闇に飲まれよ!(挨拶)
いやーまーた一ヶ月更新スルーしてしまった。
本来隔週で更新したいのですが、
そもそもゲームをクリアしてないなら単独記事を書かない、というセルフ縛りがあり、
クリア出来なかったんですよね一ヶ月。
苦行にも似ていたが悪魔の様に黒く、地獄の様に熱く、接吻の様に甘い体験を出来た『DarkestDungeon(ダーケストダンジョン)』をレビューしよう。
ではよしなに。
□概要
貴方の先祖はとある領地の領主である。
その領地から貴方宛てに手紙が届く。
先代領主が発狂の末自殺したと。聞けば、この世の悦楽に飽いた先代は
かの混沌たるダーケストダンジョンを掘り当て
そしてその尻拭いに貴方を指名したのだと!
貴方は2人の冒険者と共に領地へ向かう。
冒険者の目はギラギラと光り、欲に目をくらませている。しかし忘れるなかれ、欲で目がくらんだ冒険者は足元をすくわれると。
そして先ほど馬車ですれ違った冒険者は
恐怖で引きつり、震えながら逃げるように去ったのだということを――!
↑基本的に左から右へ進行する移動。たとえ部屋が北にあっても横スクロールで左から右へ。
ゲームのジャンルをシンプルに言えば
「高難易度ウィザードリィ+ローグライク+経営シミュ」となります。
シンプルじゃねぇって?細かいこたぁ良いんだよ!
以前、ミストオーバーという作品をレビューしましたが
本作はその前身というか、リスペクト元作品となります。
ただリスペクトとはいえコンセプトは大幅に異なる。
ミストオーバーは冒険者パーティそのものが
世界の終末を救う”希望”ですが、本作は違う。
では本作における希望とは何か?
レビューしながら説明しましょう。
□ブラックを越えたダーケスト企業の社長になろう!
↑おかえり。さぁ冒険者を雇って冒険に駆り出そう。雇うときはなんと無料。だから死んでも懐は痛まず…。
さて、あなたは領主としてまず冒険者(ヒーロー)を雇い、
最終的にダーケストダンジョン(以下、DD)を攻略しますが
まずはその周辺の4つのダンジョンへ任意にクエストへ出勤させます。
DD自体はレベル0から行けますが自殺行為です。一瞬で消し飛びます。
なので他で鍛えてレベル6(最大)にしてDDへ挑むのが常道であり、本作の基本目的。
ただ、その自殺行為をするとトロフィーが貰えるので
そこら辺のカス…いや冒険者を集めて一回はやっておきましょうね。
終わったら捨ててしまいましょう。
アットホームな職場ですのでリストラ時の退職金はいりません。
経験が財産!それが退職金な!
↑歩いても、クリティカルを受けても、狂った味方から罵倒されてもストレスはたまる。
ダンジョンを探索中、
様々な条件で黒いエフェクトと共にストレスが溜まります。
このストレスこそが本作の根幹。
どれだけ強くなってもストレスからは逃げられません。
例えば敵から不快な攻撃を受ける、クリティカルを受ける、瀕死になる、
何ならダンジョンを歩いててもランダムで溜まるぞ。
出勤しててストレスがたまるのは社畜ならあるあるだが
社長という立場に近い領主からすると
何でお前らこんなんでストレス貯めてんだバカか。ってなりますね。
現実の社長の気持ちが分かり始めてきましたね?
↑攻撃時には拡大され、ちょっとしたアクションが見られる。テンポはまぁまぁでストレスフリー。
さて、仕事における華、戦闘であるが
敵・味方共に命中、そして回避が重要になる非常にひりついた戦闘となっています。
一回避けると大幅に楽になり、逆に避けられると一気に不利になる。
敵に奇襲をかけて一気に半壊させられると余裕のある戦闘になるが
逆に奇襲を食らったり、隊列を乱されると一気に不利になる。
ここら辺は現実の仕事と一緒。
トラブルが無い時は順調に行きますがトラブルが舞い込むと一気にズタボロになる。
そういう時はどうするか?
アットホームな職場ですからね!みんなで何とかします!
(実際、本当に”なんとかする”しかない)
↑壊れた(狂った)キャラは周りに不快をまき散らす。そして限界を超えると…。
しかしそんな中夥しいほどの罵倒や暴力を受けてしまうと、
肉体の死とは別に精神にダメージを受けて”壊れてしまう”冒険者がいます。
皆さんの職場にも独り言をぶつぶつつぶやく人はいるでしょう?あれです。
でもまだ働けるなら働かさないとダメ。
アットホームな職場ですからね!
周りが不快になりストレスが溜まっても見捨てはしません!
てか出来ません!動くなら働ける!働け!
そして、壊れてしまったその先があります。
本作はHPが0になってもまだ死にません。更にそこにダメージを食らうと死にます。
本作はストレスが100になっても壊れるだけ、200まで行くと死にます。
心か体がその先に逝ってしまったキャラは完全ロスト。
辞めてしまった社員が返ってくることが無いようにかけたコストも時間もパーです。
↑酒場と教会でストレス解消。たまに変なおじさんがその枠を使ってる時もあるがこれ、自分らしい…。
だけど大丈夫!
アットホームな職場ですからね!福利厚生はばっちりです。
きっちり生還した冒険者には酒・ギャンブル・売春婦、祈りやSMルームまで完備しています。
ここでストレスを回復してまた新たな冒険へ行って貰いましょう。
ただ、ハマりすぎた結果ギャンブル狂いになったりソープ・SMの風俗狂いになる冒険者もいますが…
なーに、いいのです。
社員の趣味には文句言わないのがデキる経営者スタイルですよ。
(あとアル中ぐらいのデメリットのが扱いやすいしね)
そして彼らが金・暴力・セックスでストレスを回復している間は
別の冒険者でダンジョンを攻略して冒険者のレベルアップを繰り返す…
というのが本作の基本構造。
↑ダーケストダンジョンを掘り当ててしまった領主の館。クトルゥフめいた狂気の冒険が幕を開ける。
冒険を繰り返せば、いつか貴方はDDの一回目のアタックに成功するでしょう。
しかしこれはまだ始まりにすぎません。
なにせDDは4回クリアすることが目標となります。
しかし、DDから生還した冒険者は
何か恐ろしいものを見たようでDDへの再突入を拒否します。
であれば仕方ありません。別の冒険者を使いましょう。
なあに、犠牲者…おっと欲に目のくらんだ冒険者はいくらでもいます。
しかも雇う時は無料。
人材はいくらでも湧いて出てきますし掃いて捨てるモノ。
このゲームにおける”世界を救う希望”は彼ら冒険者ではありません。
人を駒と思い、冷酷に、目的のために人を切り捨てる覚悟すら持った
ブラックを越えたダーケスト社長、いえ領主である貴方こそが
この闇に閉ざされた領地の、黒より暗い闇色の希望となるのです。
自分は優しい人間だからそんなことが出来るかな、と思う方もいるのではないでしょうか。
大丈夫、このゲームは「それ」をしないとクリアできません。
そしてもう一つ、このゲームをプレイする前の私もまたそうであり、
――――そして闇に染まったのですから!
□楽しくブラック、仲間と仕事に「圧倒的感謝」❢😄😄😄
↑かっこいいナレーションが冒険を彩る。キャンプシーンはこのゲームでは珍しいほのぼのシーン。
さて、ここまでふざけた文体でレビューしてきたが
ここからは普通の文体でレビューしよう。
本作の最大の魅力は驚異的な中毒性にある。
ゲームとしては暗い雰囲気だが、重苦しさという意味ではあまりない。
ミストオーバーほどポップではないが、プレイしていくうちに愛嬌を感じるキャラ達。
ちょっと不気味だがとは言ってもやはりかわいがってしまうものだ。
冒険の道中でキャンプして、その際仲間を気遣ったセリフを言ってくれるのも良い。
ゆるキャン△ならぬやみキャン△はほっこりする。
あと、プレイしている中でナレーションが入るのだが、これがいちいちキマる。
ボイスは英語だがむしろそれが雰囲気とバチコリあって非常に良い。
勝てば褒めてくれる、というのがシンプルにプレイヤーを動かすモチベになる。
↑スキルを強化し、ダンジョンにあるアクセサリを取りに行こう。様々な要素で強化される冒険者たち。
余りにも多いスキルやアクセサリ(トリンケット)はどんなものがあるのだろうとワクワクする。
ダンジョンに入る前にご褒美を確認できるのだが
「うわっこのアクセサリ明らかにつええ!」というものを見ると悩みつつ入ってしまうのがゲーマーの性だろう。
この、見えてるハクスラ要素もなかなか楽しいんだ。
村の設備を強化し、スキルを強化し、装備を強化し、アクセサリを収集する。
一回の冒険につき、きっちり応えて強くなっていくパーティに快感すら覚えていた。
無論ストレス管理によるめんどくささはあったが、
ストレスのせいでパーティが固定できないために逆にパーティを組み替えて試す面白さは感じられた。
マンネリにならずに真新しい何かが見つかり面白い!楽しい!という上昇曲線がズイズイと上がっていく。
DD一回目の攻略前後はこの上昇曲線がピークになり
夜を駆けて沈むように溶けていくように夜が闇になるまでどっぷりとプレイしてしまった。
そして欠点もはっきり言ってしまうが
本作の最大の問題は「飽き」である。
↑いいからイージーにしなさい。ゲームの魅力を理解する前に辞めてしまう可能性すらあるぞ。
普段どんなゲームもまずは難易度ノーマルでプレイしている自分だが、
本作に関してはイージー(Radiant)でプレイしたし、
実際初回はイージー推奨である。
理由として、最初の探索次第では簡単に詰んで
領地(セーブデータ)を消してしまう羽目になったことが何度もあったこと、
そして、イージー自体は敵の攻撃力を下げるようなゲームの難易度を下げるモノではなく、
経験値の増加や高ランクの冒険者が下位ランクのダンジョンに入れるようになるような
プレイ時間を短くするような仕様になるからだ。
ただそれをしても長い。
ミストオーバーでは20時間くらいでクリアできたが倍近くかかっているのは間違いない。
↑大量の報酬を得るクエストは時間がかかる。そしてDDは一度入ると恐怖を覚えて拒否される。
まず純粋に1クエストでの時間がそこそこかかるうえに一人でもロストすればリカバリーに更に時間がかかる。
また先述の通り、DDを一度攻略したパーティは
二度と行けなくなる上、最終的に4回もDDにはアタックする必要がある。
つまり、最低でも16人のレベルマックスメンバーを作らねばならない。
先述の通りピークに達するDD一回目までは良いが
2回目以降はメンバー育成は正直、作業。一気にダレが襲ってくる。
一応、一度DDから生還したメンバーは
他のメンバーに経験値増加のバフを与えられるようになるため
指導役として入れられ新兵の育成を早められるが
DD生還者=すなわち最高レベルのメンバーとなるため
余りにレベルが低いダンジョンにはレベル制限があり入れない、いや入ろうとしない。
意識の高さゆえに「圧倒的成長」の見込みがないと新兵の育成すら手伝ってくれないのだ!
この制限がイージーだと大分緩和されるので、もしプレイする気が沸いた人は
いいから黙ってイージーで始めなさい。
分かりましたね?
↑全滅シーン。DD初挑戦であっさりとやられてしまった。ここから立ち直れるかがプレイヤーの見せ所。
そしてDD自体は一回で突破できるほど甘くない。何なら全滅もある。
一度入ってボス部屋の位置を知る必要がある、敵の攻撃を理解する必要がある、
といった偵察役が欲しくなる。
しかし、DD撤退時は必ず一名の犠牲を払わなければならない、というおまけつき。
ゲームをやるうえで、しかもレビューという立場でこれを言うのもどうなん?とは思うが
オンスト方*1抜きでやるのはハゲる。
流石にプライドが許さず使わなかった結果俺はハゲた。
何故世の社長にハゲが多いのかわかった気がするよ。
クリアできないくらいなら有だ、とは言っておく。
□命と欲望の鍔迫り合い。そして魂の解放について。
↑ストレスが限界になると死ぬ。どこで切り上げればよかったのか?という前に、貴方のせいですよ。
「まだ行ける、はもう危ない」という出元不明のRPGの名言があるが、*2
本作はこの判断を延々と迫られる形になる。
何せHPだけでなくストレスの値を見て状況を見極め、まだ行ける、と判断せにゃならん。
脱出自体はちょっとしたペナルティはあれどいつでも行えるし、
脱出時に戦利品は回収できるが、経験値はダンジョンをクリアしないと貰えないので
基本的にちょっと無理することが必要不可欠。
ダンジョンが人を殺すのではない、欲を出したプレイヤーこそがある種死因となる。
この冒険者とダンジョン、命と欲望の鍔迫り合いは心底エキサイティングだ。
高額なギャンブルこそ熱中するように命というチップは中毒性の一端を担っている。
↑HPが0になってもまだ死なず。ボス戦で5回も回避した男がここに!そしてストレスで壊れず奮起する男も
ボス戦はそれがさらに加速し、
一人二人の犠牲はしょうがないから何とかして倒せ!
と文字通り命を賭けた戦いになる。
その中で運よく回避したり、HPが0の状態で耐える等ドラマが生まれる。
(本作のHPは一旦0で下げ止まり、次に攻撃を受けると低確率で耐えるか死亡する)
ストレスに関しても100の段階で非常に低確率だが、逆にバフになることが有る。
如何にして生きようとするプレイヤーと冒険者、そして
如何にして殺そうとするダンジョン。
筋書きのないドラマ、というと非常に古臭いが
この2者のギリギリの攻防は文句なくドラマティックである。
ただそれでも死ぬときはあっさりと死ぬ!
そしてボスを倒した喜びは半減し、
勝ったけど腑に落ちないなぁ…という感情が生まれる。
この気持ちは重要だ。これが無くなるとそもそもギリギリ感が抜け落ちちゃうしね。
そこから奮い立たせてまた冒険するのが本作の肝でもある。
ただ唯一その「勝ったけど人が死んだ…」という妄執に囚われない戦いがある。
それがラスボス戦だ。
↑ラストマンスタンディング。彼こそがヒーローだ。そして貴方も。
詳細はネタバレになるので具体的には避けるが、非常に苛烈かつ厳しい戦いである。
実際、パーティの何人かは命を落とすだろう。
しかしながら、実質後を考えなくてもよい唯一の戦いである。
(無論、全滅したらやり直しではあるが)
最後の最後、最後に一人だけ立っていれば全て無くなって良い、というラストバトル。
唯一生き残っていた初期メンバー一人を連れていき、そして彼含め3人失ったが
補助役として連れて行った彼が何とかラスボスを倒し切れた時は
後悔や妄執など無いひたすら爽やかな気持ちが産まれた。
たった一人で勝利をつかんだあの時の興奮は忘れがたい。
死にゲー・ソウルシリーズの緊張からの緩和による快楽があるが、それの極致だろう。
このとき俺はゲームそのものの評価を一段階上げた、と言ってもいい。
さてもう一度言おう。
本作は世界樹の迷宮やミストオーバーのように
パーティメンバーそのものが希望足りえないんですよね。
ストレスで戦線離脱するし、ダーケストダンジョンに潜ると使えなくなる。*3
だからこそ長く続けても心折られないプレイヤーこそが希望足りえる。
でも決して英雄譚めいた光の勇者には足りえない。
何故ならその希望は人を使い倒し切り捨て使い捨ててと闇に堕ち闇に飲まれるからだ。
それでもなお戦い続けた先に
最後の最後に闇に飲まれた自分の心が解き放たれる!
この快楽は本当にたまらなかった。
正直記憶を消して最初からやりたいというゲームはいくらもあるが、
記憶を消してラスボスだけやりたいゲームは本作だけである。
是非貴方にもその爽快感を味わってほしい。
最初から?イヤー流石にそれはきついんで辞退するわ・・・。
□総評
傑作だろう。面白いし、大量のフォロワーを生み出している。
ミストオーバー以外にもフォロワー一杯あるんだぜコレ。
革新的なタイトルである事は間違いない。
ミストオーバーとどちらがいいかというと
とっつきやすさは圧倒的にミストオーバーだが、
ゲームとしては本作の方が上だ。
オススメもするが、先述の通り長いので腰を据えてやる必要がある。
正直これの他に同時並行でゲームをやるのは難しいだろう、
それぐらい気合を入れてやらねばならない。
まぁ気晴らしにApexはやりましたが。
あとUIがコンシューマ向けにされておらず正直慣れるまではかなり面食らう。
アイテムの説明すらどうやって見たらいいの?!と発狂しそうになる。
×決定なのを差し引いてもすんごいやり辛いよ。
もう一つだけ。
2回目・3回目のDDへのアタックはマップが非常に広いため
全て探索するとストレス・HPどちらかが確実に追っつかないので、
攻略サイトを見ないと絶対一発クリアできないレベルの難易度にされてる。
なのに撤退時には一人犠牲がいるのは正直ちょっとよろしくない。
装備とスキル、アクセサリまでほぼ理想にしていても運が悪いと死ぬのだから
ここはちょっと不要な仕様だったと思う。
シビアさは必要だけどゲームの面白さに繋がっていないかなと。
ただまぁ本当にみっちりプレイして堪能して面白かったのでお勧め。
それでは記事の〆は、ブラック企業らしく挨拶で終わらせてもらう。
闇に飲まれよ!(挨拶)
…どう?この記事冒頭の挨拶とデレマスの挨拶と、記事の中の闇に飲まれるみたいな文章での伏線というかこう・・・なかなかハイセンスじゃないかな?
え?そうでもない?うーん君は地方が似合う顔だね!左遷!