。プレイヤーは妻と旦那どちらかを選択して協力プレイで進んでいく。

ジャンルとしてはパズルアドベンチャーというべきだろうか。
人形になってしまった父と母が娘に(助けを求めるべく)会うために
自分たちの家と庭を舞台に様々な障害(パズル)を協力して乗り越えていくゲームだ。

こんな場末のブログに到達するような人は熱心なゲーマーが大半だろう。
だが本作は、なんと野良オンラインは一切不可能!
フレンドとオンライン、あるいはローカルでプレイすることとなる。

つまり、友達、夫婦や恋人・子供と遊べるような人たちという
おおよそゲーマーとは違う人種向けのゲームになっている。

筆者は友人と一緒にオンラインで最初から最後までプレイしているが
もしも奇跡的に夫婦でゲーマーという読者がいたらもう今すぐDLしてほしい。
彼女がいるゲーマーは僕に一発殴られてからDLしてほしい。
(奥さん子供はセーフ判定だが彼女は許さない、絶対にだ)

 

どういうところがそういった人種に向いているのか?
そこら辺を踏まえて紹介しよう。

 

□あのね君がもしも道に迷ったなら一緒に悩んであげるね。

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↑一緒に協力するところと、ボタンを押し続けて片方を行かすようなところがある。パズルの作りはしっかりしてる。

本作は先に進むために手持ちのアクションを試行錯誤してパズルを解いていくことになる。
基本的には2人で同じ道を一緒に行き協力して謎を解くが、
場面によってはプレイヤーAがプレイヤーBを進ませるために
スイッチを踏み続ける等ルートが分かれることもある。


で、この手のゲームって問題があるわけよ。

一つは一方だけがぐんぐん問題を解いてしまい初心者がつまらなくなる状況。
もう一つはそれに伴う形で、初心者が手間取って熟練者が待ちぼうけを食らってしまう状況。
つまり、ゲームの習熟度から来る知識格差問題な。
操作テクニックもそうだけど、シンプルにゲームの知識による問題。

で、このゲームはそのあたりの格差を極力発生させないよう
上手く”協力”して乗り越えられるように出来ている。

 

f:id:exa_axe:20210502001155j:plain↑画面が分割されていて、全く同じ画面を2人が見れるぞ。相手の視点に立って問題を解決できる。

ApexやCODのような一般的なFPSのようなチームプレイゲームは往々にして
それぞれの視点を自分のモニタいっぱいに表示するわけだが、
このゲームは画面が分割されて両方のモニタに同じ画面が表示されている、ということが肝。
というか一つの革命だと思う。

パズルの難易度はほどよい階段状の作りになっている。
最初に緩い問題を出してギミック・ルールを説明しそれを応用して進めるという王道の作り。
木を燃やしたり、重さで橋を落とす等、
ある程度現実の物理法則に従ったギミックが中心でゲーム的知識はそこまで多くなくて良い。
ただ、この緩い問題を解くのにヒラメキが必要になる。

実際プレイしている途中、
自分の目の前の障害を見て
「アレ、これどうするんだ?」という状態にちょくちょくなったんだよね。

ただ、ここで「あっ、わかった!」と言うのは僕だけじゃない。
頼れる相棒、もう一人のプレイヤーから声が上がることもある。

そう、普通のゲームだと相手がこの問題を解くまで待ちぼうけになってしまうが
このゲームは画面分割してるので相手の視点でこちらも見ることが出来る。
つまり、問題解決へ向けて一緒に考えることが出来る、というわけだ。
これが面白いんだぜぇ~~!!

 

相手がつまるところを自分が考え、答えを出して救うこと。
逆に相手が僕の問題を考え、答えを出して救ってくれること。
二人してあーでもないこーでもないと知恵を出し合うこと。
そして謎が解けたとき、二人で褒めあうこと!
ぜんぶ、ゼンブ、全部が、楽しい!

というかなんなら失敗すらも面白い!
下の動画は、トロフィーの条件として開発が設定したトラップに思い切り引っかかった場面なのだが二人して爆笑していた。


(動画は自分の声のみ入るように設定しているため入ってないが会話では二人で爆笑してる)

 

f:id:exa_axe:20210502002809j:plain↑協力をすることが本作の主題。役割がしっかりと作られていて二人で進むことが重要だ。

いやんじゃさ、結局のところ、
「(ゲームより)コミュニケーションの面白さじゃないか?」と言われるかもしれない。
もっと言えば「ゲームなんて複数人で遊べばどんなゲームも面白いに決まってんじゃん」
と、宣う人もいるかもしれない。

それは一つの真理ではあるが本作はそうじゃあねぇンだ。
ちゃんと2人でやることに意味を持たせ、
2人でやるためのゲームデザインがしっかりとなされていることが凄いのだ。

どんどん出されるパズルを解いていく。時には一人で解くけれど決して一人では進めない。
パズルは必ず一人では進めない地点に到達し、相棒を待つことになる。
だから考える。自分のことのように相棒の問題を。相手の立場になって考えることが肝要。

そうして進むのだ。右足を出して左足を出すように交互にだ。
あたかも二人で歩いていくように。そう、まさにタイトル通り、
It takes two(二人じゃないと)」だ。

 

────そしておぼろげながら見えてきたんですよね。
そこにいないけど、そばにいるフレンドの姿が。

 

□咲かそう、咲かそう、咲かそう。情熱の花を咲かそう。

f:id:exa_axe:20210502005538j:plain↑夫婦で別のアイテムを使い、二人がそれぞれ相手を活かして前に進む。

もう一つ褒めたい点として、狂気的な作り込みがある。
本作はチャプター制を取っており、
冒険の舞台は家の中、と一口で言ってもチャプターごとにシチュエーションは大きく変わる。

屋根裏から庭園、時計の中まで、といった具合に場面が変わる。
そして場面が変わるごとにアクションが変わる。
例えば火を打つライフルを持ったり、鎌を持つなど場面ごとに合わせた道具を持つ。

ゲームの進行度に合わせて舞台が変わり、舞台に合わせてアクションが追加される。
と言うのはままある話だが、場面によってはゲーム性自体が丸っと変わるところもある。

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Diabloじゃん!スト4じゃん!とキャッキャしてた。

具体的に言うと、格ゲーになったり、Diabloライクのアクションになったりだ。
このゲーム一本で色々なゲームの要素をみっちりと詰め込まれており、進めるごとに様々な顔を見せてくれる。すごい。

 

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↑道中で写真を撮れるオブジェクトがあったり、ミニゲームがあったりで飽きさせない。

また、基本一本道なうえ、マップ自体はそこまで広くないのだけど、
少し横道にそれると触れるオブジェクトやミニゲームがたっぷりと用意されている。
勿論、ミニゲームは二人で対戦できるぞ。こんなんが本当に何個もある。すごい。

 

f:id:exa_axe:20210502004708j:plain↑個人的ベストショット。キングダムハーツのようだがすさまじい細かさでため息が出る。

そして勿論グラフィックもすんばらしい。
繰り返すが一応家の中がモチーフになっているんだけど、
匠の魔の手で劇的に魔改造されたのだろうか?
だとしたら、なんてことをしてくれたのでしょう。
繊細で精細なオブジェクトがガンガン出てきてプレイヤーの目を奪うじゃないですか。すごい。

これらの狂気的な作りこみは、「プレイヤーを絶対に飽きさせないぞ」という意思をひしひしと感じ、プレイヤーはゲームの世界から抜け出せない。
すいすいと時間を吸い取られ、「「あれ、もうこんな時間?」」と二人して驚いたほどだ。
本当にすごい。

 

そう、すごいんだ。

この単語を二人して何度言ったのだろう。
チャプターを進めていくごとにその徹底的な作りこみに、
これも触れるの?!といったオブジェクトの多さやミニゲーム、そしてムービーと。
行く先々で同じ物を見て、同じ感想を言っていたように思う。

□映画を超えていけ。二人を越えて行け。

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↑このシーンは映画『Mr.&Mrs. スミス』を思い出しましたね。セラピーってあっちの国ではよくあるのかな?

ゲームは映画を超える深い影響を与える作品を生み出せる*1とは本作の開発者の言葉だ。
しかしまさにその通りだ。
このゲームには映画にも出来るけどゲームだからこそもっと出来るものがある。

実際、本作の開発者は映画業界からゲーム業界へ転身した人で、
映画の影響は明らかに受けている。
…というより映画をそのままゲームに落とし込んだような形式だ。

PIXERのようなグラフィックもそうだが、

  • 小さくなって家が冒険の舞台になる。
  • 離婚寸前の夫婦が協力し合って絆を修復する。

といったそれぞれは石を投げれば何かにぶつかるような使い古されたプロットだ。
しかしゲームとしては結構…というかかなり珍しい部類に入る。
(夫婦といえばHavenというゲームがあったのは知っているが)

ちなみに、夫と妻毎にアクションが異なり双方が双方を活かすアイテムを持つ。
夫と妻とで役割が違うのは当たり前、その上で双方が双方を活かすべき。
といういかにも最近のハリウッド映画的な意図が見え隠れしている。(あと、旦那が家事、奥さんが仕事という役割分担になっているとかもね)
稼ぐ人、家を守る人、両方の立場に寄り添っていて凄く”ちゃんとしていて”素晴らしいと思うぜい。
ただ、同時にポップコーンムービーのような馬鹿らしさも孕んでんだけどね。

 

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↑爆発も多いし、妙なトラブルも多い。ジェットコースターでポップコーンを食うような急展開が続く!

物語的には結構強引な場面転換やハチャメチャな展開もあったりする。
そうはならんやろ→なっとるやろがい!と二人して画面にツッコむことが多々あった。
あと、爆発オチなんてサイテー!とかめっちゃ言ってたよね。

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↑異常な状況に同情はするけど結構な毒親。中々仲が縮まらない…。

あと、主人公たる夫婦が割とガチでクソ野郎二人なので二人して
このクソ親早く〇ねや。そら離婚するわ。

って言ってました。
特にワタクシ、「フィクションの中でも子供がひどい目にあうとちょっと寝込むマン」としてはかーなーりぐえー!ってなってました。
(最終的にはちゃんと親も改心するから安心してね!)

 

んで、ここまでの文章読んでなんとなーく気づいた読者もいると思うんですけど、
映画にも出来るけどゲームならもっと出来ること。

それは、二人で感情を共有しあうことだ。

映画でも出来るけれど、ゲームだったらもっともっと深く出来る。
例えば画面の中で不思議なオブジェクトを見たとき、映画は一時停止を押すかい?
押すかもしれないけどちょっと憚られるよね。
でも、ゲームならちょっと足を止めて「これ見てくれよ!」って言いやすいよね。
あと銃を撃ってこれだよこれ!とかしやすいよね。

んで、本作のパズルを解く上で相手の目線でも見ることが出来ることは先述の通り。
二人いれば文殊の知恵…とまではいかないが文殊0.6くらいはいけるだろう。
けど、それでも詰まるときはあった。ミスを繰り返すときもあった。
その時にね、励ましあえるのがいいんだ。

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人は生きる上で一人では生きられない。
足を引っ張られることもあれば引っ張ることもあるけれど、一人では生きてるとは言えない。

ボイスチャットを使って、笑ったり、驚いたり、励ましたり、褒めたり、喜んだり。
生の感情がリアルタイムで凄く凄く伝わってくる。
そして勿論僕も伝える。

その時見えたんだよね。一度だけ会ったことがある彼の顔が。
去年・今年のコロナ騒ぎで会えなくなってしまった彼の顔が。

その時思ったんだよね。
そういや昔、SFCN64、PSの時代って顔突き合わせてやったよなって。
時代は変わった。
けれどもゲームってやっぱこういう同じ画面を見て色々言いあうのって楽しいんだなって。
時代は変わった。
けれども本質は変わらない。

プレイする中であたかも俺の家で、隣で一緒にプレイしている彼がいるような気がしていた。
そこにはいないんだけど、そばにいるような感覚が湧いた。

そういう郷愁のような、懐かしくて、切なくて、少し優しい。
そんな感情を呼び起こしてくれました。このゲームは。

 

□総評

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傑作だ。
このコロナ時代でこそ輝くタイトルかもしれない本作には、
少なくとも何かしらのGOTYは絶対に取れるし与えないといけないよ!と心から思える。

 

ただ、不満というか難しい点はある。
まず少々プレイ時間が長いこと。
標準プレイでざっと12~14時間、つまり一日2時間プレイで1週間程度かかるわけだ。
ローカルならともかく、オンラインで時間を合わせてプレイするのはちと難しい面がある。

また、ゲームの性質上初見での一度きりのゲーム体験が面白いわけであり、
やりこみプレイに全く向いていない。
それどころかトロフィーコンプリートも少々しんどい。

この記事で嬉しいことに興味持ってくれた方がいたとして、
「お、じゃあ一緒にやるかい?」とはちと言い辛いんですよね。
初めてのプレイだからこそ鮮烈な体験を与えてくれるだけで何も変わらない2周目は退屈。

んで、まぁ当然ながらやるためのハードルが現代では結構厳しいこと。
身近に家族も恋人も友達もいないって人はぶっちゃけ多いよね。現代病みたいなもんだ。
特に恋人とやるには最適ってゲームなのだが今のシャイな日本人にはハードルが高かろう。
(ちなみにエクサのここ、空いてますよ)

ただ、それらの問題がクリアされるならば本当に是非お勧めだ。
説明しそびれたが、本作は4000円とちょっと、という少々お高めの値段だが
購入している人がいるならもう一人は無料版を落とすだけでプレイ可能。
リアルで会える人ならワリカンも可能だ。
2000円と少しで映画以上の体験が出来るぜ!と考えたら安いもんさ!

 

でも「私パズルは苦手だよ」だって?
ノンノン気にするな。
大丈夫、だってもう一人が一緒になって考えてくれるんだもん。
君は完璧じゃなくていい。一緒に完璧になればいいのさ。
だから二人で一緒に悩むことを楽しもうぜ!
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↑本ゲーム内で好きなセリフ。頑張らないといけないけれど、頑張りすぎないことも必要さ。横にいる人がいるだろう?

 

 

さて、ここからは私信である。
本作、実のところ一緒にやらないかと誘うのもドキドキもんであった。
プレイ中もツマらなかったらどうしよう、と不安だった。

ただ意外にもノッて来てくれて、そして楽しんでくれたようでホッとした。
本当に得難い友人を得たと思っているし、本当に感謝している。

もし東京に来ることがあったらまた飯でも食おう。
…やっすいおでん屋でええやろ。そこいこか。

というわけで最後に、このゲームを一緒にプレイしてくれたフォロワーに
感謝を述べて本記事を〆させてもらおう。
センキューーーーーーーーーーーーー!!!

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↑プレイ中、ずっと感謝してました。マジでありがとう、友よ!