人に被害が出ない程度の天変地異って起こせなかったのかな。(挨拶)
2020年はまさに天変地異たるコロナの影響、そしてPS5発売の影響もあり大作は前半に集中し後半はパッとしたものがなかったように思う。
特に、(例年そうだ、とも言えるが)夏ごろのやるゲームの無さは辛かった。
だからこそやりたくてやりたくてたまらなかった紛れもなく2020年最後にして最大の注目作。
『Cyberpunk2077(サイバーパンク2077)』をレビューしよう。
なお、例によって核心的なネタバレは無いが、公式トレーラーと同等レベルのネタバレは行っている。
まっさらな気持ちでプレイしたい人は本記事およびメーカー公式のトレイラー含め一切の情報を遮断してプレイすべし。(つーか公式トレーラーが直球でネタバレかましてるよ!)
ではよしなに。
□概要
↑主人公V(ヴィー)はキャラメイク可能。右は一人目の相棒ジャッキー。
俺の名前はV(ヴィー)。しがない配達業をやって”いた”。
そう、今の俺は風邪をひくより流れ弾を貰う街、ナイトシティで
「やれることなら何でも屋」、になっている。アラサカっていう企業が世界を支配していたところで俺は何も変わらない、
相棒のジャッキーと一緒に成り上がってやる、ビッグになってやる、メジャーリーガーになってやる…!
そう思っていたんだがとある事件を目撃したことで俺の世界は変わっちまった。アラサカに追われ、雇い主には裏切られ、果てにはゴミ捨て場行きだクソッタレ。
↑キアヌ・リーヴス演じるジョニー・シルバーハンド。
そして今、俺の目の前には50年前アラサカのビルを爆破し死んじまったはずの
”ナイトシティの伝説”ジョニー・シルバーハンドがいやがるんだ。
笑っちまうぜ、自分の不幸…いや幸運さによ。
凡人として平穏な生涯を過ごすか…名を上げて華々しく早死にするか。
あんたはどっちがいい?
このナイトシティにはどっちもあるぜ。―――さぁ、あんたの人生を選ぼうか。
8年もの歳月、そして何度とない延期を重ねてようやく完成したゲーム業界のサクラダファミリアこと本作サイバーパンク2077。
そのため、「完成した」こと自体が話題性を呼び、
マスターアップ報告後に再延期したことが話題を呼んだほど。
また、『マトリックス』や『ジョン・ウィック』で知られるキアヌ・リーヴスが
ジョニー・シルバーハンド、という非常に重要な役柄で登場するのも話題の一つ。
ゲームとしては割とよくあるFPS視点のオープンワールドRPGとなっており、様々な理由でベセスダゲーのRPGと似通っている部分が多い。
ただ、ベセスダといろんな意味で一緒にして貰ってもなってもらっても困る。
説明しながらレビューしていこう。
□アンパンマンは君さ。勇気を出して。
↑立体道路に驚いた。そういや大体のゲームは平面が基本だったねと思い起こされる。
まず本作の最大の評価点はその作り込みだ。
多くのオープンワールドは平面に多少の傾斜がついている、というイメージなのだが
平面にレイヤーを被せるような立体構造のマップになっている。
東京の首都高のように道路の上に道路がある、というマップは中々見たことが無い。
また、(すべてではないが)多くの店や家にシームレスに入ることが出来、
「本当に住めそうな街」を作り出している。住みたいかどうかは別として、だが。
しかしプレイ当初はその複雑さに少々辟易する場面もあった。
特にたかだか2階・3階建てでエレベーターを毎回使わされることにうんざりしていた。
だが、二段ジャンプ解禁後は世界が見違える。
↑階段なんてもはやいらねぇ!と二段ジャンプでナイトシティを縦横無尽に駆け巡れる。
文字通り、世界が変わるのだ。
ちょっとした階段やはしごは全く不要になるし、立体的に入り組んだ場所を縦横無尽にパルクール出来るようになると、ナイトシティが見せる顔が変わる。
ここ登れそう、は登れるし、ここ通れると近道だな、というのは通れる。
プレイヤーの視界が2次元的な見方から3次元的な見方に変わっても、徹底的な作りこみがプレイヤーをがっかりさせない。
メイク100点、すっぴん20点・・・な見えるところだけを取り繕うメイク美人、ってわけじゃあないんだよってこと。
玉も竿もデケェ作りなのよ。まぁCS版は竿も球も見れないが。
↑日本のゲーム?と思いたくなるほど細かな言語ローカライズ。この人でなし!
特に言語のローカライズに関しては職人芸と
称賛しても良いほどであり、本作を一人の人間とするなら、頭のてっぺんからつま先まで、
いや、細胞の一つ一つまで染み渡るほどの完璧なローカライズ。
モブの会話や些末なTIPS、フォトモードのアクションの表現まで
日本人がわかり、場合によってはクスリとなるようになっている。マジで文句なし。
↑打ちまくり!モテまくり!多彩かつ大量の銃を手に入れることが可能。敵は四肢を吹っ飛ばせるぜ!!ヒャッハー!
キアヌ・リーブスが出演…ということで思い出される
「Guns.Lot of guns(銃をくれ。どっさりと)」というセリフだが本作はたっぷりと銃が存在し、
ハクスラよろしくレア度によって能力が違う。
Z指定ゆえに敵の頭や四肢をぶっ飛ばせるのは嬉しい。
こうでなくっちゃ!と膝を叩いて、いや膝を撃って相手の足を吹き飛ばす楽しさよ。
↑キャラメイク、ハッキング、カスタマイズと多様にわたる。なりたい自分になってやれ!
キャラメイクや多彩な衣装による外見のカスタマイズはもちろん、
多岐にわたるスキルやステータス振りで様々な攻略法を編み出せる戦闘やクエスト、
ウォッチドックスを発展させたようなハッキングとそれに併せたステルス、
そしてサイバーパンクってことで主人公の体を様々にカスタマイズ出来る等、とにかく紹介しきれないほどの組み合わせがありまさに自由自在な冒険が可能だ。
なお、繰り返すがチ〇ポはCS版では規制対象となり、改造できない。(PC版は可能)
チン〇をおっきくしたりちっさくしたりできないのは表現の自由の侵害ではないか?
俺たちに〇ンポを弄らせろ、というチンポ騎士団の誕生を待っているぞ。
↑フォトモードで写真を撮る。情報量の多い街並みをのんびりと車に乗って浸るのもいいさ。
そして特筆すべきはやはり”雰囲気”。
雰囲気ゲーって一昔前は「ゲームとしてはどうかと思うが世界観とかは一級品」みたいなタイトルにつけられてたけど
AAA級タイトルが金と時間を使って世界観をガッチリ構成してきちゃうんだから
そりゃもうたまらんわけですよ。
映画「ブレードランナー」や「ジョン・ウィック」で見るような
”怪しさ満載の日本(語)”が飛び交う奇妙で不可思議な町は昼見ても夜見ても面白い。
見る、というより浸るという感覚が強い。
↑ビックリするほどそこら中でチンピラが。まてェバイキンマン!頭を交換しようぜ!もちろんお前のな!
序盤はメインクエストを行わずぶらぶら歩いて
そこら辺の一般人をカツアゲしてるチンピラを撃ち殺して賞金を得るような
血なまぐさいアンパンマンごっこがたまらなく楽しいと感じていたほどだ。
あぁ、安心してほしい。
バイキンマンは無限湧きだしなんなら一般人を誤射しても特にお咎めはない。
例え撃っても君は優しいヒーローさ。
細部に神が宿る、とはよく言われるがその言葉に則るなら
本作はそれ自体が八百万の神と呼んで差し支えない。
↑車の操作は本当に不満。メニュー画面も酷い。慣れはするが酷い。
ま、不満点が無いわけではない。
具体的に言うと車の挙動は正直かなり出来が悪い。
グリップ力が無さすぎて曲がるときがマジで辛い。
ミニマップの範囲の狭さもあって直線でかっ飛ばしてたら急カーブに対応できず壁や人に突っ込んでしまうことが多々発生する。
まぁ人を轢いたところで逮捕状が出る程度で君は優しいヒーローさ。
また、メインメニューのUIが致命的に悪い。
マウスで操作する前提なのか、左スティックは一切反応せず右スティックでポインタが動く。
一応十字キーでカーソル移動が可能だが、
スープをフォークですくって飲むような違和感を感じる。
とはいえ、この程度の問題は大したことねぇなと感じる。
後々語る問題点の方が大きいため、という不名誉な理由ではあるが。
□何が君の幸せ。何をして生きるのか。
↑二人の相棒。二人の生き様を見て自分が何を思い、何を生きるのか。
ストーリーそのものはフレーバーがネットやサイバーなので一見分かりにくく見えるが、
典型的な三幕構成のバディムービーめいた内容である。
驚くほど素直で王道のシナリオはシンプルながら熱く楽しい。
テーマは命、あるいは魂というべきか。
実際、命にまつわるサイドクエストも多い。
仲間を失い気に病んだ警察官が自殺してしまうというクエストなんてのもある。
(おそらく選択肢で変化するんだろうが)
一度説得しに行ってそろそろ様子を見るかぁ~~って家に行くと
家の前でさめざめと泣くモブがいてドキリとしてしまった。
非常に短いながら鮮烈な印象を受けたクエストだった。
だからこそジャッキーにせよ、ジョニーにせよ、
相棒キャラのソウルフルな「生きてやるぞッ!」って生命力にあふれている様が眩しく光る。
外見や基礎能力がパーツの取り換えっこで簡単に変われるという世界観であるからこそ
代わりの利かない命や魂のありよう(つまり生き様)を描く物語になっている。
凡人として平穏な生涯を過ごすか…名を上げて華々しく早死にするか。
物語の序盤でこう問われるシーンがあるがこの言葉にこのゲームのすべてが詰まっている。
物語を終えるとき、「ああ!こういうことか!」と思わず口を突いて出てしまった。
おそらく、貴方もそう・・・いや、そうであってほしい。
↑ジョニーもといキアヌとのギャルゲー並みに多い選択肢と変わる関係。一緒に帰って噂されると恥ずかしいし…
また、様々な会話の中で選んだ選択肢によって場面ごとの結果はもちろん、関係性も変わる。
軽妙な掛け合いと共に描かれる結びつき、絆の変化は
正しく、ロール・プレイング・ゲーム(役割を演じるゲーム)になっている。
特に後々相棒になるジョニーは「関係性の変化」、その代表格。
一人目の相棒であるジャッキーは最初から信頼しあっているが
対照的に二人目の相棒、ジョニーは当初仲が悪い。
ただ、選んだ選択肢によって、どんどんと関係が変わっていく。その様が愛おしい。
ジョニーは最終盤、主人公Vが選んだ選択肢によっては文字通り「命を賭けて」主人公へねぎらいや心配といった、いたわりの言葉を投げる。
本当に胸がキュンとする。キアヌ…抱いて!もっと激しく!
でも「キャラクターが魅力的」、という古典的な表現を使いたくはない。
そうではなくて、時間をかけてしっかりと描かれる中に魅力を感じるようになっている。
先述のジョニーのみならず殆どのキャラクターが最初の印象が変わるよう作られてるので
是非時間をかけて付き合ってあげてくれよな。
様々な展開を選んで、様々なキャラの生き様を見てほしい。
↑運命の分岐点。物語の最後に、”相棒”から言葉を貰う。けれど選ぶのは自分だ。
テーマ自体は重めだが泣ける~とか感動する~とかドラ泣きならぬキア泣き~とかもない。
メインクエストだけを一気にやればさっとクリアできるという短さもあって、
目頭よりもカーッと喉と胸が熱くなる、あたかもウィスキーをストレートで勢いよく掻っ込むような
男(と女)の友情の物語。
…と言っても自分の場合、明らかな最終クエストが表示されても
やだいやだいもっとナイトシティで遊ぶんだい!とクエストを片っ端からプレイしていた。
出されたウィスキーをチビチビと飲むような格好の悪い男であったが、
それだけ魂を奪われ、囚われたのだという良い証拠だろう。
最近・・・というより、昨今のゲームのトレンドがダークファンタジーが多いのでここまである種爽やかなゲームは珍しい。(まぁ自分の選ぶゲームのセンスが悪いだけなのだが)
ぶっちゃけ、傑作だと言ってもいいポテンシャルは秘めている。
ここまでは本当にべた褒めの褒めなんよ。
とはいえ。とはいえよ。
□忘れないで夢を。落とさないでゲームを。
↑俺のこと好きなのか?ってくらい何度も見る画面。苛立ちと怒りが混じり、最後には諦めの感情が湧く。
もう避けては通れないバグの話。
12月18日にPSストアから削除されており、返金対応にまで至っている。
そんなにひどいの?と聞かれたら「そんなにひどいよ」としか言いようがない。
自分はハード自体はPS5でプレイしているが、
「プレイしてゲームが落ちなかった日が無い」
それほど頻繁にアプリエラーが発生する。
レストモードから復帰直後は激熱リーチ。信頼度が高い。
特に序盤の自宅周辺の町は人もオブジェクトも多いがゆえに
3時間プレイしたら確実に落ちている、というレベル。
↑ジグザグストリートに存在する男娼。リラックスなんてできないねぇ!
同様に人が多いジグザグストリートという地域に行くクエストは正直若干背筋が凍る。
「ここに行ったら俺は死ぬんだろうな…」という自分でもよくわからない覚悟を持って歩くことになる。
長年人に会わなかった引きこもりか俺は?
実際、落ちるときには「ガクン」という何となくの前兆を感じるため、
来るぞ…!
すべてのアプリエラー族に…!
※皆で再起動しましょう。 5秒前!!!※
今から落ちます…
明星、合格してみせるッ!!!!!!!!!!
というコメントが脳内に駆け巡る。そして実際落ちるもんだから始末に負えない。
何ならエンディングのスタッフロールで落ちたときには別の涙が出てきたぞ。
過剰なまでにネタにしているが
こういうネタにしないとやってられないくらい悪質なんじゃい!
発売前のメディアレビューにPS4/XB1が無いのはギリギリまで開発していて回せなかったから。
という言い訳はいくらなんでも悪質すぎる。完全に確信犯じゃん。
返金発表した際に誠意ある対応だ、と称賛されたが
これで誠意ある対応、というのは完全に頭ユービーアイかよ。
脳に芋でも詰まってんのか?ヴァルハラってんのか?
ベセスダゲーで慣れている、みたいなツイートを見たが、
Falloutやスカイリムが3時間に一回落ちたことあったか?
会話が吹っ飛んだり、クリア不可能なクエストが残ったりしたか?
進行不能バグは・・・・ゴメンちょこちょこあったな。
ただ、はっきり言ってこれらとは別格。
「なぜ産んだ」と聞きたくなるレベルで酷い。
↑いきなりラジオ体操を始める敵キャラ。私はね、多少のバグはといったんだよ。ありゃパーフェクトじゃないか。
ゲームクリエイターにとって、作品ってのは自分の子供のようなものだろう?
生まれてから実は・・・という発覚ならわかるがほぼほぼ分かっていて、
明らかに早産で産んでしまっている。
自分もサラリーマンゆえにある程度の理解は示す、示すが、
もっと命を大切にしてください…。
□総評
そもそもストアから撤去されて買えねーってのは置いといて
「今は買うな、時期が悪い」の一言かと。
おもしれーおもしろくねぇを語る以前の問題。
まぁさんざ語っといて何言ってんだって思うかもしれないが、
冬の雪山を楽しむうえで頑張れ短パン負けるな半袖という楽しむ以前のレベルの装備を渡され、遊べる段階に至っていない状態。
敵に負けた時よりもアプリエラーから復帰するためのセーブロードの方が多かったのでは?
…というのは言い過ぎだが流石にやってられねぇ!と怒りたくなる出来だ。
基本的に「延期を繰り返すゲームに名作ナシ(任天堂以外)」というのはよく言われるが、
本作は紛れもなく名作になり損ねた出来損ないだ。
傑作足りえるポテンシャルは間違いなくあった。
というか落ちさえしなければ傑作判定しても良かったほどだ!
「天変地異が起こらなければ発売延期はない」、という広報ツイートを見たけれど後2回は天変地異が必要だったかと。
「何怒ってんだよw洋ゲーユーザーならこれくらい慣れてるだろ?」みたいな冷静を気取った意見は聞きたくない。
やらかしたところはちゃんと怒らないと「メーカーの善性に賭ける」しかなくなっちゃっちゃうんだよ。
10年後、「発売一か月後ぐらいじゃまともにゲーム動くわけないじゃんw」とか言い出すの?
馬鹿かよ。アホかよ。マヌケかよ。
俺は好きだよ、と前置きは入れるだけの愛情はあるが
正直ここまで馬鹿にされる謂れはないぞ、という憎しみもある。
正しく愛憎入り混じる感覚になっている。
何より傑作足りえた作品が正確に評価されないのが悲しい。
俺が死んだあと大傑作が出たら…なんて考えると死ぬに死ねない。
だからこそ、ゲームは僕にとって生き甲斐で「生きる歓び」だ。
だからこそ、こんな結果になったことがとてもとても口惜しい。
今後このようなことがないように祈りつつ、そしていつかまともに遊べることを祈りつつ本記事を〆よう。
じゃあ、ナイトシティ。
今度はまともに遊べるようになってから会おうぜ!
↑悲しい出会いになってしまったがポテンシャルは本当に高かった。口惜しい…